第725話 攻略法
「──タカト。ペンパールと思わしき軍勢を発見。そこから約五十キロの場所にいる。ただ、予想外のことがある」
予想外? この世界に連れてこられてから予想外のことばかりだよ!
「わかりました。安全を考えて撤退しましょう。周辺のゴブリンを薙ぎ払ってください」
いつものように計画通りとはいかない。が、突き通すほど計画には固執はしてない。退けるときは迷わず退かせてもらいます。
笛を吹いて騎士たちを山頂へ向かわせた。
「状況が変わりました。これでゴブリン駆除を終わります。迎えがくるまで息を整えていてください」
二リットルのペットボトルやタオルを取り寄せ、騎士たちに渡して喉を潤わせ、汗を拭わせた。
「なにがあったか城で話してくれ」
「わかりました。ミヤマランにも関係あることですからね」
恐らく、こちらに向かっているのだろう。なら、ミヤマランにくるってことだ。ペンパールの女王の軍勢がどんなものか知らないが、絶対、碌でもないものだ。話を聞く前からわかっているさ。
「タカト。三十秒後にタッチダウンする」
「わかりました」
周辺のゴブリンは粗方片付けたので襲われる心配はない。ゆっくり降下してきてゆっくり乗り込んだ。
「ラダリオン。悪いがゴブリンを片付けてくれ。バデット化されたらたまったもんじゃないからな」
「わかった。残りはどうする?」
「後片付けを優先してくれ。襲ってきたら反撃しても構わないよ」
マナイーターを取り寄せてラダリオンに渡した。
「十七時になったら上がっていいからな。今日はたくさん稼いだからすき焼きにしてもらえ」
「うん! ミサロに話してくる!」
ホームに入ったので、オレはルースカルガン二号艇に乗り込んだ。
そのまま城までひとっ飛び。公爵や騎士たちにまずは汚れた体を綺麗にしてもらい、オレはヤカルスクさんに映像を見ながら説明を受けた。
「……どこまでもふざけた世界だよ……」
この世界、ほんとどうなってんだ? 魔王や竜がいるならまだしも巨大亀の背に城がついているとかどんな漫画だよ! いや、どんなことがあれば亀が百メートルも育つんだよ? どんな奇跡が起これば甲羅の上に城が建つんだよ? すべてが意味不明すぎるわ!
「あれって古代エルフの技術だったりします?」
「生物を巨大化する技術はあったが、さすがにあんな大きさになる技術はなかったよ。どうすればあそこまで育つんだ? デタラメすぎるだろう」
よかった。古代エルフはそこまで飛び抜けていなかったようだ。
「女神が世界を改変してなければ別の存在が介入しているんでしょうね」
勇者でも勝てない存在がいる。その間にこの世界は変わったんだろうよ。想像でしかないがよ。
「本当に今あるものでなんとかできんのかよ?」
バンカーバスターっていくらするんだろう? 今の全財産、一千四百万円しかないんだけど。
「ヤカルスクさん。あれを倒せる武器ってありますか?」
「五千年前ならあったな。都市破壊弾ってのが」
核兵器かなんかか? あったってことはもうないってことか。
さすがにあのサイズだとRPG-7を巨大化させても効果は薄いだろう。それこそバンカーバスターみたいなものじゃないと倒すことは不可能だろうよ。
「本当に倒せるのか?」
対処法はいくらでもあるって言うが、すぐに考えはつかんぞ。
とりあえず、公爵に状況と現状を教えるためにホワイトボードをホームから運び出し、巨大亀とその進行ルートを簡易的に描いた。
どうしたらいいんだ? と悩んでいたら公爵たちが身綺麗になって部屋に入ってきた。あと、エレルダスさんもやってきた。
「ヤカルスクから話を聞きました。大変なことが起こったようですね」
「女神は大したことなさそうに言っていましたがね。手持ちでなんとかなるそうです」
「なるので?」
「考え中です」
すぐに対処できる頭を持っていたらどんなにいいか。オレはじっくり考えて攻略法を見つけるタイプなんだよ。臨機応変にも限界があんだよ。
「タカト。説明してくれ」
そうだな。まずは説明してたからだ。
ペンパールの女王が率いる軍勢が巨大な亀の背に城を築き、こちらに向かっていることを説明した。
「荒唐無稽な話だな」
「まったくです。ほんと、この世界は荒唐無稽なことばかりで嫌になりますよ」
それに向かい合うこちらの身にもなって欲しいものだ。こっちは元の世界の常識に縛られてんだ、竜だの巨大亀など相手にすることなんて考えて生きてねーんだよ。
「やるつもりなのか?」
「やるやらないで言えばやります。ミヤマランがなくなると困りますからね」
やりたくないと逃げられたらどんなにいいか。逃れない以上、頭を働かせるしかない。攻略法があるって言うなら見つけるしかない。勝つしかないのだ。
「……攻略。攻略。攻略か……」
なんでダメ女神は攻略法って言ったんだ? なぜ倒すとか討伐とか言わなかった? 巨大亀をそこまで重要視してないってことか?
「そうか。だから攻略法なのか。もっとわかるように言いやがれってんだ」
頭が沸騰するくらい考えたじゃねーか。血管切れそうだから回復薬小を飲んでおこうっと。
「明日一日準備に使って、巨大亀に突入します」
皆へ振り返り、そう告げた。
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