第778話 聖女
お城の中は維持管理ができてないようで、かなりみすぼらしくなっていた。
掃除も長いことしてないようで埃が積もったところが大半だ。侍女や下女が足りてないようだわ。
「ライカ。人が集まるまで掃除するわよ」
掃除道具を持ちにホームに入ったらマリンとカレンが待機していたので手伝いをお願いしてみたら了解してくれた。
「タカトさんの命令以外にも聞くのね」
イチゴもそうだけど、マリンとカレンも謎な造りよね。人形を自動で動かすんだから。
「マリンとカレンは、掃除、できる?」
「「お任せください」」
できるんだ。ほんと、謎だわ……。
わたしとライカも掃除に加わり、エントランスを綺麗にした。
忙しく掃除をしていたら四十歳くらいの女性と侍女風の女性が三人やってきた。
「あなたがミリエル様ですか?」
「はい。ゴブリン駆除ギルド、セフティーブレットのミリエルです」
女神の呪いか、ゴブリン駆除ギルド、セフティーブレットが短縮できないのよね。
「わたしは、ロンドクの妻、マリーヌです。わたしたちも手伝わせてください」
事実上の伯爵夫人か。栄養が足りてないようでかなり痩せ細っているわね。それに、なにか病気になっているのか肌の色も悪い。
「ありがとうございます。まずはこれを飲んでください。女神から与えられた薬です。なにかご病気にかかっていますよね?」
「……わ、わかりますか?」
「なんの病気かまではわかりませんが、肌の色が明らかに病人の色です。まずはそれを治してからにしましょう」
回復薬大をマリーヌ様に飲ませると、スッと引くように顔色がよくなった。
「…………」
自分の変化がわかったのでしょう。手のひらを見たり顔を触ったりしているわ。
「……こ、これが女神の力なのね……」
駆除員のことが伝わっていても実感することなんてない。わたしも回復薬を飲ませてもらったときはこんな感じだったわ。
「他の方々も念のため飲んでください。これから忙しくなりますからね」
侍女風の女性には回復薬中を飲ませた。
「マリーヌ様は人がきたら受け入れをお願いします。侍女の方々はマリーヌ様の補佐を。一人、わたしの手伝いをお願いします」
「ラルザ。ミリエル様のお手伝いを」
「はい。ミリエル様、よろしくお願い致します」
「こちらこそよろしくお願い致します。ライカ、掃除の続きをお願いね」
そう言ってラルザさんを連れて外に出て、ホームから野営セットを積んだリヤカーを押してきた。
「集まってくる方々に食べ物を配給します」
わたしはあまり料理はできないけど、鍋に水を入れてコーンスープの素を入れて沸かすことはできる。
ラルザさんに人がきたら配るように教え、またホームに入ってジョイントマットを大量に買って、エントランスに敷いた。石の上に寝かせるのは酷だからね。
さらに大型石油ストーブを運び出す。夏とはいえ、お城の中は涼やかだ。暖かくしておいたほうがいいでしょう。
せっせと用意に勤しんでいると、病気や怪我を負った人たちが集まり出した。
「重傷や重病の者は火の側に。そうでない者は協力し合って身を清めてください。皆様の病気や怪我を完全に癒せるとは約束できませんが、軽くすることはできます。秩序よくわたしたちの指示に従ってください」
そう発し、まずは重病人を看る。
一刻も争うとわかる重病人には回復薬中を飲ませる。いきなり完治させると他の者と差が出て不満を口にするのもいる。言い方は悪いが、救うべき人物を優先させてもらう。ロンレアを復興するには若い人が重要だからね。生かすべき者を優先して生かさせてもらうわ。
重病人が終われば重傷人だ。こちらは簡単だ。わたしの回復魔法で自由自在。欠損がない人はさっさと完治させた。元気になってバシバシ働いてもらいたいからね。
「完治した人はよく食べよく休んでください。明日のロンレアにはあなたたちが必要なんですからね」
さすがに連続だと魔力と気力が尽きてしまった。
いつの間にか眠ってしまい、起きたら朝になっていた。か、体が痛い……。
昔は石の上でも平気で眠れて体も痛くなかったのに、今はジョイントマットの上で眠っただけで体のあちこちが痛いわ。
「ミリエル様、大丈夫かい?」
起き上がると、ライカが不安そうな顔をしていた。
「大丈夫よ。魔力切れを起こしただけだから」
久しぶりに魔力切れを起こしたわ。こんな感じだったわね。
スポーツ飲料をもらい、痛む体に自ら回復魔法をかけた。
不思議なものよね。自分の回復魔法で自分を癒すなんて。それなら
回復力を高めにして欲しいわ。
「え?」
周りに目を向けたら皆さんがわたしに向かって祈っていた。いや、わたし、死んでないわよ!?
「皆はミリエル様を聖女と認識したみたいよ」
と、マリーヌ様が現れた。
聖女とはよくタカトさんから冗談っぽく言われることはあるけど、さすがに聖女なんて大それたものにされたら困る。わたしは、そこまで聖なる性格でもない。どちらかと言えば腹黒いほうだ。ただ、回復魔法が使えるだけで聖女とか止めて欲しいわ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます