第752話 明日なに食べよう?

 ラダリオンにダストシュートとしてもらい、要塞を見ると、なかなかいい感じに炎が上がっていた。


「燃えてはいるが、要塞は壊れてないな」


 ガスボンベ十本で要塞は爆発しないのか。結構頑丈に造られてんだな。


「ラダリオン。巨人になってRPGー7を何発か撃ち込んでくれるか」


 巨人サイズになったRPGー7の爆発ならそれなりに破壊されてくれんだろうよ。


「わかった」


 ホームに入り、RPGー7と弾頭を小脇に抱えて出てきた。それ、爆発物なんだから雑に持ってこないの。


「全員、飛来物に気をつけろよ」


 一キロくらい離れているとは言え、爆発で瓦礫が飛んでくるかもしれない。注意喚起しておくとしよう。


 威力を高めるために要塞まで近づき、オレは安全のためにホームに入らしてもらってラダリオンが撃つのを観戦させてもらった。ちなみにラダリオンは反射神経がよろしいので、飛来物が向かってきても余裕で避けられます。


 四発撃ち込み、黒煙がこちらに流れてきてしまった。


 すぐに外に飛び出し、ラダリオンに抱えてもらって逃げ出した。


 皆のところに戻り、状況を話したら今日はここでキャンプすることに決めた。


 巨人たちに場所を拓いてもらい、ニャーダ族には枯れ枝や薪を集めを頼み、オレとラダリオンでホームからキャンプ用品を運び出した。


 今日は稼いだので、百万円くらい使って酒や料理を振る舞うことにした。


「明日のことなんて考えず、食べて飲んでくれ。見張りはイチゴにさせるんでな」


 周辺にいたゴブリンは潮が引くようにいなくなった。他の魔物もそれに釣られて逃げただろう。よほどの魔物でなければ近づいてこない。念のため、イチゴを見張りに立たせておけば充分だ。


「死なないていどに飲めよ!」


 乾杯はなしに、それぞれに任せて祝勝会を行った。


 オレは放置していた機動歩兵G兵器を回収するためにコネクトオン。コクピットに乗り込んだ。


 残り稼働時間は二十分。だが、時間が過ぎて魔力も回復したので魔力を補充。三十分まで稼働できるようになった。


 キャンプ地まで走れば十分くらいの距離なので、少し周辺を探ることにした。


 別に違和感があってことじゃない。単なる気まぐれだ。なのに、勝利を台無しにするものを見つけてしまった。


「……この世は弱肉強食なんだな……」


 何度となくわからされてきたが、大量の白骨を見せつけられると胸が締めつけられる。


 なにを食って増えてんのかと思ったら人間を食っていたわけか。


「……秋にはアシッカにきてたのかもしれんな……」


 要塞に人間の骨はなく、要塞周辺にいたゴブリンはすぐ狂乱化していた。ロンレア伯爵領に向かうのが遅かったら、ロンダグ男爵領は襲われていも不思議じゃなかっただろうよ。


 オレは神に頼らないし祈らない。たまに感謝してもいいかな~って思うときもあるが、神など滅びてしまえと思っている。


 死者に対する祈りは冥福を祈るもの。ダメ女神の下に向かわず、魂が救われるようにだ。


「九万匹ものゴブリンを殺めたオレが祈っても迷惑なだけか」


 害獣とは言え、大虐殺をしておいて他の種の死に悲しむとか、なんの正統性があるというのか。傲慢にもほどがあるだろう。


「……生き物はなんで他の命を奪わないと生きられないんだろうな……」


 だからって自分の命を捨てることもできない。まったく、生き物とは業が深い存在だよ。いや、そんな命を創造したのは神か。なら、仕方がないな。


 妙に納得したら悲しみがどっかにいってしまったよ。


 コネクトを解除して外に出て、ホームに戻って花と線香を買ってきた。


 花を白骨の山に投げ入れ、線香を焚いて地面に刺した。


「酒もお供えしておくか」


 葬儀の段取りや作法とかまったく知らんが、死者を弔うのに決まりはないはず。生きている者が思うがままに死者を哀悼すればいいはずだ。


「いつか、石碑でも立ててやるか」


 それがなんの意味になるのかわからんが、ゴブリンを放っておくと大惨事になると未来に知らせるとしよう。


 手を合わせることはせず、缶ビールで哀悼を示した。


 一気に飲み干したらコネクトオンしてコクピットに乗り込み、キャンプ地に戻った。


「こちらは生き生きとしてんな」


 先ほどの陰鬱とした思いが薄れ、自然と笑みが漏れてしまった。


「あんな未来にしないようがんばらんとな」


 誰かに哀悼を祈られるより皆で笑ってられる未来が断然いい。道中、辛いことがあろうとな。


 コネクトを解除して外に出ると、ラダリオンが麻婆丼を持ってやってきた。


「これ美味しいよ」


 それはラダリオンなりの気の使い方だ。


「ありがとな。いただくよ」


 ちょっと辛味が強い麻婆丼をいただいた。


「美味いな」


「食べることは生きること。お腹一杯なら明日も生きられる」


 ラダリオンにわかるくらい気落ちしていたんだろうか? 普通にしてたつもりなんだがな。


「そうだな。明日も腹一杯食えるようにがんばらないとな」


 人間、美味いもの食っていれば幸せと感じられる生き物。明日なに食べようと考えられる人生が幸せなんだろうな……。


「久しぶりにカップラーメン食べたい」


「カップラーメンかよ。もっと美味いもんがあるだろう」


「久しぶりに食べるからいいの。ミサロ、カップラーメン買ってくれないから」


 栄養面のことも考えるようになってからカップラーメンとか出来合いのもの買わなくなったっけ。


「じゃあ、ロイスに買わせるか。ミサロに見つからないところに隠しておけよ」


 オレもなんだか食いたくなった。夜はカップラーメンパーティーとしようかね。フフ。

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