第761話 ロンレア方面大隊(仮)

 朝、発着場にくると、全員が揃っていた。


 ……モリスの民は団結心が強いのか……?


 ミリエルからの話ではそんな感じはしなかったが、奴隷としてきた恨みから団結しているんだろうか?


 まあ、団結してくれるのならこちらとしてはありがたいか。反乱なんてされたら堪ったもんじゃないからな。


「この中で兵士だった者は?」


 そう尋ねると、四人が手を挙げた。意外と少ないな。兵士じゃないヤツも奴隷になっていたんだな。


「とりあえず、その四人を小隊長にする。モウラ。お前が大隊長だ」


 第二隊を任せていた男で、ヨシュアとの協議でロンレア方面大隊(仮)の大隊長に任命したのだ。


「了解です!」


 要塞には午後からにして、モウラにロンレア方面大隊(仮)の組織体制を決めさせる。


「エルガゴラさん。なんです、それ?」


 いや、見てわかるが、オレのなにかが理解するのを拒否してんだよ。


「まずは二体をメイドにした。しばらく問題点を洗い出して、バージョンアップさせる」


 うん。オレには理解できない世界を生きているようだ。


「身の回りのことをやらせるんですか?」


「最終的には万能メイドにしたいな。まあ、頭脳となるこの石がないと不可能だがな」


 と、紫色の石をアイテムバッグから取り出した。


「ん? マギャ石ですか?」


「知っているのか?」


「アシッカのエビル男爵領の洞窟で見ました。確か、いくつかホームにありますよ。ちょっと待っててください──」


 ホームに入り、ガレージの奥の工具箱に隠しておいたマギャ石を作業鞄に入れて外に出た。


「す、凄い。アシッカ周辺にあるとは知っていたが、まさかこんなにあるとは……」


 そんな見つけ難いものだったんだ。マイセンズ系のエルフには日常品になっていたのにな?


「綺麗だから持っていたもの。必要なら使ってください」


「助かる。付与を施す代金にツケといてくれ」


 まあ、付与を施す代金なんてテキトーなもの。ツケでもなんでも構わないさ。


 エルガゴラさんが宿舎に戻ってしまったので、大隊員のために請負員カードを発行して配った。


 なんやかんやで昼になり、昼飯を食わせたらルースカルガン一号艇で大隊員を二回に分けて運ぶことにした。


 ちなみにオレはホームからラダリオンにダストシュート移動させてもらいます。


 外に出たらホームから荷物を運び出し、やってきた大隊員に靴や服、マチェットとナイフを支給した。


 さすがに人数が人数なので回復薬は支給できないので、安全第一、命大事に行動するよう言い含めた。


「モウラ。しばらくはここで訓練だ。よく食わせてよく休ませろ。銃も覚えさせてくれ。あと、慣れたらゴブリンも駆除も定期的にやってくれ」


「マスター。ここにもパイオニアを置いてください。機動隊を組織さしたいんです」


 機動隊ね。そんなこと考えていたんだ。見所あるじゃん。


「わかった。ロンレア方面大隊(仮)専用にダロンを二台買ってやるよ」


 七十パーオフもあるし、二台合わせても百万円くらい。六千万円もあるから惜しくもないさ。


 ……ほんと、オレは金があると気が大きくなるタイプだよ……。


 ホームに入り、四人乗り用のタロン1000を二台買って外に出した。あと、ガソリンが入ったドラム缶を二本と洗浄機、ガソリンの発電機も買って出した。


「車庫は巨人に作ってもらえな。ここはいずれ新要塞都市にするから」


 ここはロンレアよりだが、アシッカまでの道はそう緩急はない。道さえよければ四日もかからんだろうよ。


「そのうちセフティーブレットの輸送部を寄越す。車の構造や簡単な修理を学ぶようにしてくれ」


「了解です」


 その日はここに泊まることにしてタロンの運転を教えることにした。


 モウラはアシッカでパイオニア二号を運転していたようで、オレは基礎を教え、興味がありそうなヤツをモウラに任せて運転させた。


 半日もなかったが、運転なんてそう難しいものではない。タロンに興味があるヤツは二時間もしないで運転できるようになったよ。


「モウラ。無茶なことはするなと命じるが、大隊員の命と引き換えとはするなよ。いざとなれば迷わず捨てろ。それで罰することはない。逆に大隊員を無闇に使い潰したら首を切り落としてやるからな」


 限りある命。無駄にしたら許さんからな。


「ハッ! 了解しました!」


 ビシッと敬礼で応えた。


「女っ気がないから交代でアシッカに戻ることも許す。道の状態も確認してくれ」


 運転の練習にもなるし、男同士で間違いが起こることもないだろう。


「惚れた女がいたら結ばせてやれ。またミヤマランから奴隷を流してもらうから交代させろ。モウラに大隊を去られたら困るから惚れた女がいたらここに連れてこい。巨人に家を建ててもらうからよ」


「ふふ。それはありがたいです。気になった女がいたんで」


 そうなんだ。手が早い男だよ。まあ、元奴隷とは言え、アシッカでは高給取り。女のほうが黙っていないか。


「一緒になりたいならここの要塞都市の市長にしてやるよ。なんなら伯爵に男爵の位を与えるようにお願いしてやる。出世したいのならがんばることだ」


「はい! がんばらせていただきます!」


 やる気があってよし。オレの仕事が減るってものだ。

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