第790話 知恵
「これ、片付ける必要もないな」
エクセリアさんの魔法を食らったゴブリンは肉塊となり、ゴルグとモニスの散弾を食らったゴブリンはミンチになっている。これではバデット化しても徘徊することは不可能だろうよ。
それでも辛うじて体が残っているゴブリンにマナイーターを刺していき、なけなしの魔力を吸い取った。
暗くなる前に終わらせたら巨人になってビニールプールを組んで風呂を沸かした。
「モニス。ゆっくり入れな。マリンとカレンは残しておくから。ゴルグは飲みすぎるなよ」
そう言ってオレは機動歩兵を出し、山の中に入ることにする。
「なにをするの?」
コネクトしようとしたらエクセリアさんに声をかけられた。この人も気配なさすぎ!
「まだ眠くもないんでこれで山の中を歩いてきます」
「なら、わたしも付き合うわ。疲れは取れたしね」
まあ、お互いホームに入れる身。飽きたら入ればいいだけなのだから了解と了承した。
「ちなみに、これを山崎さんのほうに譲ろうと思っているんですが、魔力が多くて戦闘に参加したい方はいますか?」
「戦力になるの?」
「魔力の量によりますね。オレの魔力、どのくらいか感覚的にわかります?」
ミシニーは感覚的にわかるって言ってたけど。
「いらないと思うわ。戦闘に参加できない者は別のことでソレガシを支えているからね」
「そちらのセフティーホームは五人しか入れないんでしたっけ?」
仲間は何人でも迎い入れられるが、セフティーホームは最大五人までしか入れないとか。決めて入らないとならないセフティーホームも面倒だよな。どうやって決めてんだろう?
「リミット様から非戦闘組は一部屋だけ入れるよう許可をいただいたわ。あなたが魔石を送ってくれるお陰でね」
「それはよかった。山崎さんには負けて欲しくないですからね。なにかと戦っていた勇者は死んでしまったようなので」
「勇者、本当にいたのね。ソレガシも自分は勇者ではないと言っていたけど……」
まあ普通、魔王と戦うのが勇者なんだろうが、女神視点では面倒事押し付け人としてか見てないからな。勇者はそうとうヤベーのと戦ったんだろうよ。
「まあ、オレたちはやれと言われたことをやるまでです。死にたくないんでね」
所詮、オレはゴブリンを駆除するのがお役目(仕事ではない)。高次元の問題に関わりたくない。世界が終わる前に新たな勇者をお呼びください。
コネクトとしてコクピットに乗り込んだ。
「ん? なんだ?」
コクピットのパネルに付箋がついてあった。
「えーと、なんて読むんだ?」
ミリエルが書いたんだろうが、この世界の文字でわからなかった。
「カルフィラです。マスターよりG子から改名されました」
あ、今はミリエルがマスターだっけな。
機動歩兵G兵器、マスターを選ぶ割りに誰でも乗れんだよな。ガバガバすぎん? 盗まれ……ても構わんか。魔力がないと一時間もしないで動かなくなるんだからな。
「カラフィラね。まあ、いいんじゃないか」
AIの名前なんてなんでもいい。さっさと出発しますかね。
G兵器にはちゃんと赤外線や暗視機能が搭載しているし、ライトもついているので夜の山を歩くのは苦ではない。機体(スーツ)にも補正機能がついているので難なく斜面も登れる。
まあ、これと言って目的があるわけじゃないので、山頂を目指した。
高い山ではないので二十分くらいで到着。辺りを見回すが、これと言ったものはなし。緑が生い茂っているだけだった。
「エクセリアさん。五分くらいセフティーホームに入っててください。この辺りを吹き飛ばすんで」
「わかったわ」
目の前でエクセリアさんが消えたら砲身を下げて辺りに向かって放った。
実体弾と言うか、レールガン的なものなので爆発はしないが、威力は高く、太い木を抉ったり折れてたりした。
「機動歩兵G兵器がある世界は物理高めなんだろうか?」
これだけの技術があるならビーム兵器とかつけてくれたらよかったのにな。
全弾(二十発)を撃ったらコネクト解除をして外に出た。
「ロケット弾のほうがよかったかな?」
まあ、拓けばよかったし、これでいいだろう。
五分が過ぎてエクセリアさんが出てきた。
「なにをするの?」
「夜でも飛べるよう灯台を建てようと思いまして」
ルースカルガンでも人工衛星や誘導波がないと、この原始の空を飛ぶのは難しい。
昼なら有視界飛行が可能だが、なぜか磁石が効かない領域があったり、魔力渦ってのもあるらしい。それを補うために向かってプランデットで調べる必要があったりするのだ。
「ここに灯台を建てて、プランデットを置けば簡易的な誘導灯になるんですよ」
「あなたはソレガシと違ったタイプなのね」
「オレには特筆した能力がありませんからね。知恵で乗り切るしかないんですよ」
「充分、特筆した能力を持っているように見えるけどね。ソレガシの参謀として支えてくれたら魔王軍を滅ぼすことも容易だと思うわ」
「そうしたいですが、それを許す女神ではないでしょうね」
誰かの下について命令されることを淡々とこなす。そんな楽な生き方をしたかったぜ。
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