第841話 女帝 *107000匹突破*
岸壁に立って海を眺める。
で、どうなん? って思っていたら、目の前にプレクシックが現れた。
──ピローン!
ん? どっちのアナウンスだ? 絶賛、コラウスでゴブリン駆除祭りが発生しているからわからんな。
──タイミングよく十万七千匹突破だよ!
なんだ、偶然かよ。紛らわしいな。
──コラウス方面のゴブリンはあと六千匹くらいかな? 魔境に女帝がいるからほんと参っちゃう。女王をポンポン産んじゃうんだからさ~。まあ、女帝は追い込むとすぐ逃げちゃうので放置で構いません。ゴブリンを小まめに間引きしてくれたら出てくることもないですしね。
それか! 駆除員がこの国に集中してんのは!
──そうそう。駆除員を送り込んでいるぞって知らしめるためにね。昔は中継地辺りに住んでいたんですよ。でも、連続で投入していたら逃げちゃいました。ほんと、逃げ足が速いんだから参っちゃうわ。
……ダメ女神からクソ女神にクラスチェンジしそうな真実だな……!
──でも、その犠牲は無駄ではありませんでした。女帝は人前に現れることがなくなりましたからね。まあ、次世代を残そうと暗躍はしてますけど。
不穏なこと言うなや! 挫けそうになるわ!
──プレクシックは完璧に直って、魔力炉搭載に改造しておきました。あちら側の大陸もそこそこゴブリンがいますし、その大陸の反対側にもゴブリンがいます。長生きしてたくさんのゴブリンを駆除してください。では、一ノ瀬孝人さんに幸あらんことを!
お前の戦いはこれからだ! みたいなこと言うなや。最終回打ち切りじゃないんだからよ。オレはあと五十年は生きてやるわ!
「タカトさん? どうしました?」
「いや、タイミングよく女神からのアナウンスが入ってな、意識を奪われていたよ」
「よくないアナウンスですか?」
「あの女神のアナウンスはいつだってよくないことばかりだよ。詳しい話は夜に話すさ。酒でも飲みながらじゃないと血管切れそうだからな。それより、エウロン系の者はいないのか?」
オレの頭の中にもプレクシックの操船情報はあるが、プレクシックは四人いなくちゃ動かすことはできない。いや、動かすだけなら動かせるが、本当に動かせるだけ。他のことはなにもできないのだ。
「もう少しでくると思いますよ。わたしたちがくるまで警戒飛行しているそうですから」
空を見上げたら、こちらもタイミングよく着陸体勢に入っていた。
岸壁に着陸。格納ハッチが開いて軍人のライズさんと艇長のラオルスさんが出てきた。
「待たせた」
「いえ、大丈夫ですよ。そう急ぐ必要もないですしね。海の様子はどうです?」
「プロプナスの他に大型の魔物がうじゃうじゃいるな。なんであんなに集まるのかはまったくわからん」
「なにを食べていたかわかりますか?」
「小魚やヌルだな」
「ヌル?」
「これです」
と、ミリエルがデジカメを出して見せてくれた。
「トドかオットセイみたいな生き物か」
生憎、海の生物に詳しくないんで、トドとオットセイの違いがわからない。アザラシは水族館で見たから違いはわかるけど。あ、あれはラッコだっけ?
「寒い海にいるイメージだったけど、この世界じゃそうでもないんだな。水温の情報は得てますか?」
「表面は約十六度。五メートル毎に一度下がっていく感じだな。ちなみに水深は深いところで百五十メートルと言ったところだ」
ルースカルガンが飛べる範囲内でのことなら水深はそんなに深くない海のようだな。
「エウロンにプロプナスの情報はあるんですか?」
「そう詳しい情報はない。ただ、この海域に配置されていた情報はあったな」
「つまり、局地型生体兵器ですか」
それなら環境を変えてやれば生命活動は鈍らせてやることはできそうだな。
「あれを倒す方法があると言うのか?」
「簡単なのはガソリンをプロプナスの周りに流してやればいいと思いますよ。アレがなにを食べているかわかりませんが、ガソリンまみれならエサとなるものも死ぬでしょうよ」
兵器とは言え生き物。なにかを食うなり光合成しているなり栄養素を遮断してやればいい。十五日後には消えるんだから自然にも優しい作戦だろうよ。
「……恐ろしいことを考えるんだな……」
なんだかドン引きされてる。そんなに恐ろしいか?
「まあ、ガソリン代がバカにならないんでやりませんけどね」
あんな巨体を覆うだけのガソリンだけでうん百万円とかかる。そんなことやれと言われても嫌だわ。
「方法はいくらでもあるんで問題ありませんよ」
別になにかを撃ってくるわけでもなく、その触手で獲物(船)を捕らえて溶解液で倒すらしい。
「古代エルフは戦いもエコロジーですよね」
世界を毒で満たしながら生体兵器はビームを撃つわけでもなければ砲弾を放つわけでもない。その巨体を活かした攻撃ばかり。溶解液がエコロジーかは知らんけど。
「……エレルダス様がお前がいて欲しかったと言う理由がよくわかったよ……」
オレは別に特別凄いことを言っているつもりはないんだがな。相手はゴ◯ラでもなければキン◯コン◯でもないし。殺せるもので挑んでいるだけ。ダメなら別の方法を考えるだけさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます