第812話 お金の使い方

 アルズライズが帰ってくるまであたしは輸送に励んでいた。


「ビシャさん。また塩をお願いします。他の都市の商人も買いにきてしまってギルドから催促されてしまいました」


「他の都市と連絡取り合っていたんだ」


 最近までゴブリンを恐れて閉じ籠っていたってのにさ。


「アルゼンスから海の都市に向かうそうなので、危険を犯してでも塩を求めに集まってくるそうです」


 そうだったんだ。結構重要な都市だったんだな。


「ラダリオンねーちゃんに言っておくよ」


 ロンレアで塩作りが始まったそうで、今全力で塩作りに取り組んでいるそうだ。


「狙われたりしてない? 危険ならもっと人手を割くよ」


 タカトからはルートさんを絶対に守れと言及されている。ルートさんがロンレアの復興資金を稼いでくれているのだからってね。


「大丈夫ですよ。ロイズさんたちがしっかり守ってくれるので」


 ロイズたちはミリエルねーちゃんの部下みたいなもんだけど、ちゃんと仕事はしているようだね。


「他に必要なものはある?」


「酒なんてありますか? ギルドに配りたいので」


「ワインでいいならあるよ」


 先日のセフティープライムデーで安いのを大量に買っておいた。


 あたしは別に欲しいものはないけど、八割になる特別な日。コラウスにいる皆に配れるワインやマルグに買ってやると約束したP90、あと、よさげな刀を二本買っておいたよ。


「お願いします」


 アイテムバッグに入れていた分を出してルートさんに渡した。


「ありがとうございます。この代金はあとで払いますね」


「ここのお金でお願いね。他の都市にいくとき必要だからさ」


「溜め込まずたくさん使ってくださいね。溜め込むと反感買いますから」


 あたしは商売のこと全然わからない。なので、商人の言葉には従っておこう。商人たちは商売を重要なものだと主張するタカトを支持している。ここでウソを言うはずもないからね。


「なに買ったらいいの?」


「そうですね。タカトさんならなにを買うと思います?」


「んー。タカトは服とか武器とか買ってたかな?」


 食料も買ってはいたけど、買い占めるほどではなかった。日持ちのいいものを買っていた記憶しかないな~。


「商売の基本はあるところからないところに流すことです。タカトさんもあるところからないところに流すのが上手な方ですね。あれで商売は素人と言うんですから商人泣かせですよ」


 どう泣いているか想像がつかないんだけど。


「まあ、とりあえず屋台や店を回って適当に買ってみるといいですよ。物の値段を知る勉強にもなりますからね。いらないものはわたしが買いますから」


「それじゃルートさんの儲けにならないんじゃないの?」


 いらないものまで買うって、損するだけじゃない?


「そんなことにならないから大丈夫ですよ。安心していろいろ買ってください」


 よくわからないけど、ルートさんが言うなら適当に買ってみるか。勉強のために。


「とりあえず前金を渡しておきます。買ったものの値段だけは記入してくださいね」


 なんか面倒だな~。映像と録音に残しておくか。ルートさんも請負員にはなっているしね。記録を渡して書き写しは任せるとしよう。


 ルートさんがお酒を持って都市に戻っていった。


「ミシニー、前線基地に戻ろうか」


 次の荷物を運んでから買い物に出てみるか。あ、女衆を誘うのもいいかも。女衆のほうが買い物上手そうだし。


「いや、ロンダリオたちがこちらに向かっているみたいだよ」


 ルースカルガンのマナ・セーラがあれば周囲五十キロくらいまでなら通信はできる。魔力はたくさん使っちゃうけどね。


「なんかあったの?」


「相談したいそうだよ。ライバルが多くて稼げないそうだ」


 ま、まあ、とーちゃんたちに魔王と戦うエルフ、なんかバイタリティーに溢れたハーフエルフの中で駆除をするのは大変でしょうね……。


 しばらく待っていると、パイオニア二台に分乗したロンダリオたちがやってきた。


 ……ロンダリオたち、セフティープライムデーでパイオニアを買ったんだ……。


 パイオニアはホームや拠点があるから有効であって、風来坊なロンダリオたちには逆に行動が縛られるんじゃないの? 八割引きでもアサルトライフル二丁分はかかるのに。


「お疲れ様。稼げてないんだって?」


「ああ。もう隙間に入ることもできないよ」


 隙間に入ったら巻き込まれそうだもんね。


「じゃあ、他の都市にいってくんないかな? どうも他にもゴブリンの群れがいそうなんだよね。タカトみたいにそこまで信用性はないけど、アルズライズもあたしも他に群れがいると判断している」


 今もそれは変わってはない。海のこともあるんで後回しにしているけど。


「そうか。なら、いくとするか。どうだ?」


「いいんじゃないか? このままいても稼げんしな」


「そうしようぜ。道があるなら移動しやすいし」


 他も同意し、向かうことに決まった。


「弾はある? ガソリンならあるよ」


 ロイズたちにパイオニア五号を貸しているので、ここにもガソリンが入ったドラム缶を置いてあるのだ。


「ガソリンだけもらうよ。弾はセフティープライムデーでたくさん買ったから大丈夫だ」


 セフティープライムデーもいいっちゃいいんだけど、たくさん買っても管理できないから割引シールを配ってくれたほうが助かるわ。


 ガソリンを給油したらすぐに出発してしまった。


「……よく働く冒険者たちだよ……」


「それが冒険者って生き物さ」


 冒険者として生きるのも大変なものだ……。

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