第836話 ルディーア
今日もいい天気だ。
青い空が広がり、元の世界とは比べられないほど……虫で覆われてしまった……。
「どんだけいんだよ?」
てか、どっから集まってきたのやら。虫嫌いが見たら泡吹いてショック死するぞ。
「これじゃバリアーを解くこともできんな」
「マスター!」
どうしたもんかと悩んでいると、マルーバがやってきた。
「おはようさん。よく休めたか?」
「それよりバカデカい虫が現れました!」
今さらだなと思いながらマルーバについていくと、十五メートルはあるクラゲみたいなものがバリアーに張りついていた。
「虫なのか?」
見た目はクラゲとしか思えないんだが。なんのために創り出されたんだ?
「恐らくルディーアが野生に還ったものかもしれませんね」
なんでも古代に生み出された虫型生体兵器で、防衛用として重要施設の近くに配置されていたそうだ。
「近くにマイセンズ系の施設があるってことですか?」
「どうでしょう? 五千年の歳月が流れていますからね。命令を忘れているかもしれません」
確かに五千年も生きているとは思えない。生体兵器とは言え、生殖行為で増えるようにしてあるみたいだからな。
「よくこの森を通って交流があったものだ」
並みの冒険者が束になっても勝てる相手じゃないぞ。
「どうします?」
「外から攻撃してもらうとしましょう。ラダリオンからビシャに応援をお願いしましたからね。それまで待つとしましょう。マルーバ。用意だけはしておいてくれ」
「……わかりました……」
不安そうな顔だな。まあ、壁のある世界で生きてたらこれは地獄かもしれないけどよ。
「大丈夫だよ。こんなもの脅威でもなんでもない。ただ鬱陶しい虫が集まってきただけだ。火で燃やしてやればいいだけだ」
バリアーを破られる心配もないし、追い詰められているわけでもない。食料は十二分にある。ただ、気持ちいい光景ではないだけだ。
「お、きたようだな」
百キロは離れているが、昨日のうちに伝えてもらっている。ビシャなら朝一でやってくるだろうとは思っていたよ。
「四号艇も一緒ですね」
「アルズライズたちもいたのか」
海から帰ってきてたんだ。
こちらの様子を確認したようで、クルリと機首を変え、格納デッキをこちらに向けた。
「RPGー7か?」
格納デッキから撃つとか危なくないか? 人、乗せてんだろう?
二発ずつ発射し、ルディーアに直撃した。
「いきなり大元を攻撃か」
ルディーアが指揮命令しているなら大元を殺すのは悪手だが、命令が消えれば他は逃げるかもしれない好手となる。その判断をしたのはアルズライズだろうな。
「生体兵器だった割には弱いな」
RPGー7四発で崩れ落ちてしまったぞ。防衛の役に立っていたのか?
「あの時代は魔力攻撃が基本でしたからね。魔力抵抗値に振ったのでしょう」
つまり、虫系の生産兵器は魔力防御特化ってことか。まあ、レーザー兵器が少かった時代。対抗策を持ってなければ無敵の存在だったのだろう。触手がいっぱいついているし。あれは、毒もあったりするな。
さらにロケット弾を放ち、完全に止めを刺した。
「バリアーは強固だな」
貫通したロケット弾がバリアーに当たったが、これと言った被害もない。これなら直撃させても壊れたりしない感じだな。
「マスター。あれ」
マルーバが指差した方向を見ると、獣人たちがEARを構えながら走ってきた。
「応援を地上に降ろしていたんだ」
ちゃんと計画的にやってきたようだな。
魔力抵抗値の低い虫ばかりのようで次々と蹂躙されていき、一角が崩された。
「マルーバ。出撃の準備をしろ。エレルダスさんも機動歩兵にコネクトしてください」
命令が完全に解けたようで、バリアーを覆う虫どもが逃げ出した。
「ルスカルさん。合図をしたらバリアーを解いてください」
ルスカルさんとは技師のことね。
「わかりました」
高度な技術はあってもバリアーの一部だけ解除はできない。ONかOFFしかないんだよな。
「甲殻系の虫は逃げないな」
蜂や蚊の羽がある虫は逃げているのに、甲殻系の虫は今もバリアーにへばりついている。飢えてんのかな?
羽系の虫がいなくなったり殺されたりしたらバリアーを解いた。
「よし! 根絶やしにしろ! 敷地内にはいれるな!」
そう叫び、甲殻系の虫に魔力弾の雨を降らした。
硬い甲殻を持ちながら魔力抵抗値は低いようで、簡単に甲殻を破っている。甲殻の意味ねーな。
いや、意味がないわけがないと、P90を取り寄せて撃ってみたら、弾かれてしまった。どーゆーこっちゃ!?
「貫通力がある弾を弾くとか、剣や矢は無駄ってことじゃん」
対抗手段がないと詰む場所だな!
一応、全弾撃ってみたが、甲殻を破ることもなく衝撃で動きが鈍くなったってこともなかった。
「プリジックの魔力弾は紙でも撃っているように穴が開くんだよな」
ほんと、この世界の虫は不思議な作りをしているよ。
まあ、だからと言って虫に興味があるわけでもない。襲ってくるなら殺すのみ。オレは命は平等とは思わない男なんでな。死んでくれ。
「狩り尽くせ! 根絶やしにしろ! ここはオレたちの領域だ!」
なんとも悪役みたいなセリフだが、別に正義の味方ってわけでもない。お前が死ぬかオレが死ぬかの弱肉強食。一切の情はなし、だ。
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