第833話 マルーバ
中継地の開発を再開した。
ロスキートの魔石はホームに運び、死体は集めてエレルダスさんにガーゲーへ運んでもらった。
土魔法を使える者には地面を平らにしてもらい、使えない者はマンダリンで周辺を探ってもらった。
で、オレは油圧ショベルで空堀を掘っています。
ガーゲーで警備兵を生産しているので、いずれは警備兵に建設を任せるが、今はやることもないんで空堀を掘っているんですよ。
もうこのまま建設で食っていきたいな~って思う頃、ルースカルガン三号艇がやってきた。
「ビシャか?」
あちらに駆除員がいないから報告が上がってこないんだよな。まあ、ビシャなら大丈夫だろうと任せていたけどさ。
三号艇が着陸し、なんかニャーダ族とは違う獣人が出てきた。
「……猫の獣人……?」
ワンダー族とか言わねーよな?
「タカト!」
最後にビシャが降りてきた。
「ご苦労さん。そっちはどうだ?」
「順調だよ。ゴブリンの群れが減って時間が空いたけどね」
「そっか。まあ、ゴブリンはすぐ増える。それまで休んでいたらいいさ。で、あの獣人たちはなんだ?」
「仕事をさせたいと思って連れてきた。なんかある?」
「あるよ。中継地の周辺を拓きたいからな、人手はたくさんあったほうが助かるよ」
別に急ぐ必要もないところではあるが、人手があるなら進めても構わない。拓くだけ拓いておくとしよう。
「それはよかった。仕事を用意するって約束したものの、あたしじゃそんなに仕事が用意できなかったんだよね」
まあ、さすがにビシャでは無理か。仕事を用意するって発想になるだけ成長したものさ。
「もっといるならロンレアに移住させてもいいぞ。あちらも開墾する必要があるからな。今なら戸籍を用意できるぞ」
獣人たちを連れてきたってことはそれほど優遇された立場にいなかったってことだろう。なら、戸籍を持ってないヤツもいるはずだ。戸籍に釣られるヤツもいるだろうよ。
「戸籍? マルーバ。皆、戸籍とか欲しがる?」
マルーバと呼ばれた男がこちらにやってきた。
ごっつい男に猫耳はつれーな。
「もらえるなら喜ぶと思います。おれらは市民権がないので」
やはりか。身なりはビシャが整えたんだろうよ。
「住み慣れた土地を離れてもいいヤツはまずここに連れてこい。ミリエルに言って伯爵にお願いしてもらうから」
新要塞都市も落ち着いたからロンレアに戻っているのさ。
「必要な荷物は揃えてこいよ。金はあるか?」
「大丈夫。塩の売上はいいし、酒場を一つ手に入れたからそこでの売上も出ているからね」
ルートさん、がんばっているようだ。コラウスの商人、優秀な人ばっかりだよな。
「貨幣が違うからすべて物資に変えてこい。なんなら食料でもいいぞ。まだ、魚は捕れているようだが、芋とかの根菜類が足りてないようだからな」
「家畜は大丈夫かな? 鳥が結構いるんだよね」
「それはいいな。連れてこい連れてこい。ここでも増やすからさ」
ミミズっぽいのが結構出るんだよな。その鳥に食ってもらうことにしよう。
「わかった。前線基地から連れてくるよ。料理作る者もいたほうが助かるでしょうからね」
そういう気遣いもできるようになったか。やはりビシャに任せて正解だったよ。
「今日の夜にそちらのこと聞かせてくれ。美味しいもの買っておくから」
ビシャも買えるが、なにが美味しいかはそんなに知らない。ハンバーグでも取り揃えてやるとしよう。
「うん! 楽しみ! あ、ラダリオンねーちゃんを連れてっていい? 塩がそろそろ尽きてきたからさ」
「ああ、いいぞ。ラダリオン、頼むな」
ラダリオンはずっとここにいました。エレルダスさんを守るために残っててもらいました。
「わかった」
「マルーバ。あとはタカトの指示に従ってね」
「はい。わかりました」
随分と従順なやっちゃ。なにがあったんだ?
「オレは一ノ瀬孝人。セフティーブレットに入ったのならマスターと呼んでくれ」
マルーバの気配がわかるってことは請負員になったのだろう。ラダリオンを連れていった理由も請負員カードを発行してもらうためかもな。
「マルーバです。姉御の舎弟になりました」
十六歳の女の子の舎弟ってなんだよ? よく受け入れてんな? 見た目からして三十歳くらいだろう?
「そうか。まあ、ビシャを支えてくれ。まだまだ幼いところがあるんでな」
「はい。姉御には家族を救っていただきました。そのご恩はこの命で返します」
「じゃあ、長生きして家族を養ってやるんだな。ビシャも長生きするだろうからな」
ニャーダ族の寿命は知らんが、オレの半分の歳。なら、オレより十五年は生きて欲しいものだ。
「ビシャがマルーバを選んだのなら戦闘面も鍛えてもらわないとな。ちょっと待っていろ」
ホームに入り、ファイブセブンのガンベルトを持ってきた。
「これをお前にやる。拳銃は見たことあるか?」
「はい。前線基地で訓練で撃ちました」
じゃあ、大丈夫だなと、ファイブセブンの扱い方を教えた。
「弾はこれだ。足りなくなったらオレかビシャに言えな。まずは、この周辺を拓くんで木を伐ってくれ。そう急ぐこともないから休み休みやれな。斧やマチェットはあるから好きに使ってくれ。虫が現れたらすぐ逃げろよ」
指揮はマルーバに任せ、しばらく獣人たちの働きを見守った。
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