第795話 諸行無常

「……あなたは死者に敬礼するのね。ソレガシは拝んでいたけど……」


「オレもミリット様が背後にいてくれたら拝んでいたでしょうね」


 悲しいかな、オレの背後にいるのはセフティーとか抜かすダメ女神。神を嫌いになる理由しかないわ。


「マリン、カレン。遺体を片付けるぞ」


 棺を買ってきて遺体を集めて収めた。


「一つに収めることは許してください。ちゃんと葬りますんで」


 ちょうどよくフォークリフトを出せる倉庫があったので、パレットに載せてホームに運んだ。ミリエルなりラダリオンが入ってきたら城下町の墓に埋めてもらうとしよう。


「エクセリアさん。今日はこれで終わりましょう。オレはマルス様の様子を見たら部屋の前からホームに入ります」


「了解。わたしはここから入るわ」


 そこでエクセリアさんと別れ、マルス様の部家に向かった。


 食事をしてから眠ったからか、マルス様は起きてなかったが、肌艶はよくなっており、あとはよく食べれば数日で動けるようになるだろうよ。


「ミリシア様。衣服や食料を出しておきます。遠慮なく使ってください。代金はロンレア伯爵からいただくので」


 発言権と言う大金を出しても買えないものをいただきますからね。


「ありがとうございます。伯爵様によろしくお伝えください」


「わかりました。なにか伝えたいことがあるなら手紙でも書いててください。筆記用具も出してあるので」


 十五日には消えるものだが、十五日もあれば充分だろう。どれも安いもんだしな。


 マリンとカレンを残し、ホームに入った。


 皆出払っているようなので、回収したプリジックにマナックを装填した。


「改めてロードン処理ってスゲーよな」


 密封されていたとは言え、五千年間も状態を維持できるとかどんな技術力なんだか。それだけの技術力があっても滅びるんだから諸行無常だよ。


 プリジックに合うホルスターを探し、ファイブセブンと交換した。


「威力は外に出てからだな」


 魔弾が効かない魔物もいるからファイブセブンはアイテムバッグに仕舞っておこう。


 他のプリジックにもマナックを装填して玄関の棚に置いておく。プリジックの情報はプランデットに入っているからわかるはずだ。


 あとは明日の分の食料を買ったら装備を外してシャワーを浴びた。


 湯上がりのビールを飲んでいたら皆が続々と入ってきた。


 皆がシャワーを浴びたりしてミサロが料理を始め、その間にミリエルやラダリオンから話を聞き、こちらの状況を話した。


「そう言えば、エレルダスさんのところに技術者っていたよな?」


「はい。マーリャさんです」


「そのマーリャさんをこちらに寄越してくれ。なんか使えそうなものがあるかもしれないから探してもらおう」


 まだ管制室の他にも部屋はあった。倉庫らしき部屋もあったんだから使えるものはあるはずだ。


「わかりました。明日の朝にでも伝えますね」


 別に急ぐことでもないので了承し、シエイラや雷牙の話も聞いた。


 まだコラウスは切羽詰まった状況にはなっていないようで、なんとかやっているようだ。


 家族団欒ってわけではないが、こうして集まるのは大事だ。意志疎通やコミュニケーションが取れるってものだ。


 二十二時くらいまで話し合って、眠くなった順から部屋に下がっていく。ショートスリパーのミサロも肉体労働が続いているようでソファーで就寝。オレとシエイラはまだ眠くないので二人で晩酌。ごにょごにょしてから眠りについた。


 朝はいつものように六時くらいに起き、装備を整えてから外に出た。


 こちらはまだご就寝中のようで、通路に出ている者はいない。昨日用意していた大量のディナーロールを運び出した。


「タカト様」


 何往復かしていると、部屋からミリシア様が出てきた。


「おはようございます。マルス様は起きましたか?」


「はい。清々しく目覚めました」


「それはよかった。パンを出したので皆さんに配ってください。この粉はお湯に入れてかき混ぜて飲んでください」


 大した栄養にはならないだろうが、美味しいものを食べればやる気も出る。ロンレアに戻る力としてください、だ。


「ありがとうございます」


「手紙は書きましたか?」


「はい。持ってきます」


 部屋に戻り、手紙を持ってきた。


「カルザスさんにオレの仲間がロンレアからくるのでお伝えください。エルフなのですぐわかると思います。カレンを残していきます。なにか用があれば呼びにいかせてください」


 ホームに入り、手紙をミリエルに渡してから管制室を目指した。


「歩くとなると遠いな」


 三十分くらいかかって到着。装備そのままだから汗かいたよ。


 また装備を外してシャワーを浴び、ミサロが作ってくれた朝飯をしっかり食った。


「タカト。トラクターの新しいアタッチメント買っていいかしら?」


「構わないが、ミサロでつけられるか?」


「大丈夫よ。なんとなく理解したから」


 好きこそ物の上手なれってか。ほんと、好きなことには異常に賢くなるヤツだよ。


「秋に収穫できるヤツを植えてくれ。千人以上増えるからな」


「わかったわ。四十日くらいで実る豆があるそうだからそれを中心に植えるわ」


 そんな豆があるんだ。それはなによりだ。


 ミサロも出たのでオレも装備をつけたら外に出た。

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