第775話 カルフィラ
ベルトをしてコネクトした。
一瞬、視界がブレると、箱の中に入っていた。
「これが機動歩兵のコクピットか」
タカトさんが撮った写真でわかっていたけど、実際にコクピットに座ると不思議な気持ちで一杯になるわね……。
「新たなマスターですか?」
「え、ええ、そうよ。あなたがG子なの?」
「正式名はコネクトですが、前マスターより紛らわしいとの意見がありG子と呼ばれるようになりました」
機械の脳って聞いたけど、なにか不満そうに聞こえるのはわたしの気のせいかしら?
「G子が不満なら名前を変えるわよ」
「お願いします」
ど、どうやら気のせいではなかったみたい。機械の脳でも感情はあるみたいね。
「コネクトって繋がる意味だってタカトさんに聞いたわ。わたしの故郷で繋がるはカルフィラと言うの。カルフィラではどうかしら?」
「それでお願いします」
気に入ってくれた、ってことかしら?
「操縦玉に手を置けばいいのかしら?」
「はい。両手を置いたらインストール開始します」
両手を操縦玉に置くと、機動歩兵G兵器のことが入ってきた。これが頭に入ってくる感覚か。タカトさん、よく耐えられたわね。
凄い頭痛に吐き気がするけど、なんとか吐かずに頭痛と戦い、三十分くらいしてやっと落ち着いてくれたが、気持ち悪さに外に出てしまった。
「ミリエル様!」
「どうしたんですか!?」
メーとルーがすぐに駆けつけてくれ、介護してくれた。
水をもらい一口飲み、口の中の苦さを胃に流し込んだ。
「……あ、ありがとう。もう大丈夫よ……」
気持ち悪さもなんとか収まってくれた。タカトさん、なぜ平気だったのよ? いや、タカトさんは女神の力で体を改造され、女神が創ったものに乗ったからか。わたしのような通常な人間に適合するほうがおかしいわね……。
「そう考えると、タカトさんが使徒だというのも頷けるわ」
やはりタカトさんは他と違う。違わないのは心だけでしょうね。
それが救いなのでしょうが、タカトさんとしては一番心を変えて欲しかったでしょうね。タカトさんは責任感が人一倍強いから。
でも、そうするとわたしたちは救われなかったでしょうから難しいところよね。やはりタカトさんの心を守るのはわたしたち、ってことね。
「これを」
エレルダスさんが回復薬をだして渡してくれた。
「ありがとうございます」
遠慮なく受け取り、水なしで飲み込んだ。
回復薬小だったのでしょうが、脱力感が消えてくれた。ふー。
「……神代の兵器は違いますね……」
タカトさんがいた世界の技術や古代エルフの技術とも違う。神の力でないと創れないものだと肌で感じられるわ。
「そうですね。わたしたちの技術でも強化服は造れますし、より強い兵器は造れますが、これだけのものを動かす動力がありません。一体なにで動いているのが不明です」
「タカトさんは、バッテリーじゃないかと言っていましたね。搭乗者の魔力を電気に変えているとか」
タカトさんも予想でしかないけど、基本となる強化服がバッテリーで動いているようだから変な改造はしないだろうとは言ってたわ。
「確かに神代の兵器ね。違う技術を無理矢理合わせるのですから」
わたしには理解できないけど、違う魔法を組み合わせるものなんでしょうね。
「魔力のあるミリエルさんが乗ってもこれでは、乗れる者はかなり限定されますね」
「タカトさんは、魔王と戦う人に渡すとは言ってますね。あちらに有効に使える者がいるみたいなので」
それはわたし以上に魔力を持つ者がいるってこと。やはり魔王と戦うとなるとバケモノ級が揃うのね。
「もったいないわね。強力と言うわけではないけど、イチゴ並みには使える兵器だと思うのだけれど」
「わたしもそう思いますが、タカトさんはそこまで重要視してませんね。パイオニアと同等に見ています」
便利な道具。あれば使うし、なければ別のものを使うだけ。チートタイムすら惜しいとも思わないのだから機動歩兵を渡すくらいなんてもないのでしょうね。
「タカトさんらしい柔軟性ですね。見習いたいものです」
「そうですね。わたしもです」
まあ、見習おうとして見習える人ではないんだけどね。あれは天性のものだから。
「もう一度コネクトしますので、出発しますね」
「無理しないでね」
「はい。では──」
コネクトしてコクピットに乗り込んだ。
「カルフィラ。起動します」
別に言う必要もないんたけど、初めての兵器。言葉にして動きを確かめていきましょう。
「はい。G兵器起動します」
カルフィラも合わせてくれたようだ。本当に偽りの脳なのかしら?
操縦玉に動けと念じると、モニターに移る視界が動いた。
「問題はあるかしら?」
「問題ありません。すべてオールグリーンです」
緑の光は順調的な感じだったわね。
いろいろ動かすと、どう動いているかがわかった。ブラックリンより扱いやすいわね。
大型のマチェットをつかみ、何度か振ってみた。
「随分と滑らかに動くのね」
動きをサポートして強化すると歌っているだけはあるわね。
「エレルダスさん」
「はい」
お、ちゃんと外の音が自然に聞こえるんだ。ほんと、不思議な造りをしているわ。
「では、出発します。わたしが切り開くので指揮はお願いします」
今からわたしは重機となる。城下町まで切り開くとしましょうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます