第735話 譲渡

「ミサロ。悪いが、お前が窓口になってくれ。オレではダメだ。言葉が強くなるんでな」


 仲間に対してってより下の相手って見てしまう。これでは不和が生まれてしまう。女王の相手はミサロにお願いするとしよう。


「わかったわ。でも、夜には帰るわよ」


「ああ。館には雷牙を帰すよ」


 誰か館にいなければいざってときに遅れを取ってしまう。雷牙には悪いが、館に戻ってもらうとしよう。


「エレルダスさん。お願いします」


「任せてください。情報は送りますので」


 頼りになる人だよ。


 部屋から出て外に向かい、ブラックリンに跨がった。


「アリサ。マンダリン隊はオレのところにきてくれ」


 ペンパールの周辺を飛び回るアリサたちを呼び寄せた。


「まずは榴弾とマナックを補給しろ。終われば休憩だ。体力が回復した者は、ルースカルガンで土魔法を使えるヤツを連れてきて。ここをマンダリン隊の訓練基地にする」


 アシッカだと人目も多くなり、ちょっかいをかけてくる者も多くなるだろう。その前に場所を移したかったのだ。


 本当はニャーダ族の集落か山脈を予定していたが、ペンパールを海まで移動させ、海上で訓練させれば人目から隠せるはずだ。


 もちろん、アシッカは中間地点として発展させるので基地は造るが、それはマンダリンを操縦できる者を育ててからだ。


「アリサ。マイセンズ系のエルフから司令官を選べ。ペンパールを任せる。名前も変えて構わないから」


「ここをですか? この亀、操れるのですか?」


 あ、説明してなかったと、女王のことを説明した。


「ハイゴブリンですか。そんなものがいたんですね」


「長老たちはなにも知っていない感じか?」


 マサキさんは、女王には遭遇しなかったのか?


「知らないと思います。わたしは聞いたことありませんし」


 マンダリン隊に視線を飛ばすが、誰も知らないようだった。


「オレが不運なだけか」


 いや、駆除員は誰もが不運か。五年以内に死ぬような出来事に遭遇してんだからよ。オレはまだ幸運のほうだな。って思わなきゃやってられんわ。


「とにかく、ここはマイセンズ系のエルフに任せる。女王たち、いや、ライプスたちは館に連れていく」


 メジャーが出るとゴブリンがやってくるというならコラウスに置いていたほうがいいだろう。館ならミサロもいるしな。


「わたしたちに操れますか、こんな巨体を……」


「操るのはそう難しくない。と言うか、そう細かい動きはさせられない。炎を吐いたときも遅かっただろう。方向を変えるだけで十分くらいはかかる。逆にイライラしないよう気をつけろよ」


 元々、乗り物ではないところに城を造ったそうだ。なんでもエンディアル大陸にはハイゴブリンが結構いるそうで、土魔法が使えるのもいるんだとよ。


「わかりました。では、休憩したら土魔法を使える者を集めます」


「アシッカにバッテリーがあるからルースカルガンのヤツに言って運んでもらえ。あれがあると結構便利になるからな」


 マイセンズ系のエルフは魔法が得意だが、ライフライン系の魔法は使えない。バッテリーとプランデットがあればお湯を出せたり排泄物を処理できたりするのだ。まあ、食料は出せないので運び込むしかないけどな。


「金も渡しておく。これで必要なものを買うといい」 


 銀貨を入れたコンテナボックスを取り寄せてアリサに渡した。


「じゃあ、あとは任せる。なにか必要なものがあればミサロに言ってくれ」


 ブラックリンを起動させて空に舞った。


 上空を旋回しながら雷牙の気配を探す。感じる気配が多くて見分けるのが大変だよ。ゴブリンの気配も多いから余計にわかり難いよ。


「いた。休憩中か?」


「タカト!」


 プランデットからラダリオンの声が。全力疾走できたのか?


「お疲れさん。ホームに入ってくれ。オレも入るから」


 合流するよりホームに入ったほうが早い。速度を落としてホームに入った。


 タイミング的にラダリオンが先に入っており、ぶつからないよう急停止した。慣性まで殺せないからホームもいまいちなんだよな……。


「まずは汗を流してこい。残りは請負員にくれてやれ」


 駆除員ばかり稼ぐわけにもいかない。均等に報酬を分けてやらないと組織として継続できないからな。


「わかった」


 その場で装備を外し、下着姿のまま玄関に設置したシャワー室に入った。


「……お前は相変わらずだよ……」


 装備を纏めてやり、チェストリグから道具を出し、代えのチェストリグに入れてやった。


 いつも烏の行水タイムで出てくるラダリオン。ちゃんと洗えよな。


「悪いが、雷牙と合流してホームに入れてくれ。ビシャにはニャーダ族を纏めて掃討戦をやらせてくれ。ラダリオンはミヤマランの騎士団と合流して護衛に当たってくれ」


 タイミングよくミリエルが入ってきてくれた。


「ミリエル。悪いが、ダストシュートしてくれ。アシッカからコラウスに戻るから」


「わかりました。あと、海を目指すメンバーが決まったのでプランデットに入れておきますので確認してくださいね」


「了解。コラウスに戻るときに確認するよ」


 自動操縦万歳だ。


 缶コーヒーを飲んで一服したらミリエルにダストシュートしてもらった。

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