第818話 やらなければ殺られる

 呼んでいたラダリオンも合流して中継地建設を加速させた。


「ここに町でも作るの?」


 休憩時、珍しくラダリオンが尋ねてきた。


「そうだな。十年後には町にしたいな。ルースカルガンでの交易はどちらの儲けにもならんからな」


 できているのはルースカルガンを持っているセフティーブレットのみ。それじゃ健全な商売とはならない。十年後までには道を通したいところだ。


「今は中継地としての機能を築くだけで精一杯だな。ただまあ、ゴブリン駆除の最前線にはなるはずだ」


「ゴブリン、いるの?」


「今はそんなにいない。だが、もうしばらくしたら集まってくると思う」


「どういうこと?」


「ロンレア側や都市国家側からゴブリンが逃げてくるはずだ。ここが中間地点。安全な場所を求めて奥に奥にと逃げるはずだ」


 確証はないが、人の手が入っていない場所。こちらに逃げてくる確率は高いはずだ。仮に外れたとしても群れを作ってくれたら駆除がしやすくなるだけだ。


「まあ、ロンレアが落ち着くまではゆっくりしていたらいいさ。ゴブリンはまだまだたくさんいるんだからな」


 今は休暇みたいなもの。ゆっくりしてたらいいさ。


 仕事を再開させて勤しんでいると、ローダーが現れた。


「小さいな」


 ロンダリオさんの話では、人の五倍あればローダーにしているらしい。オレもローダーとロスキートの違いを述べよと言われても答えられないだろうよ。でっけー虫としか思ってないし。


「ラダリオン。頼むよ」


 なんか面倒なので巨人のままでいるラダリオンにお願いすることにした。


「わかった」


 穴を掘っていたスコップを構えてローダーに突っ込み、一撃で首を落とした。スコップ、そこまで切れ味ないよね?


「ご苦労様。バラバラにして遠くに投げてくれ」


 もちろん、魔石は回収してからね。


「いい感じのサイズだ」


 五メートルの体ながら魔石はゴルフボールより小さい。持ち運ぶにはちょうどいいサイズと言っていいだろうよ。


「これなら売れるかもな」


 灰色の魔石だから土属性か。ロスキートは確か茶色だったはず。同じ土属性でも色が違うと効果も違うんだろうか?


「エレルダスさん。ちょっといいですか?」


 小型魔力炉設置に勤しんでいるエレルダスさんに声をかけた。


 ちなみにコンクリートで土台を造り、小型魔力炉が稼働したら土魔法でしっかりした土台を造ります。


「どうしました?」


 都市のトップまでいった人がコンクリートをこねるとか、当時の人が知ったら腰抜かすだろうな。


「ちょっとローダーを狩りに出てきますね。なにかあれば機動歩兵を使ってください。武器は置いてあるので」


 技師に機動歩兵の手に合うようEARのグリップを変えてもらった。四百発あればローダーでも戦えるだろうさ。


「わかりました。死体は集めてガーゲーに持っていけば肥料にしてくれますよ」


「そんな施設、ありましたっけ?」


「ゴミ処理場でやってくれます。まあ、食料にも変えてくれますがね」


「……それは勘弁して欲しいですね……」


 古代エルフの技術力なら味はカロリーバーのようなものにしてくれるんだろうが、原材料がローダーとか心情的に無理だわ。


「ですね。わたしも食べたくありません。なので、肥料としましょう」


「わかりました。集めて肥料にしちゃいましょう。乾燥してても問題ありませんよね?」


「大丈夫です。足りないものは空中から集めて変換しますから」


 それだけの技術力がありながら滅びから逃れられない。知的生命体の繁栄って思ったより短いんじゃないか? 発展しないほうが長続きするんじゃね?


 なんて、短命種である人間が思い悩んでも仕方がない。精々、数十年後の未来を想像して今を生きるしかないさ。


「ラダリオン。準備しようか」


 ローダーがいる森。タボール7を装備するか。


 ここしばらくバトルライフルを使ってない。一つを極めようと思ったが、状況に合わせて動けるようにしたほうがいいな。同じ状況で駆除なんてできないんだからな。


「三十過ぎてからのあれやこれやは辛いな」


 よくアップデートしろとか言われるが、人間、そんなに器用じゃない。長年積み重ねたものをそう簡単に捨てられないよ。切り替えできるヤツなんて極少数だわ。


 と、愚痴を言ったところでなにかが変わるわけじゃない。やらなければ殺られるのだ、いろんな武器を使って技術力を高めるしかないのだ。ハァー。


 久しぶりにタボール7装備をつけ、外に出たら少し扱いを練習した。


「ラダリオンはSCARーHにするのか?」


 AAー12は飽きたのか? まあ、巨人ならなにを使っても変わらんだろうけどさ。


「うん。最近、スカーを触ってなかったから勘を取り戻したい」


 お前は反射神経と運動神経が特化したヤツ。体を勘で制御しているようなものだもんな。勘は常に鋭くしてないとダメなヤツだ……。


「じゃあ、先頭はラダリオン。オレは二十メートル後方をいく。プランデットは音声をオンにしておけ。五メートル以上の魔物や蟲は任せる。小さいのはオレがやるよ」


 ミーティングをしてお互いの役目を決めた。


「目標はローダー。群れで出てきたら殲滅。他も同様だ。中継地に入られたら嫌だからな。あとは臨機応変だ」


「わかった」


 ラダリオンが巨人に戻り、森に向かって進んだ。

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