第742話 ロッテル地区支部
のんびりしてたら十日も過ぎていた。
「そろそろ動くか」
いつの間にか社畜根性が身について休むに休めなかったが、こうして休みすぎると勘が鈍ってくる気がする。休みは長くても五日がちょうどいいかもな。
休みながらも海までいくメンバー表は確認しているので、職員に城壁外の拠点──ロッテル地区支部に集めてもらうことにした。
ゴブリンに襲撃される前はここにロッテル集落があったらしく、わざわざ新しい名前をつけるのも面倒だから、昔からの名前を使うことにしたのだ。
「マスター。巨人は代表者を呼んで、他の者は別のところに集めても構いませんか? ここはもう巨人を集められるほど広くないので」
「それもそうだな。気がつかなくて悪かった。それで進めてくれ」
ルースカルガンがくると降りれなくなる。巨人には悪いが、他で待っててもらうことにしよう。
まずはアシッカに待機していたニャーダ族三十人がやってきた。
「……ニャーダ族、思いの外いるんだな……」
その中にはミヤマランにいた獣人も混ざっているが、それでも二十人くらいはニャーダ族だ。ペンパールにも十五人くらいいるってのに、集落は大丈夫なのか?
「マーダ。こんなに連れてって大丈夫なのか? 集落が手薄になるだろう」
「問題ない。町を造ることが各集落に伝わったようで、イチノセに集まり出している。人が集まると狩りだけで生きるのはできない。こうして出稼ぎしなくちゃならんのさ」
「あー。そこまで考えてなかったわ。なにかニャーダ族に適した仕事を見つけないとダメだな」
請負員はいい。だが、すべてのニャーダ族が請負員になれるわけじゃない。
「そうだ。足の速いヤツに手紙を運んでもらうか。ニャーダ族なら一人でも大抵の魔物と戦えるし、逃げられもするしな」
「手紙? そんなものが仕事になるのか?」
「今の時代なら需要はあると思うぞ。通信ができるようになると需要も少なくなるが、あと二、三百年は大丈夫だろうさ」
二十一世紀になっても郵便はあるんだから、この世界で産業革命が起こるまでは需要はなくならないだろうよ。
「まず、セフティーブレット内でやってみるか。支部が増えて輸送部だけでは追いつかないからな」
パイオニアもそう買えるものじゃない。ニャーダ族が補ってくれるならかなり情報が速く伝わるだろうよ。
「マーダ。お前は最前線に出たいだろうが、ニャーダ族の未来のためにも人を育てたり、戦いが苦手なヤツに内務をやらせたりしろよ。これからの時代だって強いヤツが勝つんじゃない。賢いヤツが生き残るんだ」
「……わかってはいるんだがな。血の気が多いヤツばかりで……」
「血の気の多いヤツはオレが活用してニャーダ族の価値を高めてやる。お前は次世代の価値を高めろ。今のニャーダ族でそれができるのはお前だけなんだから。必要なら見所のある者をセフティーブレットに送り込め。職員として育てるやるから」
まあ、やるのはシエイラなんだけど。あとでお願いしておこうっと。
「わかった。だが、今回はついていくからな」
「嫌だと言っても外すか。海までの間にはゴブリンが大量にいるんだ。ニャーダ族に働いてもらわなければオレが困る。酒が飲めないくらいがんばれよ」
「お前の人をやる気にさせるところが凄いと思うよ」
「オレは弱いからな。強い者に頼らなきゃ生きていけないんだよ」
「……そうだな。強い敵はおれらに任せろ。ニャーダ族はお前の牙となり、お前の敵を根絶やしにしてやるよ」
「フフ。それは頼もしい限りだ。頼りにしてるよ」
ニャーダ族にエルガゴラさんが作ってくれたアイテムバッグを配った。まあ、全員にってわけにはいかなかったが、逆につけると動き難い者がいたので五つ余ってしまった。
ふと、これは巨大化できるのかなと思い、装備を外して巨人になれる指輪をして栄養剤中を飲んだ。
だいたい八割くらいかなと感じながらアイテムバッグを腰につけ、巨人になった。
「……やっぱりかなりのカロリーを持っていかれたな……」
いや、魔力もかなり持っていかれている。これでは一日一回が精々……いや、ラダリオンにもやらせたら一日二日はできるか。
他の誰かにやらせる手もあるが、それだと栄養剤の消費が早くなる。それではいざってときに困る。巨人には悪いが、五つだけで止めておこう。
そうこうしていると、代表の巨人がやってきた。
「ゴルグ、お前もいくのか?」
代表はダンとモニスがくるんだろうと思っていたらゴルグも一緒だった。いつの間にコラウスからやってきたんだ?
「ロミーや村のもんに稼いでこいとケツを叩かれたよ」
ふふ。それはご愁傷様だな。
「まあ、たくさんいるようだからしっかり稼いで嫁を喜ばせてやれ」
代表してゴルグにアイテムバッグを渡した。こいつは最前線に立つような男ではないが、支援タイプの男だ。巨人たちの拠点的立場になってもらうとしよう。
「ダン。お前が巨人組のリーダーだ。しっかり纏めてくれよ」
「お、おれがやるのか!?」
「そうだ。巨人の中でお前だけがセフティーブレットの一員だ。セフティーブレットとして海を目指すのだからお前が仕切るんだ」
「ダン。おれも手伝うからがんばれ」
「わたしも手伝う。がんばれ」
ってことで、巨人組リーダーはダンに決定しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます