第760話 メイド隊
「ハァー。無事、倒せたか」
倒せるとは思っていたが、終わるまでは気が気じゃなかったよ。相手は怪獣クラスなんだからよ。
ロケット花火を打ち上げ、皆を一旦集合地点に集合させる。
かなり広範囲に散っているから集合までに時間がかかったが、陽が暮れる前にはなんとか集まることができた。
「ご苦労様。いい連携だったぞ。まずは食事にするとしよう」
皆疲れているだろうからまた焼き肉とする。
さすがに酒は控えてもらい、腹いっぱい食ったら休んでもらい、イチゴとオレで見張りに立った。
「ダンたちはグロゴールの解体。マーダたちはグロゴールの巣を探索。ロイスたちは街道沿いで待機。オレは一旦、アシッカに戻って第二陣を連れてくる」
エレルダスさんからの報告で、ミヤマランから奴隷(モリスの民)がやってきたとのこと。なので、今のうちに連れてこようと思ったのだ。海まであとちょっとだしな。
「ミリエル。あとは頼む。ヤカルスクさんはミリエルの補佐をお願いします。ラダリオンは要塞で受け入れ態勢を整えてくれ」
そう指示を出し、ブラックリンでアシッカに戻った。てか、なんでヤカルスクさんがいたんだ?
さすがに徹夜だったのでホームで休ませてもらい、夕方から動き出した。
ミヤマランから奴隷を連れてきた商人から酒を飲みながら話を聞き、名簿を作成した。
朝方少し仮眠し、奴隷とエルガゴラさんを発着場に集めた。
「エルガゴラさん、稼げました?」
一緒にロンレア伯爵領にいくはずだったが、ゴブリン駆除に出かけて帰ってこなかったから置いていったのだ。
「稼いではなくなる日々だよ」
マニアとは業の深い生き物のようだ。食っても食っても腹が満たない餓鬼なのかな?
「奴隷なんてどうするんだ?」
「開拓団員にします」
行商奴隷団や世間から隠す意味でもロンレア伯爵領に連れていくべきだろう。ミヤマランにいたモリスの民の女性も集めてもらっているので野郎どもに環境を調えてもらうとしよう。
「ところで、奴隷紋とか消せたりできますか?」
「できるぞ。奴隷紋は付与系魔法だからな」
あっさりと答えると、五十以上もある奴隷紋をあっさり消し去ってしまった。いや、どんだけだよ!
「……メチャクチャですね……」
「昔はこの力で嫌なこともあったが、今は感謝しているよ。オタ活が捗って仕方がない。いや、追いつかなくてもどかしいよ」
……オタクって、何歳になってもオタクって生き物なんだな。尊敬できるかは別だけど……。
「オレは一ノ瀬孝人。お前たちを買った者だ。奴隷紋はこの通り消した。そして、このときよりお前たちはアシッカの民となった。戸籍は記録され、アシッカ生まれであることを名乗ってもらう。ただ、心の中でどう思うと勝手にするといい。大事なのはお前たちはもうアシッカの民になったという事実だけだ」
戸籍が緩い時代とは言え、記録されることが大事であり、既成事実が物を言うってことなのだ。
「そして、アシッカの民である諸君らに仕事を与える。これから海沿いにあるロンレア伯爵領に移り、復興と開拓をやってもらう。いずれ諸君たちの同胞も移すことになる。そのために諸君らには粉骨砕身で働いてもらう。もちろん、仕事をしたら報酬は与える。まずは前払いとして一人銀貨一枚と銅貨二十枚を渡す」
今渡したところで使い道はないが、金を持っていれば安心するだろう。
「いいのか? 逃げるのではないか?」
ボソッとエルガゴラさんが囁いてきた。
「これで逃げるのなら最初から使えないってこと。あとは自分の責任で生きていけ、ですよ」
これは安心させると同時に選別でもある。不穏分子は早々に排除しておきたいからな。
「そうか」
とだけ答えたエルガゴラさん。なんだ?
「明日の朝、出発する。マリーダ。あとを頼む」
支部長のマリーダにお願いし、エルガゴラさんに付与して欲しいものをお願いする。
あれやこれやお願いしたら報酬としてなんのキャラかは知らんが、可動式フィギアの素体を要求され、それを巨大化するようお願いされた。
「なにするんです?」
巨大化させたことで等身大になったフィギアが六体。報酬にしては安すぎません?
「わし専用のメイド隊を創る」
はぁ? メイド隊? あなたはなにを言ってんです?
「夢だったのだ。メイド隊を創るのを。いろいろ試したが、可動域が狭くて動きが悪かったのだ。だが、異世界の技術ならそれが可能となり、巨大化することで等身大となる。なに、顔は作ってある。服はやはりメイド服だな。ふふ。欲しいものがまた増えてしまった……」
ダメだ。オレにはついていけない世界にいってしまった。
「あ、まあ、明日の朝に出発しますんで」
聞こえているかわからんが、この人の側にいたくない。早々に立ち去らせていただくとしよう。
「あ、マリーダ。オレは城にいってくる。朝には戻ってくるよ」
伯爵にも状況を話しておかないとならないし、話し相手になってやらんともいけない。アシッカはまだまだ問題を抱えている。話を聞いて、一緒に問題を考えることが伯爵の成長ともなるからな。
まだブツブツ言っているエルガゴラさんを横目にパイオニア四号を出してきて城に向かった。
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