ビシャ 都市国家編
第805話 準備
またタカトからリーダーをやれと言われてしまった。
期待されているのはわかるけど、なんか気が重い。また、あの重圧に堪えなくちゃならないかと思うと胃が痛くなってきたよ。
「そう気張るな。誰もタカトのようにやれとは言わないし、真似できるものではない。お前はいくつかある一部隊を任されただけ。一部隊にできることをやればいいんだ」
アルズライズからいろいろ教わり、もう師匠みたいな感じだ。タカトとは違う信頼感がある。
「そうそう。気楽にいこうよ」
「あんたはもうちょっと考えてから動きなさい」
「あたしは命令されたことを的確にこなすのが役目。失敗できないときに命令してくれたらいいの」
この子はある意味、鋼のメンタルよね。本当に失敗できないときに成功させるんだから。
「まあ、メビはそれでいい。タカトも失敗できないときにメビにやらせるんだからな」
あたしもそのほうがよかったよ。こんなに胃を痛めることもないんだからさ。
「そうしょげるな。タカトに認められる者はそうはいない。ミリエルの次くらいには頼りにされているだろうな」
ミリエルねーちゃんの次とかさらに胃が痛くなるよ。あたしは、あそこまで凄くないんだからさ……。
「ラダリオンねーちゃんの次くらいがよかった」
「ダメ。そこはあたしだから」
メビが強く主張する。
誰かの次なんて普通なら許せないことだけど、ミリエルねーちゃんもラダリオンねーちゃんもあたしたちより三段階、いや、五段階は上にいる。張り合おうとするのが間違っている。あの二人はバケモノだもの。
「ハァー。まずは人員集めだね。何人くらい連れてけばいいんだろう?」
情報があまりにもない。都市国家ってのもピンとこない。
「まずは拠点作りだからな、マーダたちを連れていけばいいだろう」
「そうだね。そんなに連れていくメンバーいないしね」
巨人はロンレアの復興に欠かせないし、ロンレアの人たちを募ることもできない。自由に動かせるのはとーちゃんたちくらいなものだ。
「──お、いたいた。あんたらが都市国家にいく獣っ娘かい?」
獣っ娘って、なんか嫌な響きだな。
「そうだよ。確か、駆除員の子孫って人だよね?」
アシッカで見た記憶はあるけど、話したことはないはずだ。
「ああ。わしもいくからよろしくな。付与を施したいものがあるなら遠慮なく言ってくれ。報酬は前払いでもらっているからな」
「投げたバールがアイテムバッグに戻す付与ってのはあるか?」
「お、バールのようなものを使うとはやるじゃないか!」
「いや、バールだよ」
なんだかノリが変なハーフエルフだな。
「アルズライズ。あたしはロンレアにいってくるよ」
「ああ。おれもミシニーを呼びにペンパールにいく。皆が集まってからミーティングをしよう」
「わかった。メビ、ロンレアにいくよ」
「了ー解」
ってことで、三号艇でロンレアに飛んだ。
空を飛ぶと本当にすぐだよな。歩くのがバカらしくなってくるよ。まあ、鈍らないよう毎朝走っているけどさ。
上昇して降下したらあっと言う間にロンレアの街が見えてきた。
とーちゃんたちがどっちにいるかわからないんで、まずは城下町の発着場に降ろした。
アシッカから物資を運んでいるので商人の人が担当している。
「とーちゃんたちこっちにいるかな?」
「マーダさんたちなら山の上にいますよ」
山の上? 確か、ラダリオンねーちゃんがいたはず?
三号艇でいってみると、とーちゃんたちが狙撃銃で海の魔物を撃っていた。
「とーちゃんたちが銃を使うなんて珍しいね」
ずっとマチェットか槍を使ってたのに。
「強い魔物には銃がいいと学んだからな。ラダリオンに教わっていたんだよ」
随分と丸くなったものだ。タカトに感化されたかな?
「それはよかった。都市国家ってところに一万匹以上のゴブリンが出たから駆除にいくよ」
タカトから聞いたことをとーちゃんたちに話した。
「じゃあ、ホームに入る」
ラダリオンねーちゃんがホームに入った。
「何人いける?」
「全員でいくよ。ミリエルの護衛はイチゴがやっているしな」
「わかった。荷物は?」
「必要なものはアイテムバッグに入れてあるから問題ない。すぐに移動できるようにしてあるからな」
あたしたちニャーダ族はセフティーブレットの機動部隊なもの。すぐに動けるのを売りにしている、ととーちゃんが言ってたっけ。
「じゃあ、ルースカルガンに乗って。セフティーブレットの秘密基地に向かうから」
まあ、別に秘密ってわけじゃないけど、なんか響きがいいからそうしてるみたいよ。なにがどういい響きなんだかわかんないけどさ。
とーちゃんたちを乗せたら秘密基地に向かった。
「アルズライズはまだ帰ってないか。とーちゃんたち、部屋に案内するよ」
部屋は数が決まっているのでとーちゃんたちは倉庫に案内した。
「人数が集まるまで自由にしてて。食料や食材はそこから好きに使っていいってさ。でも、飲みすぎないでよ」
ここにはお酒も置いてある。とーちゃんたちはあるだけ飲んじゃうから困ったものなのよね。
「わかっている。出発までは酒は抜くよ」
と言いながらお酒に手を出すダメな大人たち。まったくもー!
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