第845話 敵対関係
「……マイセンズはこんなものを造っていたのか……」
驚愕するエウロン系のエルフさん。マイセンズってヤベー都市だったようだ。
「いろいろ黒いウワサは聞いていたが、バウロストと本気でやり合おうとしていたんだな」
バウロストとは大陸の向こう側にある都市で、マイセンズとは何百年と敵対関係にあったそうだ。
「まあ、もう過去のこと。残ったものは今を生きるオレたちが有効利用させてもらいましょう」
これを使って世界征服、とかするわけでもなし。ゴブリン駆除に使わせてもらうだけだ。
「クーズルースを停泊させたら一号艇で島を偵察してきてください。その間にルースミルガンを船尾甲板に出しておくので」
一号艇があると船尾格納庫に入れられないんだよ。
「ラー。詳しく調べてくるよ」
「ミリエル。ルースミルガンの練習をするか? ルースカルガンとちょっと違う操縦法だからな」
「はい。練習します」
船倉に向かい、ルースミルガンをホームに入れ、船尾甲板に上がったらホームから出した。
ルースミルガンは推進機が両側についており、オスプレイみたいな感じだ。まあ、翼はないので推進機だけで進んだり旋回したりする。結構技量を求められる乗り物だろう。
「プランデットを連動させれば補助してくれるが、そうすると細かい動きはできなくなる。まずは飛ぶことを優先するといい」
まずはオレが手本を見せ、三十分くらい飛んだらミリエルに操縦を渡した。
「そう。その調子だ。いいぞ」
パイオニアやマンダリン、ルースカルガンと操ってきただけに飲み込みが早い。なに気にミリエルって天才だよ。
「じゃあ、着船してみるか。ぶつけても修復されるから恐れずいけ」
警備兵がたくさん積んであるので、甲板に穴が開いてもすぐ修理してくれるさ。
「はい!」
ルースミルガンは垂直離着陸が可能だが、戦闘機が空母に着艦するように船尾甲板に着船させた。
「上手い上手い。やっぱ、ミリエルはセンスがあるよな」
なにをやらせても合格点を出せるヤツだよ。
「わたしとしてはもっと上手く扱いたいです」
「別に特化する必要はないよ。ミリエルが前に出るより後方に立ってもらいたいんだからな。極めるなら全体を見れて、的確に対応できる指揮官となってくれ。オレは嫌でも最前線に立たされるだろうからな」
ダメ女神はオレが後方に立つことを許さないだろう。それはこれまでの出来事が証明している。オレができないことをミリエルにやって欲しいのだ。
「カインゼルさんが総指揮官として立ってくれたらいいんだが、あの人はオレの前には立とうとはしないだろう。オレの下に立ちたがっているからな。もちろん、ミリエルにも前線に立ってもらうときはあるから戦闘や乗り物は覚えてもらいたい。オレが前線に立つときはミリエルが後方に。ミリエルが前線に立つときはオレが後方に。そんなことができたらいいなと思うよ」
大集団を指揮できて小集団を率いれられる。それが理想的なあり方だと思っている。
「わかりました。そうできるよう努力します」
「でも、無理はするなよ。無理するのはオレの役目なんだから」
ミリエルの頭を撫でてルースミルガンから降りた。
「一人で練習してこい。オレは他のルースミルガンを出すから」
そう言って船倉に降りた。
次のルースミルガンをホームに入れると、シエイラがオレを待っていた。
「カインゼル様から報告よ。集まってきたゴブリンを駆除したそうよ」
「ああ。女神も夜中に佳境を迎えたと言っていたよ。カロリーバーはロンレアに運ぶから輸送部にやらせてくれ」
「わかったわ。今のところカロリーバーは足りているから慌てることはないわ。なにかあったの? 物々しい格好だけど」
「ゴブリンの女王を駆除しろと命令されてな、今その準備を進めているところだ。もうしばらくかかりそうだからラダリオンに伝えてくれ」
そうすればビシャに伝わり、中継地、ガーゲー、ロンレアと伝わるだろうよ。
「応援はいいの?」
「ミリエルもいるから大丈夫だよ。船で移動している間はホームに入れないからそちらは頼むな」
「ええ、任せて」
シエイラを抱き締め、唇を重ねた。
「じゃあ、稼いでくる。無茶はするよ」
そう言って外に出た。
船倉から船尾甲板に上がり、ホームに入るとシエイラはいなくなっており、次は雷牙が待っていた。
「ご苦労様。片付いたようだな」
「うん。今は交代で休んでいるよ。明日から残党狩りをやるってさ」
「そっか。最後まで気を抜かず、請負員たちをフォローしてくれな」
「任せて。じーちゃんからで終わったら呼んで欲しいってさ。海を見たいらしいよ」
「ああ。メインイベントを残しておくから楽しみにしててくれと伝えてくれ」
プロプナス退治はカインゼルさんがきてからにするか。そう急いで倒すほどの存在でもないしな。
「おれもいきたい」
「ああ。皆でくるといい。ミジャーの後始末は領主代理に任せればいいんだからな」
ゴブリンの襲撃も収まるだろうし、皆に海を見せてやるとしよう。
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