第733話 ハイ *80000匹突破*
──ピローン!
もうか。外は大変そうだな。
──八万匹突破だぜい! さすが孝人さん。ゴブリンを仲間にしたのはあなたが初でーす! ちなみに人型に近いゴブリンをハイゴブリンと呼称します。倒してもいいし、駆除しても構いませんよ。わたしが駆除して欲しいのはレット種。こいつが結構ヤバいんですよね~。なので、レット種根絶やし、よろしく!
だからどうヤバいかを言えってんだよ! 肝心なこと言わねーんだからよ。
「クソ! くたばれ、ダメ女神が」
できることならこの手で葬ってやりたいが、オレの手は短い。この壁にしか届かないのが悔しいよ。
「どうかしたの?」
「女神からのアナウンスだ。女神はあんたらに興味ないってさ。殺してもいいし、殺さなくてもいい。オレの好きにしろだとさ」
神に見捨てられた種と嘆く必要もない。神からしたらオレたちなんて勝手に動く駒みたいなものであり、一万年続けばいいだけの存在。愛なんて最初からない。故に見捨てられたからって悲しむ必要はないんだよ。
「あなたは女神が嫌いなの?」
「嫌いどころか殴ってやりたい存在だよ」
あのダメ女神を殴れるんなら悪魔にだって魂を売って……はやらんな。今度は悪魔に使われるだけだし……。
「神を恨みたいなら好きにしていいし、守護天使とやらを崇めるのも構わない。セフティーブレットは宗教の自由を認める。だが、勧誘はするなよ。他のヤツらにも宗教の自由を認めてるんだから」
まあ、はっきりと言ってないし、なんかダメ女神を崇めるような動きはあるが、それは個人の自由。好きにしろ、だ。
城の謁見の間、的なところのゴブリンマナイーターを刺して回り、ホームに入り、一輪車を買ってきた。
「騎士二人。死体を外に運べ。あとで燃やすから」
ミヤマランの騎士たちにも死体片付けをお願いするとしよう。バデット化されても困るだろうからな。
「──タカト!」
死体を片付けていると、ミシニーがやってきた。
「お疲れさん」
「どういう状況だ? そいつらはゴブリンだろう?」
戸惑うミシニーにダメ女神やリン・グーから聞いたことを説明した。
「……なるほど。原初の命か。それは恐らく創世記のことだろうな」
「創世記?」
「誰が伝えたかわからないが、いろんな宗教の元になっている伝説だ。要約するとこの世界の命は原初の命から分かれたとされていて、神により新しい時代を任される命が世界の主とされているんだ」
「……つまり、今の時代は人間だから他の種を蔑ろにするってことか……」
獣人やドワーフは特にそうだな。
「そうだな。エルフや巨人を受け入れているこの国が特別であり、コラウスが異常なのさ。まあ、タカトを知ると駆除員が他種族に寛容だったからだろうな」
「オレたちの世界はエルフも巨人もいなかったからな。他種族に夢やロマンを持てるんだろうよ」
オレは別に夢もロマンも感じなかったが、嫌悪することはなかったし、下に見えることもなかった。まあ、レッドなドラゴンを見たあとでは巨人もエルフも可愛いものだ。ラダリオンを見たとき驚いたことは突っ込まないでね。
「もし、こいつらを許せないと言うならセフティーブレットを抜けてもらっても構わないからな」
ミシニーが抜けるのは痛手だが、オレは組織を優先させる。この世界を埋め尽くすようにいるゴブリンを駆除するには組織力が必要なんだからな。
「わたしは別にゴブリンに恨みはない。ただの獲物でしかない。タカトが認めたらわたしも認める。敵だと言うなら狩るだけだ」
リン・グーを威圧するミシニー。裏切ったら許さないって意思表示しているんだろうよ。まったく、情に厚いヤツだよ……。
「しかしまあ、ハイゴブリンか。魔力ではなく別の力を持った種族だったとはな」
「こいつらに魔力はないのか?」
魔石、あっただろう。
「根源は同じだが、使える力が異なるんだ。ミサロもそうだろう。眠りが短かったり理解力が早かったりと。こいつらも同じだ。魔法ではない力を持つんだよ」
「……やたら詳しいな……」
それ、見ただけでわかるものなのか?
「わたしもハイだからさ」
「そのハイってどういう意味なんだ?」
オレはてっきりハイクラスのハイだと思ってたよ。
「いつから使われているはわからないが、超越って意味で伝わっているよ」
「レットってのも伝わっているか?」
「失敗とか失格だな」
思わず天を仰いでしまった。あまりにも命が軽すぎることに。
「だからオレは神が嫌いなんだ」
これでは命に意味なんてないじゃないか。オレたちは神の道具として生み出されたものってことじゃねーかよ。
「まあ、いい。神の思惑などクソ食らえだ。不完全な命をナメんじゃねー」
失敗作は駆除してやる。だが、オレはオレのために生きてやる。必要なら敵であるゴブリンだって味方にしてやる。すべてダメ女神の思い通りにしてやるものか。思いもしない未来を見せてやるわ!
──────────────────────
──そう。だから命はおもしろい。わたしに可能性を見せてくれ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます