第736話 水龍 *81000匹突破*
すぐにブラックリンを引っ張り出してきてコラウスに向かって飛び発った。
最大で飛んでも一時間はかかり、途中でマナックを補給しなくちゃならない。燃費よく飛ぶと二時間近くはかかる。落ちないていどの速度にして海までいくメンバーの確認した。
フムフムと確認していると、プランデットから警告音が鳴った。
ん? と意識を向けると、なんか靄みたいものが前方にあった。なんだ?
──ピローン!
こんなときに鳴んなよ!
──八万一千匹突破でーす! あ、前方のはミジャーだね。群れの一部が風に乗ってやってきたみたい。ざっと三万匹かな? 臭いで仲間を呼ぶから全滅させたほうがいいかな? 今年は兆を超えるかもしれないね~? なにもしなければコラウスは焦土と化すかも。がんばって~!
ゴブリン以外はどうでもいいのかよ? 人類滅亡するぞ!
──そこは人類のがんばり次第。おんぶに抱っこは二度目で失敗しましたからね。このていどの困難は自力でガンバだよ!
散々介入しておいてなに言ってやがる! なにもかもが中途半端なんだよ! ダメならさっさと滅ぶなら滅ぼせよ! 下手に延命されるほうが迷惑だわ!
──命を燃やせ、人類! その先へいくために!
うっせーよ! テメーは一旦立ち止まって反省から始めやがれ! クソ女神が!
「クソが!」
ブラックリンを急上昇させ、ホーム連動型水筒を取り寄せた。
「マナックはまだあるな。こんなことならガソリンを買っておくんだったぜ」
ガソリンは臭うのでガレージにたくさん置かないでとミサロに言われてドラム缶とタンク缶でしか置いてないのだ。
でも、水はたくさん買ってあるので順次取り寄せ、ナイフで刺して空中に放り投げる。
「オレの魔力よ、持ってくれよ」
撒き散らした水を集め、ブラックリンの周りに集めた。
対ミジャー用に考えたもので、水を纏ってミジャーを溺れさせる攻撃技だ。
まあ、コラウスのことはカインゼルさんたちに任せているので隠し技の一つにしようとしていたわけだが、まさかいきなり使う日がくるとは思わなかったよ。
「水が足りんな」
百リットルは出してあるんだが、三万匹には大河の一滴。仕方がない。マルチシールドにラットスタットを三本つけて水に突き刺した。
また魔力が持っていかれるが電流によってミジャーが死んでいくのがわかった。
ショートしたラットスタットを交換しながら三本を使い切ってしまう。
これまでと感じて纏う水を爆散。それでもミジャーは全滅させられない。残り三割ってところだ。
EARを取り寄せ、設定を拡散設定に切り換えた。
殺傷能力は散弾より落ちて暴徒鎮圧用ではあるが、面の攻撃はピカ一。バッタくらいのミジャーなら余裕で殺せる。一発分の魔力で約三十発分くらいに分散できるからな。これなら五十人もいれば二、三割は削られるだろうよ。
約一万二千発を撃ってもまだ殺し切れない。つくづく厄介な虫だよ。
ルンを交換して新しいEARを取り寄せてすべてを撃ち尽くし、充填したものをすべて撃ってなんとか殺すことができた。
「これでなんの儲けにもならないんだから嫌になるぜ」
ただただ損するだけの害虫駆除。古代エルフの道具を見つけてなければ破産しているところだ。
「数百匹は残ったが、ゴブリンに食ってもらうとしよう」
ゴブリンはミジャーを食うそうだし、森の中にはそこそこのゴブリンがうろついている。数百匹ていどならゴブリンどものいいエサになるだろうよ。
それでゴブリンが増えたら増えたで請負員のいい稼ぎになる。と、納得させてコラウスに向かって飛んだ。
なんだかんだと二時間半かかってコラウスに到着。館の前に着陸した。
「ハァー。やっぱオレが一人になるとなんかあるなぁ~」
ダメ女神の呪いか? 誰か呪い返しを知っている方がいたらセフティーブレットまできてください!
もう一度ため息を吐いてからホームに入った。
「タカト」
やっぱり二時間以上経ったからラダリオンと雷牙はホームに入っていた。
「遅れてすまん。雷牙、悪いが館に移ってくれ。カインゼルさんのところにいってミジャーが現れたと伝えてくれ。女神が今年はコラウスが滅ぶほどのミジャーがくると言っていたとな」
「な、なくなっちゃうの?」
「なくならないよ。まあ、被害は出るだろうが、そのための道造りだ。食料がないのならあるところから運んでくればいいだけさ」
ミヤマランとの関係もよくなり、問題もなくなった。道もよくなれば麦を運ぶのも楽になる。今年の冬さえ乗り切ればコラウスは元に戻るさ。
「そのためには館に駆除員が一人はいないとならないんだ。雷牙、頼まれてくれるか?」
「ゴブリンを駆除できないのは残念だけど、うちを守るためならがんばるよ!」
「ああ、頼りにしているよ。オレたちが帰ってこられる故郷と家を守ってくれ」
雷牙頭をわしわしと撫でると、ラダリオンも混ざって頭をわしわし始めた。
結構撫でられるのが好きな雷牙。周りから愛情を受けなかった分、オレたちが雷牙に与えてやろう。オレたちは家族なんだからな。
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