第764話 ホームミーティング
皆には悪いが、オレらはホームに入って休ませてもらった。
もちろん、ミーティングがあるし、物資の補給や弾薬を触らなくちゃならない。ミサロは女王(なんて名前だっけ?)の世話やペンパールにいったりしてホームにいる時間が少なくなったのだ。
でも、不思議と作り置きはあったりする不思議。いつ入ってきてんだ?
雷牙の話は心許ないが、シエイラが補足してくれるので状況はよくわかった。
「ライダンドに現れ始めたか」
まだ尖兵ってな感じで、領民はまだ慌てておらず、ご隠居様や伯爵が食糧を安全な場所に隠すよう指示を出しているそうだ。
「ルースカルガンを移動しておかないとダメだな」
吸気口とかないタイプだが、視界を奪われたら危険だし、ただ飛ぶしかできない輸送機。ミジャーに対抗はできないだろう。まあ、やろうと思えばやれるが、万が一のときで充分だろよ。
「マルデガルさんは、まだライダンドにいるのか?」
あっち方面のゴブリンを駆除しているはず。あの人も結構自由人だからな~。
「ええ。女神の言うとおり、ゴブリンが現れているそうよ」
「じゃあ、ホームに誰かを入れるのも時間の問題だな」
まあ、一番の問題はそれだけゴブリンがいることなんだがよ。ほんと、どこから集まってくるんだか。
「食糧の移動は順調なのか?」
「順調よ。隊商もミジャーがこないだろう領地に向かっているはずよ」
物価高騰する前に隊商に食糧を買いにいかしたのだ。
「ミヤマランもこちらの陣営と言ってもいいし、今年がダメでも来年はアシッカが実る。仕事もあるから飢えることにはならんだろうよ」
絶対大丈夫! とは言えないが、海さえ確保できたら心配はかなり減る。領主代理の胃はそこまで痛まないだろうさ。
「そう言えば、あの双子は生きているか?」
まあ、あの二人ならどこでも生きていけそうだが、駆除員がいない場所。なにか起こってもすぐには助けにいけないのだ。
「あの二人なら余裕で生きていますよ」
「そうだな。でも、いつでも請負員を助けにいく組織を創りたいな」
今は無理だが、街道が整備されたら落ち着け……るかな? 変わらぬ日々を送ってそうな気がする。いや、生きているならそれも許容するけどよ。
こうして皆が集まるとあれやこれやとわかることや問題点が出てくる。けど、そのためにミーティングを行っているのだから有意義ってものだ。目指す方向が固まってくるんだからな。
「マイセンズで発掘するしかないですね」
そうだな。マイセンズにはまだ使えそうなものが残っている。ただ、それを動かすマナックがあるかどうかだ。今のところ魔石からマナックにするのは山崎さんのところでしかできないからな~。
「ゴブリンの女王はどうしている?」
女王と騎士二人は館で人間社会を学んでいる状況だ。
「今のところ上手くやっているわ。緑の肌はミサロで慣れているし、人の姿をして言葉が話せるからね」
ミサロもゴブリンの血は流れているし、そのことは知らせている。それで差別することは自分たちも差別されるのを認めているようなもの。館ではすべての種族は人と見なす。種族は個性だと教えている。
「それはよかった。種族間での争いは止めて欲しいからな」
人間同士でも争えば厄介この上ないのに、種族間での争いなんてさらに厄介なことになるだろうよ。それだけは絶対に阻止しなければならないのだ。
「タカトがいれば大丈夫よ」
そう言われるのが難しいところなんだよな~。
オレは寿命で死ぬ。だが、組織は誰かが欠けてもすぐに補充され、誰がトップになっても組織が運営されるのが理想的だ。オレがいなくてもセフティーブレットが回るようにするのがオレの責任なのだ。
「ミリエル。同行しているモリスの民はどうだ? 素直に従っているか?」
「はい。希望が見えているので素直に、いえ、積極的に従ってくれますよ。これだとロンレアに着いたらマイセンズにいる女性を連れていくのもいいかも知れませんね。ルーとメーにはモリスの女性を優先的に確保しろと命じてますからもう集まっていると思いますし」
女性をあてがう、ってのもゲスな考えだが、奴隷落ちした女性が幸せになるには稼いでいる男と結ばれるのが近道だろう。あとは、お互いの愛で幸せを見つけてください。仕事は与えるので。
「問題は、ロンレアの状況がどうなっているかだよな~」
壊滅しているのは間違いないとしても、人がまったくいないってのも困る。社会体制は崩壊していても人が残っててくれるのなら復興の手立てはある。可能ならば千人くらい残っているのがベストだな。
アルズライズの話ではかなりデカい港街であり、十万人とも二十万人とも言われ、この国で三番目に大きいと言われていたそうだ。
「ロンレアから流れてくる者はいないからね」
大半が海岸線の街道を逃げたそうだが、アシッカに流れてくる者は十年以上ない。まあ、要塞がゴブリンに占拠された時点で通ろうとは思わんわな。
「明日で作業を終わらせて、ロンレアに向かうとするか」
まだ魔石が残ってそうな感じだが、それに時間を取られてもいられない。そこそこ水の魔石を手に入れられたんだからよしとしておこう。
「それならニャーダ族に先行してもらってはどうです? ロンレアまであと少しですし」
「そうするか。アズルライズたちもロンレアに着いているころだろうしな」
ビシャとメビの教育と言ってもアルズライズの場合、実戦でから学ばせるだろう。なら、もうロンレアに着いていても不思議じゃない。爆速で突っ切ったんじゃないか?
それからミサロも入ってきたのでミーティングと言う名の団欒を続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます