第777話 城下町
駆除員のことが伝わっているの!?
「ロンレアには使徒のことが伝わっているのですか?」
「この地は使徒様が切り拓き、発展させてくれた。我らが生き残れせたのも使徒様の遺産があったからだ」
使徒の遺産か。機動歩兵も使徒の遺産と言える。昔の使徒はなにかを与えられて送り込まれていたのね。
タカトさんは、少しの身体能力とホームだけ。でも、それがタカトさんを生き残させたと言ってもいい。力に頼らず、力に溺れず、腐ることなく知恵を活かし、創意工夫で生き抜いてきたんだからね。
……タカトさんなら特別な力をもらったとしても生き抜いたでしょうけど……。
「実は、こちらのミリエル様も使徒です」
ロンドク様の目がわたしを捕えた。
「ミリエルです。わたしの場合は、使徒たるタカトさんに救われて、駆除員として補佐しております」
「ミリエル様は、ゴブリン駆除ギルド、セフティーブレットの副ギルドマスターでもあります。タカト様の代役として参りました」
「まずは城下町に入れてもらえますか? ミヤマランで仕入れた食料をお渡ししたいので」
「……に、荷物が見当たらんが……?」
「駆除員だけが使える魔法があります。それは、ロンドク様もよくわかっているのでは? 教会も五百年前の駆除員が女神にいただいたものですよね?」
どんな能力か条件をもらったかタカトさんもわからないようだけど、教会はタカトさんの世界のもの。なら、駆除員が特別な力をもらうことも理解できるでしょうよ。
「あ、ああ。何百年か前の駆除員からも聞いた記録がある」
やはり百年単位で送り込まれていると、前の駆除員のことを探ったりするものなのね。ニホン人の特性なのかしら?
「無尽蔵に食糧は出せませんが、今より楽になることは約束します。もちろん、見返りを求めてのこと。なので、断っていただいても構いません」
ズルい言い方だけど、わたしたちは善意の集団ではない。わたしたちが生きるためにやっていること。出した分のことは返してもらうわ。
「随分としっかりした娘だ」
「タカトさんができないことをやるのがわたしの役目ですから」
にっこり笑ってみせた。
「そ、そうか。これは手強そうだ。もちろん、借りた恩は返させてもらうさ。今はそちらの支援がなければロンレアに未来はない。生きるためにも手を取らせてもらうさ」
と言うか、ロンドク様は決定権のある方なの?
「あ、ロンドク様は伯爵様のご子息です」
「今は父上の代わりにロンレアを指揮している」
道理で。伯爵様のご子息だったからの口調だったのね。
「地上はわたしたちが制しました。多少、魔物はおりますが、港町、その周辺、アシッカまでの道は完全に掌握しております。もし、アシッカやミヤマランに走らせたい用事があるならご協力させていただきます」
「いや、まずはロンレアを復活させたい。民に希望を見せたいしな」
と言うことで城下町に入る許可をもらい、機動歩兵にコネクトしてそのまま城下町に入った。
城門を潜ると、領民たちが集まっており、期待と不安が入り交じった表情をしている。十年以上、外界と遮断されるとこんな表情になるのね。
コネクトを解除し、皆の前でホームに入り、用意していた食糧を外に運び出した。
歓声が上がり、やっと領民たちの表情が輝いた。
「薪はありますか?」
「あるならもらいたい。火は魔法でなんとかしてきたが、まったく追いついていない状態だ」
「わかりました。ロイズ、巨人たちのところからもらってきて」
パイオニア四号+トレーラーで薪を持ってきてもらった。
「食糧と薪は順次運び込みます。病人や怪我人はいますか? わたしは回復魔法が使えるので、よほどの難病か重傷でなければ回復できます」
「教会の人間なのか?」
「わたしはモリスの民です。教会とは関係ありません」
モリスの民であることは隠すなとタカトさんから言われている。それは、モリスの民の自信にもなるし、誇りにもなる。モリスの民を纏めるために必要なことなのだとね。それで、よく思わない者が炙り出されるならそれもよし。恨みをぶつけられる生け贄が手に入る、だそうよ。
優しさと計算高さ。それが一緒に滞在できているんだから凄い人よね。
「ミリエルさん」
エレルダスさんが背後にきて囁き、目線であちらを見ろと指示してきた。
見るとマーダさんやヤカルスクさんたちがいた。てか、よく紛れ込んでいるわよね。エルフも獣人もいないところで。
「あとはお願いします」
そう短く返した。エレルダスさんがいればマーダさんやヤカルスクさんたちがいても違和感はないでしょうよ。
「ロンドク様。協力して病人や怪我人をお城に集めてください。部屋のほうがなにかと準備がし易いので」
「わかった。すぐに集めよう」
「ロプスさんもついてきてください。メーとルーは情報収集を。残りは食糧配布や拠点を探してください」
主要メンバーにはアイテムバッグを持たせてある。物資を渡せば空いている家を借りられるでしょう。
「ロンドク様、お願いします」
護衛のライカを連れてお城に向かった。
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