第722話 ミヤマラン支部

 朝、エレルダスさんは城を冒険したいと言うので、オレたちはホームに入らせてもらった。


 じゃあ、明日までゆっくり──なんてできるわけもない。ミヤマランでやることがいっぱいあるんだよ。


 朝起きたらミサロにダストシュートしてもらい、ミヤマランにいける職員五人を乗せて出発した。


 四十分もしないで麓の広場に到着。待機しててもらったメビにパイオニア四号を運転してもらい、五号と連ねて発車した。


 車を使えば三十分くらいの道のり。てか、ミヤマランの道って何気にいいよな。轍もできないほど整地されている。あ、山脈の道もよかったな。なんか魔法がかけられているのか?


 もう見慣れた門番さん。公爵から通達されているようで、金を払う必要もなく通された。


 ゴブリンの屋敷──いや、セフティーブレットミヤマラン支部に到着。侵入された形跡がないので罠を解くことから始めた。


「よし。まずは看板をかけるか」


 ここは富裕層が住む住宅地だが、大通りに面したところ。セフティーブレットの看板を壁に設置し、ホームから荷物を運び出した。


 引っ越しの挨拶は、支部長たるライグに任せる。


 ライグは職員として雇われ、まだ二十三歳と若いが、アシッカやミントンカ男爵領(ハンバーガー丘)でゴブリン駆除をしている。そこそこ実戦経験をしているので肝も座ってきている。支部を任せても大丈夫だ、とシエイラが言ってました。


「ライグは冒険者ギルドに挨拶して、掃除要員を雇ってきてくれ。オレの名を出して構わないから。メビ。ライグを乗せてってくれ」


 なんだかんだでミヤマランのことに詳しくなっているメビ。おおよその位置はわかっているはずだ。


「了解。なにか欲しいものがあるなら買ってくるよ」


「いや、コラウスの商人を見たら連れてきてくれ。見なかったら構わないよ」


 二人を見送り、支部の準備に取りかかった。


「事務所が必要になるな。大工、雇うか?」


 請負員が少ないから今は玄関ロビーを事務所にすればいいだろうが、コラウスの商人もここを利用させてやろう。貸し賃はお手伝いで払ってもらいます。


 支部の部屋数は八部屋はあり、今は職員に使ってもらい、人が増えてきたら通ってもらうとしよう。大きな都市とは言え、五キロも十キロも通勤するわけじゃない。精々、歩いても二キロくらいだろうよ。


「庭、結構広いな。職員の休憩室や仮眠室の建物を造るか」


 一軒家建てられるだけのスペースはある。ん? 馬小屋がある。


「全然気がつかなかったな」


 中を覗くと、物置小屋として使われている感じだった。


「あのゴブリン、歩いて城に通っていたのか?」


 んな感じではなかった。ハイヤー的なものを呼んでいたのかな?


 なにか金目の物があるかな? と探るが、これと言って金目の物はなかった。でもまあ、生活に使えそうなものばかり。壊れてもいないようだし、リヤカーに積んで館に持っていくか。


「金があるだけにものはよさそうだな」


 裏で使うものばかりなんだろうが、質がいいのはオレでもわかる。中古でも充分使えそうだ。


 リヤカーに使えるものを積んでいると、ライグが帰ってきた。


「早かったな」


 まだ出かけて一時間も経っていないだろう。忘れ物か?


「はい。ギルドマスターは城に呼ばれたみたいで留守でした。護衛の冒険者もすぐ雇えました」


 タイミングがよかったんだか悪かったんだか。まあ、挨拶はあとでもいいだろう。


「んじゃ、昼にでもするか。あ、料理人も雇わないとダメか」


「そうですね。まあ、それは後々で構わないでしょう。これだけ大きな都市なら食うところはたくさんあるでしょうからね」


「それもそうだな。ゴブリンの報酬はまだ残っているか?」


「はい。大体五十万くらいは残っていますね」


「じゃあ、二人くらいゴブリン駆除に連れていくか。まだ八千匹くらいいるみたいだからな」


 休んでいるのか膠着しているのかわからんが、昨日からアナウンスは入っていない。なら、二人くらい連れていっても問題なかろうて。


「そうですね。それならルイとガルダを連れていってください。二人はまだ戦いを経験したことないですからね。マスターと一緒なら安全に稼げるでしょうよ」


 ルイとガルダはまだ十八歳であり、街での仕事をしていたそうだ。剣も持ったことないらしいが、グロックとスコーピオンの訓練は二日くらいやったとか。それだけやれば安全なところから撃てば問題なかろよ。


「そうだな。二人に伝えておいてくれ。夕方には麓の広場に連れていくよ」


 麓の広場から飛び立って、城の中庭に降りるようにしてある。あと、ニャーダ族も参加したいって言うので二人には一号艇で向かってもらい、オレは二号艇で公爵を連れていくとしよう。


「わかりました」


 まずは昼だと皆を集め、ミサロが作ってくれた料理を運び出した。


「遠慮なく食ってくれ。午後からしっかり働いてもらいたいからな」


 ライグが連れてきた冒険者は八人。まだ若い連中なのでたくさん食うだろうし、力仕事もやってもらいたい。しっかり食え、だ。


 オレも混ざって昼飯をいただいた。

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