第844話 戦闘強化服 *108000匹突破*

 ──ピローン!


 うっせーな! こっちは寝てんだよ! 起きてるときにやれってんだよ!


 ──十万八千匹突破! 駆除も佳境だ。がんばって~!


 ハイハイ。お前に言われなくともカインゼルさんたちはがんばっているよ。ほんと、眠っているときに脳に直接はキツいんだよ。


 ──あ、そうそう。そこから南西方向の島に女王がいるので駆除しておいてくださいね~。


 はぁ? じょ、女王? なんで島に女王がいんだよ? そこんとこの説明しろや! 


 だが、ダメ女神のアナウンスはナッシング~。ほんと、必要な説明をしねーヤツだよ!


 怒りに目が完全に覚めてしまい、懐中時計を見たら午前二時だった。


「……カインゼルさんたちは徹夜か……」


 オレも徹夜になりそうだよ。


 アポートウォッチを腕につけ、余市十年を取り寄せてラッパ飲み。貴重な酒が水を飲むように消えていくよ……。


「まったく酔えんな」


 酔えはしないが、体は正直。ぶっ倒れる前に巨人になれる指輪をして正常に戻した。気持ちもリセットされたよ。代償は高かったがな。


「やるしかないか。酒代を稼ぐために」


 精神を落ち着かせるためにゴブリンを駆除しなくちゃならない。なんのマッチポンプだか。このことに当てはまるか知らんけどよ。


 共用シャワー室に向かい、完全に意識を目覚めさせた。


 船橋に上がると、ラオルスさんがデッキチェアに座りながらパソコンで映画を観ていた。言葉、わかるんかい?


「どうした?」


「女神からのアナウンスで南西方向の島に女王がいるそうなんですよ」


「南西か。上に出す」


 見上げるような地図になるのでなんとも見難いが、プランデットを使えば見やすくなる。


「距離は約十五キロ。なかなか大きな島だな。見える範囲に灯りはない」


「朝になったら向かいましょう。今のうちに休んでください。オレが見張りに立つので」


「バリアーを張っているからお前も休んでいいぞ」


「女神のアナウンスで眠気がふっ飛んだので起きてますよ。準備も進めておきます」


 せっかくだからルースミルガンを使ってみるとしよう。あれならホームを通して船尾甲板に上げられるだろうからな。


「島の近くでクーズルースを停泊させます」


「それはおれがやるよ。おれも交代したばかりだからな」


 ではお願いしましすと任せ、船倉に向かった。


 ミサイルは収まっているがマナックは収まってないので四十六個を補給した。


「小さいのに結構使うんだな」


 まあ、この重量を飛ばすとなるとかなりの魔力を使うとは言え、それでも百機以上も飛ばすとなるとどんだけ必要になんだよ? コンテナ三つ分にマナックが収まっていたよ。


 それに、ESGもマナックを使うタイプだ。殺傷力を高めてあるので二百発しか撃てない。魔力抵抗値の高い魔物でも殺せる威力があるっぽい。


「戦争する気満々だったんだな」


 出発してすぐ沈んでちゃ哀れでしかないがな。


 一応、四機にマナックを補給し、ESGとラットスタット、水とカロリーバーを入れておいた。


「戦闘服もあるんだな。予備か?」


 コンテナ一つに防護服を戦闘しやすいようにした服が入っていた。


「エルフは細いからな~、着れるかな?」


 防護服は動きやすさを求めていたのか、ゆったりサイズだったが、これはぴったりタイプだ。てか、かなり薄いけど、大丈夫なのか?


 サイズがないのでちょっと着てみた。


「意外とすんなり着れたな」


 インナースーツみたいで、体の線どころか股間が膨らんでいる。大丈夫か?


「マナックを入れるのか?」


 腰のベルト部分に箱にマナックが二つ入る作りとなっており、試しに入れてみたら生地が膨らみ、マッスルな体型になり、腕と脚がごっつくなった。


「おー。なんかこんな戦闘強化服を着た漫画あったな」


 なんの漫画かは忘れたが、なかなか男心をくすぐるデザインである。これで戦わなくちゃならないのかと思うと嫌だけどよ。


「もしかすると、オレってコスプレなら好きなのかもな」


 これを着ることは嫌じゃないし、カッコイイとも思う。まあ、だからってコスプレをやろうとは思わんけどさ。


「タカトさん、いますか?」


 なぜか船倉に全身を映すくらいの鏡があったので自身を見てたらミリエルがやってきた。


「こっちだよ」


 コンテナの間からミリエルが現れた。


「どうしたんです?」


「戦闘強化服があったからな。どんなものか着てみたんだよ。島にゴブリンがいると女神からアナウンスが入ったんでな」


 ダメ女神からのアナウンスや島のことを説明した。


「応援を呼びますか?」


「いや、オレたちだけでやるとしよう。報酬額も減っているしな」


 いつの間にか二千五百万円を切っていた。コラウスで結構な数を駆除しているってのにな。


「わかりました。わたしもこれ、着れますか?」


「たぶん、着れると思う。フリーサイズっぽいからな」


 戦闘強化服の仕組みを説明し、一式渡した。


「着替えたら船橋に集合するとしよう。どうするかは島を調査してからだ」


「わかりました。着替えてきますね」


「あいよ」


 ヘルメットを被り、ライズさんとラオルスさんの分を抱えて船橋に上がった。

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