第839話 猫耳ヘルメット

 まずアルズライズに中継地にいた者を運んでもらい、オレは引き継ぎとしてビシャと魔石回収を指揮した。


 まあ、引き継ぎと言っても情報交換みたいなもの。そう時間はかけず、前線基地組の働きを見たらガーゲーに向かうことにする。


「メビ。ビシャを支えてくれな」


「了ー解」


 ピースサインをするメビ。どこで覚えてきたんだか。元の世界の文化に汚染されすぎだよ。


「マルーバ。いくぞ。エレルダスさん。お願いします」


「はい。任せてください」


 最後のメンバーを乗せてガーゲーに向かった。


「よし。フォークリフトに興味があるヤツ、集まれ」


 不思議なもので近代的道具に慣れると、車やフォークリフトなどを受け入れやすくなり、興味を持ってくるのだ。


 試しにRMAKを教えたら大人気。他にも乗りたいと言ってきた。


 これは、農業をさせるのではなく乗り物を操縦させるほうがよいのでは? と思えてきたんだよ。


 好きこそ物の上手なれ、とはよく言ったもので、興味を持つヤツほど成長速度が早い。四日もすると元の世界に連れていっても充分役に立つレベルになっていた。


「マスター。飛行員がルースカルガンの実践をしたいと言ってきているんですがどうしましょう?」


 倉庫作業員となっていると、マルーバがそんなことを言ってきた。


「一級判定を出したのか?」


 ルースカルガンのシミュレーターには五段階評価があり、一級判定が出たら実践できるって感じだ。


「はい。二人出しました」


 二人もか。ちょっと優秀すぎじゃね? 古代エルフ文字や意味を知らないと一級判定は出せないぞ……。


 二人を連れてきてもらうと、どちらもまだ十代な感じだった。


「ミハレアです」


「ルスクです」


 十七歳くらいの少女と十三歳くらいの少年だった。


 ビシャやメビの例があるから若いだけで否定するつもりはないが、まさかこんな若いのが一級判定を出したとら受け入れられなかった。


「……もしかして、姉弟か?」


 なんとなく似ている感じがする。


「はい。昔から頭がいいと言われた姉弟です。EARの扱いはあまりよくありませんでしたが」


「まあ、向き不向きがあるしな。ルースカルガンを操縦できる才があるなら下手でも構わないだろう」


 さすがに仲間を撃つんなら二度と触らせてないが、十発中二発くらいしか当てられないくらいならなんら問題ないさ。ルースカルガンは戦闘機じゃないんだからな。


「よし。じゃあ、実践をやってみるか。まずミハレアからやってみろ」


 ルースブラックはオレに合わせて調整したものなので、空いている六号艇でやることにする。


 主操縦席にミハレア。副操縦席にオレ。ルスクは補助席に座ってもらって中継地に飛んでもらった。


 ただ飛ぶだけなので難しいことはない。一級判定を出したらあとは数だ。何回何十回と飛べばいいだけ。そして、オレが合格と言えばいいだけた。


 中継地で魔力を充填したらまたガーゲーへ飛ぶ。ガーゲーに着いたらルスクに交代。また中継地に飛んだ。


 それを四回ずつ続けたら合格を言い渡した。


「あとは自由に飛んで技術を身につけろ。そして、お前たち獣人が決して獣ではないことを知らしめろ」


「「はい!」」


 と、どこで覚えたんだか敬礼して答えた。


「でも、まずは明るいうちだ。プランデットがないと夜間飛行は難しいからな」


 頭の上に耳があるからプランデットをかけられないのが難点だよな。なんで古代エルフはプランデットに集約しちゃったかね。もっとルースカルガンに機能を分けて欲しかったよ。


「獣人に合うプランデットって作れないものですかね?」


「作れますよ」


 マーリャさんに尋ねたらあっさり返ってきた。


「作れるんですか!?」


「はい。まあ、獣人の身体だとヘルメット型になると思いますが」


 管制室のコンソールをパチパチさせると、モニターにミハレアの頭が映し出された。


「マンダリンにも乗れるようフルフェイス型にしますね」


 エウロン系のエルフも元の世界の情報に侵食されてんな。まあ、時間はあるのでDVDとか観てんだろうな。管制室の一角に完全に趣味の棚が置かれているし……。


「こんな感じでどうでしょう?」


 映されたのは完全に猫耳ヘルメット。これ、マーリャさんの趣味入ってない?


「外の音、聞こえるんですか?」 


「はい、大丈夫ですよ。消音、集音、通信とできるようにしておきますね」


「じゃあ、それでお願いします。まずはミハレアとルスクの分をお願いします」


「わかりました。すぐにできますね」


 本当にすぐ完成して、警備兵が運んできた。カラーリングもあなたの趣味でしょ?


 赤に銀の線が走ったものがミハレアで、黒に青い線が走ったのがルスクのらいしい。


「汚れたりサイズを変えたいときは警備兵に渡すとやってくれるようにしておきますね」


「わかりました。ありがとうございます」


 猫耳ヘルメットを両脇に抱えて格納庫に向かい、帰ってきたら二人に渡した。


「プランデットの機能は入っているから使いこなしておけ。あと、マンダリンも練習しておけな。プランデットを使いこなせればマンダリンも乗れるようになるから」


「「了解です!」」


 すっかりルースカルガン乗りっぽくなった二人の肩を叩き、倉庫作業員に戻った。

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