第846話 島ゴブリン *109000匹突破*
午後になって一号艇が帰ってきた。
情報をクーズルースに移し、上部モニターに映してもらった。
中央に三百メートルの山があり、木々で覆われている。人工物はなく、熱反応からして山の中腹に巣があるようだ。
「結構な数のゴブリンがいるみたいですね」
「約千六百匹だな」
島のサイズを考えたらそう不思議でもない数だが、そんなに食うものがあるのか?
「浅瀬で魚を捕まえているのを見た。ヌルもいたな」
島の北側に浅瀬が広がっているようで、大型魔物が入ってこれない地形になっているようだ。
近い島まで二、三十キロは離れているのにどうやって住みついたか謎でしかないが、昨日今日移り住んだ感じはしない。生活スタイルが確立できるくらいには長いこと住んでいるようだ。
「日焼けしているのか濃い緑色だな。そんなに日差しが強いのか?」
諸島出身のアルズライズは白い肌だ。この世界、肌の色に違いはないのか? 暑いほうなら褐色の肌の人間もいそうだがな?
「体つきも一メートル半くらいあるな」
一メートルもない猿みたいな感じなのに、島のゴブリンは猿人くらいあった。
「いいもん食ってんのかな?」
もしかして、ゴブリンってしっかり栄養を摂れば猿人くらいになるのか? 特異体も猿人くらいの体格してたし。
「アサルトライフルでは厳しいか?」
胸板も厚く、腕も脚も太い。だ。直立不動のチンパンジーみたいだ。
まあ、ESGを使うから問題ないか。この戦闘強化服でも当たりどころが悪ければ怪我をするくらいの威力みたいだからな。まあ、実際、撃ってみないとわからんけどさ。
「ライズさん。島を一周しながらプラニング砲を撃ってください。ゴブリンどもを山のほうに追い立ててやります」
上陸するにしてもゴブリンが群がっていたら邪魔でしかないからな。山のほうに移動してもらうとしようじゃないか。
「ミリエルとラオルスさんは、ルースミルガンで逃げ遅れたゴブリンを駆除。オレらは一周したら一号艇でこの砂浜に上陸。二人は別のルースミルガンに乗り換えてオレたちの援護を頼む」
上部モニターを見ながら上陸作戦を説明した。
「午後十六時を過ぎたら撤退する」
別に期限があるわけでもなし。少しずつ削っていけばいいさ。広い島ではあるが、オレの察知能力でカバーできる。時間さえかければ全滅させるのも難しくないさ。
ミリエルとラオルスさんが飛び立ったら作戦開始。オレは船長席に座って操船を担当。岩礁に気をつけながら発砲のタイミングはライズさんに任せた。
プラニング砲は、魔力弾を放つのではなく、氷弾を放つ大砲だ。
なんで氷弾? と思う方もいるだろう。
地下に潜ってから古代エルフの戦いでは爆発系は忌避されるようになり、魔力弾、氷弾が主になったみたいだ。
まあ、まったく爆発系の武器がなかったわけじゃないが、プラニング砲は海水を使っているのでほぼ無限砲と言っていいだろうよ。
長さ三十センチ。幅十五センチ。威力的には大したことはないものの、毎分百発は脅威でしかない。一日もやっていれば氷の島にできそうだ。
横目で着弾を見ながらクーズルースを操船していると、報酬が入ってきた。
この報酬システムも無駄に正確だよな。誰が駆除したかちゃんと把握してんだからよ。
二時間かけて島を一周。プラニング砲で百匹は駆除できた。
「どんくさいのがいるのか、それとも逃げ足が早いのばかりいるのか、これではよくわからんな」
なんにしろ千五百匹にはなった。ミリエルとラオルスさんが何匹駆除できるかでこの島のゴブリンがどんなのかわかるな。
──ピローン!
もうかよ。コラウスでまだゴブリンを駆除しているのか?
──十万九千匹突破! 都市国家でゴブリンが溢れましたけど、二千匹もいないから問題ないでしょう。孝人さんは島に集中してくださいな。
都市国家にはロンダリオさんたちがいる。安心して任せられるので気にする必要なし。ダメ女神に言われるまでもないさ。
「ライズさん。クーズルースを自動航行にしました。いきましょうか」
「ラー」
船橋を出て船尾甲板へ。一号艇に乗り込んで島に向かった。
すぐに砂浜に着陸。ESGの安全装置を解除して外に出た。
「手前の木々にはゴブリンはいません。山の麓くらいまで下がっています。熱源センサーで見るほうがわかりやすいと思います」
オレは感覚でわかるので通常モードで見ているが、ライズさんは熱源センサーで見るほうがいいだろう。
「オレがフォローします。先頭に立ってください」
「ラー」
少し前をライズさんが進み、オレは斜め後ろについて後を追った。
なかなか生い茂っていてまっすぐに進むのは困難だが、方角はバイザーに出ているので問題なし。
「ライズさん。ESGの射程内に入りました。思うがままにやってください」
ESGの射程は二百メートル。アサルトライフルより短いが、威力を高めるために集束させているためにも魔力を使っているので、二百メートルを越えると拡散してしまうのだ。
「ラー」
ゴブリン駆除の経験はあるものの、百戦錬磨の軍人ではない。返事に緊張が混ざっていた。
それでも軍人。同胞を守るために眠った人でもある。緊張はしても引き金を引くのに躊躇いはない。射程に入ったゴブリンを次々と駆除していった。
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