第724話 ペンパール軍 *76000匹突破*

 一号艇に処理肉をばら撒いてもらっていたのので狂乱化が止まることを知らない。次から次へと集まってくるよ。


「これは大丈夫なのか?」


 EARの魔力が切れたのだろう、ルジューヌさんが焦ったように訊いてきた。


「大丈夫ですよ。ざっと二千匹くらいでしょうし。この倍になったらさすがに危険ですがね」


 砦に籠ってのなぶり殺しなら五千匹でも余裕だが、今は盾で囲んでいるだけ。さすがにそれでは四千匹が精一杯だろうよ。


「これ以上集まらないよう、ラダリオンとメビが暴れています。銀印の冒険者も離れたところで駆除しています。これ以上、集まることはありません」


 ラダリオンはホームから弾薬を補給できるし、メビには自動供給できるアイテムバッグとX95を渡してある。千発は入れているから一時間くらいは無双できるだろうよ。


 ──ピローン!


 もうか。密集しているとすぐだな。


 ──七万六千匹突破! 順調でよし。このままペンパールの女王率いる軍勢を駆除しちゃってちょうだいな!


 はぁ? ペンパールの女王? 軍勢? どーゆーことだよ! 初耳なことばかりで頭が追いつかないんですけど!!


 ──大丈夫大丈夫。孝人さんなならできるって! インパクトはあるけど、攻略法はたくさんあるから。手持ちでなんとかしてください。


「アホか! もっと詳しく説明しやがれ! 情報がねーと対処法なんて思いつかねーだろうがよ!」


 ふざけんな! 確実にヤベー状況じゃねーか!


「ヤカルスクさん! 東方向に飛んでください! そちらを探ってください!」


 いつでも逃げられるように二号艇には近くで待機してもらっているのだ。


「なにを探れと言うんだ?」


 ルースカルガンのマナ・セーラから魔力供給されるのですんなり返ってきた。


「女神からのアナウンスでゴブリンの女王が引き連れた軍勢がいるようです。方向、距離、数はわかりません。ですが、これまで見つからなかったことからして東にいると思います」


 東は海だ。そちらの方向はグロゴールが暴れ回って人の行き来がなくなっている。他の方向にいるなら目撃情報は必ず上がってくるはず。ないってことは東にいるってことだ。


「ラダリオン。そこから西にいるゴブリンを集中的に駆除しろ。メビは北方向にいるマーダのところに走れ。女王の軍勢がいる。数不明。驚異不明。あと七千匹だと伝えろ。アポートポーチから弾薬を出せ」


「わかった」


「了ー解」


 イチゴを取り寄せ、メビについていくよう命令した。


「なにがあった?」


 少し顔色を変えた公爵に、ダメ女神からのアナウンスを説明した。


「ゴブリンの女王か。そう言えば、お伽噺であったな。ゴブリンの女王が世界を滅ぼしたと」


 まあ、女王を殺すために火山を噴火させた駆除員もいる。そんなお伽噺が伝わってたいても不思議ではないだろうよ。てか、この世界、ダメ女神がいるせいで滅びるに滅びれないんじゃないか?


「まあ、そう急を要することはありませんのでゴブリン駆除は続けます」


「よいのか?」


「女神も急を要する感じではありませんでしたし、オレの察知範囲にも入っていません。が、安全を考えて夕方前には終わるとしましょう」


 急を要することならすぐ目の前まで迫っているか急を要しているか。そして、肝心なことを言ってないときは先のことのだ、と思いたいです。


「少々危険ですが、ラダリオンが間引きしてくれているので撃って出るとしましょうか。ルジューヌさん。EARから剣で殲滅してください。そのほうが騎士様たちには戦いやすいでしょう。公爵様はオレと撃ち漏らしを仕留めていきましょう」


「うむ。わかった」


「ルジューヌさん、公爵様はオレが護衛します。構わず暴れてください。ただ、遠くまでいかないでください。退くときは笛を鳴らします。すぐオレのところに集まってください」


「わかった。皆の者、やるぞ! ゴブリンに後れをとるようなヤツは捨てていくからな!」


 ルジューヌさんのユーモアある激励に騎士たちはやる気満々で応えた。活躍の場があって嬉しいんだろうか?


「進めぇぇぇぇっ!」


 と、ルジューヌさんたちが駆け下りていった。転ばないようにね~。


「公爵様。息のあるゴブリンを指示します。頭を狙って止めを刺していってください。オレはゴブリンの気配ならわかるので不意打ちは気にしないでください。死んだ振りをしているのはオレが撃ち殺しますんで」


「ゴブリン殺しとはよく言ったものだな」


「あまり嬉しくないあだ名ですけどね」


 まっ、ゴブリンを殺す者が増えたし、そのあだ名もなくなるだろうよ。


「そうだ。これを使ってください。ヒャッカスの暗殺者がまたくるかもしれませんからね。この拳銃を胸に忍ばせててください。この世界の者は知らないでしょうから先制できるでしょう」


 グロック19を取り寄せて公爵に渡し、使い方を教えた。


「うむ。いいな、これ。衝撃があるほうが戦っている実感が持てる」


 この人もヤカルスクさんタイプか? 


「では、まずはそいつから止めを刺していきますか」


 ポイントレーザーでまだ死んでないゴブリンを差した。

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