第692話 輸送

 ルースカルガンが着陸。格納ハッチが開き、警備兵がぞろぞろと降りてきた。


「どうしたんです?」


 警備兵のあとに出てきたエレルダスさんに尋ねた。


「生体情報がわかるようにエウロスをロンガルに打ち込みます」


 エウロスって小さな人工生命体よね? 雑草を生やさないためのものではないの?


「エウロスは薬として働いたりドローンのような役割もできるのですよ」


 理解するのに時間がかかりそうなので、とりあえずそういうものなんだと納得しておきましょう。


 ……あとでタカトさんに尋ねようっと。マイセンズのことを今の時代に落として説明してくれるからね……。


 警備兵が眠らせたロンガルに向かい、なにかを打ち込んで回った。


「これで地上に出てもロンガルの位置がわかり、捕まえたいときは眠らせることもできますよ」


 ほんと、とんでもない技術よね。これだけ凄い技術があっても滅ぶんだから知的生命体ってなんなのかしらね?


「外に運び出すのは四匹になります」


「わかりました。それで、どう積むので?」


「少し待っててください」


 ホームに入り、巨人に作ってもらった橇を運んできた。


「この上にロンガルを載せてルースカルガンに押します」


 巨人になれる指輪を使い巨人となる。


 何度か巨人になれる指輪を使っているので、巨人になっても違和感はない。力も巨人並みになっているのでパイオニアの倍はありそうなカルガンを軽々と橇に載せられた。


「あとは巨人の村に降ろしてもらってください」


 巨人化を解き、エレルダスさんにお願いした。


 ロンガルを運ぶことは伝えてある。言えば降ろしてくれるでしょうよ。


「ビシャ、ライガ。悪いけど、ルースカルガンに乗って巨人の村に案内して」


 わたしは大まかな位置しか知らないけど、ビシャは知っているはずだ。


「わかった。任せて」


「ええ。ライガは村や村の周辺を探ってちょうだい。細かく写真に収めてね」


「うん、わかった」


 ロンガルを載せてルースカルガンが飛び立った。


「……一匹ずつとなると今日一日はかかっちゃうわね……」


 まあ、アシッカまでなら四十分もかからない。降ろしたりやなんやらで一時間半くらいで戻ってこれるかしら?


 時間を持て余すな~と思っていたらプランデットから警告音が鳴った。


「ロースラン?」


 の反応だった。


「まあ、ロンガルはすべて眠っており、わたししかいないとなれば好機としか思わないか」


 これで襲わない魔物がいたら見てみたいものだわ。


「少し、銃の練習をしましょうか」


 ロースランは魔力抵抗が高い。並みの魔法では効果ない。まあ、わたしの魔法なら眠らすことも可能でしょうが、魔法以外の戦い方を練習しておくのもいいでしょう。他にも魔力抵抗の高い魔物がいるかもしれないんだしね。


 ホームからイチゴを取り寄せた。


 わたしの護衛として連れてきたイチゴだけど、常に一緒に行動するってちょっと面倒なのよね。


 それならホームに待機させて、必要なら取り寄せるが一番楽なのよね。イチゴは物扱いだから。


「イチゴ。わたしが危機になるまで待機よ」


「ラー」


 次に魔法コーティングされてないX95を取り寄せた。もちろん、アイテムバッグとは連動してないのでマガジン交換は必至。まあ、マガジンは取り寄せたら問題ないわ。


「イチゴ。空マガジンの回収は任せるわ」


「ラー」


 弾を装填。現れたロースランに向けて引き金を引いた。


 ロースランは魔力抵抗は高いし、剣や槍を通し難いと言われているけど、5.56㎜弾なら問題なく通じる。まあ、マガジン一本で殺すことはできないけど、瀕死にはできる。行動不能にしてからゆっくり殺してやればいいわ。


 五匹しかいないので、フルオートにせず一発一発確実に当てていく。


「やはり若い個体のようね」


 五発も当てると怯み出し、自分たちで作ったのか、骨のこん棒を振り回して威嚇していた。


「ミリエル。二時方向から新たな群れがきます」


 まだいたの? 地上に出たのが戻ってきたのかしら? さすがに一人ではキツいわね。


 さて、どうしようかしら? なんて悠長に考えていたらライカやロイズたちがやってきた。


「ミリエル様! ご無事ですか!?」


「大丈夫よ。二時方向から十二匹くるわ! 殲滅させなさい!」


 できるところまでやりたかったけど、それを許してくれるライカやロイズたちではない。諦めて任せるとしましょう。


「「ミリ様!」」


「わたしは大丈夫よ。弾を持ってくるからここをお願い」


 ホームに入り、P90と416のマガジンを持ってくる。


 若い個体だけに六人もの攻撃に勝てるわけもなし。ほぼなぶり殺しであった。状況を判断できるリーダーがいない群れって哀れよね……。


「ロイズ。周辺の警戒。ライカは止めを刺していってちょうだい」


 わたしはライカが止めを刺したロースランの首を切って血を抜いていった。蜂の巣にしちゃったけど、ロースランは若いほうが美味しいとのこと。巨人たちの食料としましょうか。


「ライガを残すんだったわね」


 わたし、解体とかできない。精々、血を抜くくらい。でもその前に食事をしてこないとダメね。


「巨人になれる指輪、いいようでなんとも面倒なサポートアイテムよね」


 使えないとなれば捨てればいいだけなんだけど、これが微妙に役に立ったりする。ほんと、嫌な女神だわ……。

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