第791話 遭遇

 巨人になって三十分ほど片付けをしたら山を降りた。


 なんてことはしてないのに、エクセリアさんは文句は言わず、また明日と言ってセフティーホームに入った。


「ゴルグ。オレもホームに入る。明日からクロニスクの木を探すから飲みすぎるなよ」


「ああ」


 木を削っているゴルグが短く答えた。どうやら職人モードに入っているようだ。


 ホームに入り、皆はもう眠りについているようなので、すぐに部屋にいって眠りについた。


 少し寝坊してしまったが、八時くらいには外に出れた。


「すまない、遅れた」


 エクセリアさん、ゴルグ、モニスが揃っており、いつでも出れる格好だったので、すぐにクロニクスの木を探しに出た。


 先頭はゴルグで、次はG兵器に乗ったオレ、バックパックの上にエクセリアさん。最後尾にモニスで山の中を進んだ。


 十時くらいに小休憩を挟み、昼前くらいにクロニスクの木を発見できた。


 植物に詳しくないんでなにに似ているかわからんが、幹はオレの腕でも回せるくらいで、高さは三メートルくらいしかない。他が十メートルもある木々の中でよく生きられているな。


「この辺のは小さいな。土地柄か?」


 ふーん。そんなもんがあるんだ。まあ、移すにはちょうどいいやろ(適当)。


 若木を探してもらい、移すように根ごと根を藁で括った。移すときってそうやるんだ。


 抱えれるサイズなのでそのまま持ってホームに入り、ホワイトボードに植えるよう絵で伝えた。ミサロならこれでわかるはずだ。農業女子だからな。


 それを何度か続けていると、ホームからクロニクスの木が消えていた。


 気づいたんだな~と思っていたらミサロが入ってきた。


「あ、移しているね」


「了解。農業したことがあるヤツ、きたか?」


「きたわ。ただ、十年以上離れていたから忘れている人も多いみたいね」


 確かに十年以上離れていたら忘れもするか。オレも前の仕事に戻れと言われても上手くやれる自信がないよ。


「ミサロの知識で新しい農業を教えてやってくれ」


 元の世界の知識がこの世界で通じるかわからんが、応用はできる、はず。将来のためにがんばってもらいましょう。


「さすがに木はわからないわ。でもまあ、土に馴染むようミリエルに回復魔法をかけてもらうわ」


「回復魔法って植物にも効果あるんだ」


「魔王軍で植物に回復魔法をかけていた魔法使いがいたからできるはずよ」


 魔王軍にそんな器用なのがいるんだ。知能が高く、いろんな種族がいるとは聞いてたけどさ。やっぱり獣の集団ってしか思えないんだよな。


「魔王軍って、想像するより組織的で人材が豊富なんだな」


「強い個を力で縛っているだけよ」


 不快そうに吐き捨てるミサロ。いい思い出がないみたいだからあまり魔王軍のことが訊き難いんだよな……。


「そうだな。じゃあ、まだまだ運び込むからよろしくな」


「ええ、任せて」


 話を終わらせてクロニクスの木を運ぶことに集中した。


 この近辺のクロニクスの木を根絶やしにするのかって勢いで移し替え、もう探すだけ手間だろうってところで終了させた。


 所々でゴブリンを駆除したので、そう悪い作業ではなかったな。


「ゴルグ。悪いが一人で戻ってくれ。オレらは巨人の村にいってみるよ」


 ここからだとそう遠くないはず。様子見がてらいってみるとしよう。ゴブリンの気配が多くなってきたからな。


「あいよ。おれは少し休ませてもらうよ」


「おう、そうしろ」


 一人働いていたからな。ゆっくり休んでくれ。


 ゴルグを見送ったら巨人の村に向かって出発した。


 しばらく道なきに道を進んでいると、モニスが停止。身を屈めた。


「誰かくる」


 誰か?


 モニスが指差す方向にセンサーを走らせると、人と思われる熱源がいくつかあった。


 ……こんなところに人……?


「冒険者か?」


 にしては山の中すぎるだろう。なんなんだ?


 コネクトを解除して外に出た。


「モニス! 笛を吹く! 警戒頼む。エクセリアさんは隠れて見ててください」


 二人に指示を出してプレートキャリアから笛を出して強く吹いた。


 プランデットで熱源を追っていると、びっくりしたように物陰に隠れた。


 もう一度吹き、冒険者であることを告げた。


 躊躇うようにお互いの顔を見合わせているような動きをしたのち、一人が代表してこちらに向かってきた。


「こちらはコラウス辺境伯領の冒険者だ! 依頼でロンレア伯爵領にきた! 今はロンレア伯爵の依頼で動いている!」


 そう名乗ると、代表者らしき者が急に走り出して姿を現した。


「ロンレアは無事なのか!?」


 現れたのは男で、年齢は四十歳くらい。体格がいいから冒険者か?


「全滅してないってだけで無事ではない。だが、新しい伯爵になって復興に取りかかっている」


「ロンドク様か?!」


「オレはまだ会ってないが、そんな名前だったと思う」


 ごめん。よく覚えてないや。城下町のことはミリエルに丸投げしているからさ。


「あんたは、ロンレアの生き残りか?」


「わたしは元ロンレア第三兵士団の団長、カルザス。今はミロスの防衛団を指揮している」


 やはりロンレアの生き残りのようだ。

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