第751話 ガス爆発 *90000匹突破*

 ──ピローン!


 ゴブリンの気配を探すのが大変になってきた頃、電子音が鳴った。


 ──九万匹突破だぁー! イエーイ! 


 パリピか。テンションたけーよ。


 ──十万匹の壁までもう少し。期待してますよ~! ウェイウエーイ!


 もう黙れよ。イラつきで憤死しそうだわ。


「ロイス。一旦外に出るぞ」


「終わりか?」


「まだ何匹かいるが、脅威は去った感じだ。態勢を整えてからにしよう」


 二時間近くは戦い続けた。皆も疲れているだろうから休憩を挟むとしよう。


 声をかけながら外に向かい、全員揃っているか点呼をする。うん、全員いるな。


「ダンたちは一旦要塞を出て休憩しろ。酒を飲みたいなら飲んでも構わないが、酔うほどは飲むなよ。片付けが残っているんだから」


 巨人たちが撃つとほとんどが肉片に変えられている。今日中に片付けないと酷いことになりそうだ。


「マーダたちも休め。オレが残りを片付けてくるから」


「──おれがタカトについていく。皆は休め」


 一番動いたのはマーダだろうに、オレを一人にしないために立ち上がった。


 礼を言うのもなんなんで、マーダを連れて要塞内に入った。


 ゴブリンの気配は数えるだけだが、なかなかそこの場所に辿り着けない。隠し扉でもあんのか? 


 オートマップを取ってきて、見合わせながら探ると、やはり隠し扉があるようだった。


「これか」


 戦士の銅像が左右に動かせるようになっており、右にずらすと隠し扉が開く構造になっているようだ。


「無駄に凝ったギミックだな。マーダ。通路の先に空間があって四匹か五匹いる。気をつけろよ」


 オレが入ろとしたらマーダが先に入ってしまった。過保護か。


 まあ、通路は狭く、並んで入れない。マーダに任せるとしよう。


 明かりはないのでライトを出して照らしながら進み、空間に出た。


 ゴブリンは奥で震えており、見た目からメスだとわかった。


「女王ってより妃か?」


 一匹だけ二メートルくらいあり、腹が膨れていた。女王を産む個体なのか?


「マーダ。殺るか? 運がよければ一千万円が入るぞ」


 ダメ女神の気まぐれか、他者が女王を殺してもオレに一千万円が入ってくる仕様になっている。ただ、オレが殺したらオレにしか入らないがな。


「わかった。殺ろう。銃を貸してくれ。ゴブリンとは言え、孕んだのを突き殺すのは気分が悪いからな」


 ゴブリンに対してメスもオスも関係ないオレにはマーダの心情は理解できないが、頭では理解できたのでファイブセブンを抜いて渡した。てか、使い方知ってんの?


 なんて心配はいらなかった。弾を装填してゴブリン妃(仮)に銃口を向けて引き金を引いた。


 一気に二千万円が入ってきた。ゴブリン妃は女王でもあったんだ。なんだかその辺が曖昧だな。ダメ女神らしいと言えばダメ女神らしいけどよ。


「再利用しようと思ったが、この要塞は破棄したほうがいいな」


 ロンレア伯爵領に続く道に構える要塞。必要だからここに要塞を造ったはず。重要だからと再利用を考えていたが、これだけゴブリンの血に汚れたところを使うってのも心情的に嫌だろう。


 往来が増えれば金も増える。巨人に与えて更地にしてもらえばいいだろう。開拓すれば巨人の生存圏が増えるだろうからな。


 マチェットで女王の胸を裂いて魔石を取り出す。


「なかなかデカいな。数十年は生きたんだろうか?」


 拳大の魔石となれば二十年生きた証だと、アルズライズが言っていたっけ。これも拳大くらいあるからそんくらい生きてたんだろうよ。


「他のゴブリンも長く生きてそうだな」


 侍女的な立場のゴブリンなんだろうか? 魔石もゴルフボールサイズだった。このくらいのばかりだと助かるんだがな。


 魔石がほどほどで弱いとかカモでしかない。ここにいるヤツだけで一財産になるぜ。あ、王の魔石を取り出してなかったわ。


「マナイーター、もっと欲しいな」


 間違った使い方してね? とか言われそうだが、オレ的にはバデット化防止剣としか見てない。道具なんて使い方次第。使ってなんぼだ。


「マーダ。ゴブリンを端に寄せてくれ。ガスボンベを買ってくるから」


 ガス爆発で要塞が吹き飛ぶとは思えないが、所々にガソリンタンクを配置したらよく燃えてくれんだろう。


 ホームに入り、二十キロのガスボンベを十本買ってきて、マーダたちにガソリンタンクを要塞内に配置してもらった。


「金があると気が大きくなるな」


 軽く四千万円も儲けたから百万円も使ってしまったよ。山火事にならないよう気をつけんといかんな。


「ラダリオン。オレはガスボンベの封を開けてくる。一キロくらい離れて一時間したらホームに入ってくれ」


 どこまで被害が及ぶかわからない。安全を考えて一キロは離れてもらうとしよう。


「火が森に移ったらすぐに消してくれな」


 そう告げて王がいた空間に向かい、ガスボンベの封を開いて回った。


「上手く爆発してくれよ」


 すべてを開いたらホームに入り、窓から外を眺めながら缶コーヒーで一服。三十分したら手榴弾のピンを抜いてダストシュート。数秒後に窓が紅蓮色に染められた。


「勝利に乾杯だな」


 まだやることがあるから酒は飲めないので缶コーヒーを掲げて勝利を祝した。

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