第749話 スペースなソルジャー *88000匹突破*

 時刻は七時半。ラダリオンが要塞へ向けてRPG-7をぶっ放した。


 それが合図となり、皆が要塞に向けて走り出した。


「ラダリオン。皆の援護を頼むな」


「任せて」


 RPG-7の発射器をホームに戻し、MINIMIを持ってきて要塞に駆けていった。


「コネクト。要塞の地図を出してくれ」


 この、機動歩兵G兵器、宇宙世紀的なもんかと思ったんだが、ラダリオンに姿見を持ってもらって見たら、なんかパワードスーツ的な感じだった。


 右肩に砲身が。左肩にはミサイルポッドみたいものがあり、身長も二メートルしかない。なんか武骨な形をしているが、結構可動域は広い。ゴブリン駆除をするにはオーバースペックな武装であった。


 まあ、魔力供給しなければ稼働時間は約一時間。手持ちの弾薬が切れたら溜めた魔力から使って補給しなくちゃならない。そうすると稼働時間が減っていくという悪循環。チートはリスクしかないってことを体現したものである。


 だがまあ、機動歩兵G兵器もチートタイムだと思えば……あれ? リスクの反対語ってなんだっけ? まあ、一時間も動けて、要塞一つ制圧できる武装があればメリットである。オレも皆のサポートに回るんだからな。


「イエッサー」


 正面モニターに上空から見た地図が映し出された。


 どこぞの世界から持ってきた機動歩兵G兵器だが、コネクトと言う人工知能搭載であり、なぜかUSBポートがあったりする。デジカメで撮った情報を読み取って、変換構築してくれるのだ。


「チートも使い方次第だな」


 手段の一つと思っておけばチートに溺れることもない。残してくれた駆除員に感謝です。あなたの分まで生きるので成仏──はしているか。よき来世であることを願います。


「さすがに皆の位置は映し出せないか」


「この機動歩兵G兵器は攻撃型なのでセンサー系は弱いのです」


「まあ、皆の気配はわかるから問題ないさ」


 要塞の中央部からここまで一キロちょっと。オレの察知範囲に入っている。激しく動いていても大体の位置は把握できるさ。


 ──ピローン!


 開始して十五分。早いペースで駆除してんだな。


 ──八万七千匹突破だぜ! 残り四千匹だからがんばって~! あ、そこから北西二百メートルくらいのところに脱出路の出口があるから逃げてくるかもよ。


 脱出路? まあ、要塞ならそんなものがあっても不思議じゃないか。補給なしの籠城なんて自殺行為でしかないからな。


 察知範囲から抜けるわけじゃない。そこから逃げられるのも嫌だし、念のためだといってみた。


 そこは石で積まれた小屋で、人が住んでいる様子はない。これは、人間相手ではなく魔物に囲まれたとき用の脱出路みたいだな。


「ゴブリンはいないみたいだな」


 てか、異空間コクピットにいるのになんでゴブリンの気配や請負員の気配がわかったりするんだろうな? リミット様の妙ってことなんだろうか?


 降りて探ろうと思ったが、そこまで複雑なものではないし、降りるのも面倒だと缶コーヒーを飲みながら待つことにした。


 ──ピローン!


 快進撃だな。八万七千匹から二十分も過ぎてないのに。


 ──八万八千匹突破! 残り二千匹。そろそろ知能が高いものは逃げ出すかもね。気をつけてね~!


「ハイハイ。気をつけますよ」


 それから五分くらいして、要塞にいるゴブリンの一部が地下に向かっているのに気がついた。


「まだ四割はいるのに逃げる決断をしたか。気配の強さから言って騎士クラスか?」


 騎士や女王もいろいろ。強さもいろいろ。はっきりと格差があるわけじゃないから気配だけでは区別がつかんのだよな。ただまあ、リン・グーたちのように知能が高くないのはわかる。こいつらは獣だ。


 少し離れ、木々の間に隠れ、ミサイルポッドの照準を小屋に向けた。


 しばらくして一直線に通路を走るゴブリンの気配を察知した。どうやら通路は狭いようだ。


 要塞からあそこの小屋まで約七百メートル。がんばって掘ったものだ。重機がない世界は大変だよ。


 そんな苦労をゴブリンに利用されるとか哀れでしかない。オレがその苦労は無駄じゃなかったと教えてあげるとしよう。


 小屋の中からわらわらと出てくるゴブリンども。一匹だけ鎧や剣を装備しているところを見ると、騎士のようだ。


「気配が弱いな。騎士は騎士でも雑魚騎士か?」


 あんなのでも倒したら一千万円もらえるんだろうか? 女王も倒したら一千万円だったし、ダメ女神はそんな細かい指定してなさそうだ。


 わらわらと出てきて約二百匹。逃げてきたってより後方から襲う部隊かな? まあ、駆除してしまうんだからなんでもいっか。


 と、ゴブ騎士くんがこちらに目を向けた。あら、勘がよろしいこと。


「初めまして。そして、さようなら」


 ポッドからミサイルを全弾発射。なかなか凄まじい爆発を起こした。


 一気に一千と五十万円が入ってきた。やはり騎士なら一千万円のようだ。


「あの爆発で死ぬなら魔王軍の将軍くらいだな」


 アルズライズなら勝てるか勝てないかってレベルだろう。


「初代さん。あんたの無念はオレが引き継ぐよ」


 名前も知らない初代さん。オレの声は届かないだろうが、受け継ぐことをここに宣言させてもらうよ。

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