第835話 指揮

 森の怒りだぁー!


 とばかり虫が襲撃してきます。


 まあ、こちらは魔力炉が稼働しているのでEARは無限撃ちが可能。熱でバレルが融解することもなし。いざとなればバリアーを張れることも可能。これと言って脅威でもないのだから獣人たちを鍛える糧となっていただきましょう。


 あれから魔力壁を展開できる虫も出てきてないので、オレもプリジック(拳銃)の練習として指が痛くなるまで撃って撃って撃ち捲った。


 まあ、オレは左右利き手なので、交互に使えばそう指が痛くなることもない。なんなら二丁撃ちとかやればよかったかもな。


 当てられるかはともかく、プリジックもバリアーを展開できるので盾としても使える。毒液を放つタイプには有効だろうよ。


「マルーバ! 疲れた者を交代させろ! まだ元気な者は踏ん張れ! まだ陽は高いぞ!」


 獣人の指揮はマルーバに任せたいところだが、大勢を指揮したことがない者にいきなりは無茶振りでしかない。まずはオレの副官として教育するとしよう。


 手のひらくらいの六枚羽の蚊が霧のようなに集まり、ブーンって羽音が耳障りすぎる。なんでこんなに集まってくるかね。吸血性の蚊なのか?


「北から蜂の群れがきました!」


 またか。蜂さん、執拗すぎない? オレ、そんなに恨まれるようなこと……したね。じゃあ、徹底的にやるしかないか。無駄な殺生ばかりする人生だよ。


「オレがいく。マルーバはこちらを指揮しろ」


 蜂なら狙いやすいし、動きはそんなに速くもない。取りつかれた牙と針で殺されそうだがな。


「タカトさん、わたしもいきます」


 機動歩兵を操るエレルダスさんがやってきた。


「わかりました。火炎で焼き払ってください」


 水分を含んだ森なので、燃え移ったところで火事になることもない。なったらなったで水をかけたらいいだけだ。


「全員後退! 魔力壁を展開しろ!」


 蜂を相手しているヤツらを下がらせ、前に出たエレルダスさんに火炎放射で薙ぎ払ってもらった。


「よし、撃て!」


 オレもプリジックで逃れた蜂を撃ち殺した。


「ルンが切れる前に交換を忘れるなよ! まだ尽きない者は交換する者を守れ! 連携を取れ!」


 集中すると自分だけになってしまうので、合間合間に声をかけてやる。


 プリジックはマナックを装填するタイプなので、二千発は余裕で撃つことが可能だ。これで連射機能があるなら最高なんだがな。


 指が痛くなったら左手に持ち交え、何発撃ったかもわからないくらいのときが過ぎ、やっと蜂を撃退できた。


「よし、全員下がれ! バリアーを張るぞ!」


 陽も傾いてきた。今日はこれで終わるとしよう。


「エレルダスさん! ミサイルを森に放ってください!」


「わかりました」


 六発のミサイルが順次放たれ、森の中に消えて爆発した。


 確認をしたら下がり、技術のルスカルさんにバリアーを張ってもらった。


「マルーバは点呼。怪我人がいたら中央館に移動させろ」


 館と言っても小屋レベルの建物だけどな。


 点呼をして全員いることを確認。怪我人もいなかった。


「よし! 食事にしよう。汗を流したい者は風呂に入っていいぞ」


 サバイバル用のトイレとシャワー室はガーゲーにあったから運んできて稼働している。まあ、四つずつしかないから大混雑になるけどな。


「今日もがんばったからビールを飲んでいいぞ」


 がんばらなくても毎日ビールは飲みますけどね!


「マルーバ、お疲れさん。よく指揮したな。上手かったぞ」


「……指揮は疲れます……」


 げっそりするマルーバ。わかる。わかるよ。


「そうだな。そういうときはビールを飲め。このために生きているって感じるから」


 よく冷えた缶ビールを渡した。


「……美味い……」


「だろう。この味がある限りオレたちは戦えるさ」


 そんな人生もどうなんだ? とか言わないでくれ。そんな人生でも生きていたいし、人生を諦めたくない。未来は明るいと信じたいんだよ。


「ちゃんと食事もしろよ。明日も害虫駆除をしなくちゃならないんだからな」


 マルーバの背中を叩き活を入れてやる。


「オレはホームに入るからあとは頼むな」


 さすがに害虫駆除で疲れが見て取れてきた。ビシャのところから応援を呼ぶとしよう。


「エレルダスさん。お願いしますね」


 一号艇とルースブラックに寝泊まりしており、魔力炉の操作はそこでもできるので管理をお願いしているのだ。

 

「お任せを」


 ではとホームに入った。


 皆は入っているようで、装備を外してから中央ホームへ。ちょうど夕飯を食べる寸前だった。


「お疲れ。シャワーを浴びてくるから先に食っててくれ」


 まずは汗を流さないとな。せっかくの夕飯に汗臭いのは失礼だからな。


 さっぱりしてきたら席に座り、ミサロが作ってくれた料理をいただいた。


「ラダリオン。明日、援護を送ってくれるか? 虫が多くて困ってるんだよ」


「わかった。ビシャに言っておく」


「タカト。ミジャーが溜まってきたから運んでくれる? もういっぱいなのよ」


「まだいるのか。なかなか収まらないもんだな」


 もう二十日以上過ぎているだろうに。


「減ってはきているわよ。捕まえればお金になるんだからね。カロリーバーも尽きそうだわ」


「そうなるとビシャにもきてもらうか。まだマルーバだけでは心もとないからな。ラダリオン、ビシャを呼んでも大丈夫か?」


「大丈夫だと思う。物資は足りているから」


 まあ、それぞれ必要な場所にはいる。オレがガーゲーにいけばさらに物資移動は楽になるだろうよ。


 食休みしながらそれぞれの状況を聞き、早めに眠りへとついた。

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