第750話 ピンク髪のエルフ *89000匹突破*

 逃げ道を塞いだようで、それ以上ゴブリンが出てくることはなかった。


「受け継ぐと言っておいてなんだが、よくこんなものでゴブリン駆除をやろうと思ったよな。難儀でしかないわ」


 電磁砲とミサイルポッドは強力だが、長時間戦えるほど弾薬は多くなく、携帯武器はない。いや、前はあったようだが、携帯武器は一度なくすと復活しないようだ。


 まあ、機動歩兵G兵器のマニピュレーター(手)は人の手よりちょっと大きいってだけなのでHK-GM5が持てたからいいがよ。


 一番の問題は機動歩兵G兵器はホームに入れられないってことだ。いや、入れようと思えば入れられるよ。だが、それは軽トラなどの荷台に置いて、運ぶ形で入れなければならないのだ。


 ペンパールからだってルースカルガンで運び、軽トラに積んでホームに。ホームから出すのも軽トラでだ。初代さんは、どうやって運用してたんだか。リン・グーもよく使っていたもんだ。運ぶ手段がなければオレは捨てていたわ。


「これは、単独で活用するものじゃないな」


 使う場所も限られてくるし、長時間戦闘もできない。逆に三ヶ月も生きたことがスゲーよ。初代さん、絶対ホームは与えられなかっただろうからな。


 コクピットは単純な造りで、荷物もちょっとは置ける。きっとここで寝起きしてたんだろうな。狭いってことより孤独に負けそうだわ。


 生き残ったゴブリンに止めを刺していき、一旦、コネクトを解除──すると、機動歩兵G兵器の後ろに現れた。


「こういうときに死にそうだな」


 周りに敵がいないから箱マガジンの交換なんてできるが、戦闘中にこんな悠長なことなんてしてらんないよ。


 ついでにハンバーガーをホームから持ってきて腹を満たした。


 ──ピローン!


 快進撃だな。リアル地ならしができそうだ。


 ──八万九千匹突破! 残り約千匹。ゴブリン王がまだ残っているけど、時間の問題でしょう。ちなみに機動歩兵G兵器は山崎さんに渡すといいですよ。あちらのほうが活用できるでしょうからね。


 なるほど。同じセフティーホームなのに、あちらのほうが汎用性がある。機動歩兵G兵器の修理や改造もできたりできる。オレが使うよりいいかもな。魔王軍に敗れてこちらに負担がかかるのも嫌だしよ。


 でも、どうやって山崎さんに届ければいいんだ?


 ──ロンレア伯爵領でピンク髪のエルフと出会いなさい。山崎さんの仲間ですから。


 山崎さんの仲間? が、なんでロンレア伯爵にいるんだよ? そういう事情を説明しろってんだよ!


「ハァー。まあ、そんときに聞けばいっか」


 コネクトをオンにしてコクピットに入った。


「次の人のために中でものを食べるのは控えていたほうがいいな」


 酸素は供給されて脱臭機能もあるが、臭いはつくもの。他人の臭いがついたものに乗るのは嫌だろうからな。オレも初めて乗ったとき、リン・グーらしき臭いが残っていたからな。


 ……これから毎日風呂に入るようミサロから言ってもらおうっと……。


 要塞へ向かうと、ゴブリンの死体で歩き難くなってきた。これなら自ら歩いたほうがいいかもな。ってことでコネクト解除して外に出た。


 AUGを構え、要塞へ入った。


 さすがに巨人は内部に入れないので、死体の片付けを行っており、臭いがとんでもないことになっていた。


 防毒マスクをしてダンを探した。


「ダン! 負傷者は出たか!」


 下半身を返り血にしたダンに呼びかけた。


「皆無事だ!」


「わかった! 片付けを頼む! オレは要塞内に向かうから!」


 まだ王を駆除した報酬が入ってきてない。籠城でもしているのか?


 要塞内もゴブリンの死体で埋め尽くされ、防毒マスクを越えて血の臭いが入ってきた。


 ニャーダ族の気配を辿って進むと、神殿っぽい空間に出た。


 松明が焚かれて辛うじて視界は確保され、その奥でニャーダ族が三メートルくらいあるゴブリン王と戦っていた。


 あの中に入るのは死ににいくようなもの。別のところにいるゴブリンを駆除しに向かった。


 要塞都市、みたいな感じなので、かなり広く複雑な構造になっている。気配がわからなければ不意打ちされていたことだろうよ。


「ロイス! 無事か!?」


 外にいないと思ったら要塞に突入してたんかい。無茶すんな。


「無事だ! 悪いが弾をくれ」


 AUGとはマガジンが違うので、ホームから持ってきて渡した。


「一緒に行動するぞ。数も減ってきて隠れているのが多いからな」


 暗闇に隠れているから見つけるのも大変だろう。死んだ振りをしているのもいるからな。


 殺すのはロイスたちに任せ、オレは指示に徹する。しっかり稼いで欲しいからな。


 しらみ潰しにゴブリンを駆除していると、一千万円が一気に入ってきた。なんとか倒したようだ。


 ニャーダ族が数人で当たってやっと倒せる相手か。人工的に造られた獣化兵より強いとは。こんなのが自然界にいるとか脅威でしかないな。


 ……まあ、この世界にはさらに強いのがいるんだから絶望的だよな……。


「王が倒された。残りは雑魚ばかりだ。だが、油断はするなよ。すべてを駆除するぞ」


 駆除は帰るまでが駆除。最後まで油断するな、だ。

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