第691話 捕獲
岸に着くと、エレルダスさんがいた。
「エレルダスさん、きてたんですか」
プレシブスから降りて尋ねた。
「ええ。必要なものは大体手に入れましたので。こちらの様子を見にきました。タカトさんたちは凄いところを下りてきたのですね」
確かに言われてみればよく下りたなと思うわ。
地下になにがあるかわからず、ゴブリンが出たり地下湖があったりと冒険者より冒険をしていたとんじゃないかしら?
「マイセンズのエルフも凄いですよ。見違えるほど整備されていました」
「それは同意見です。機械を使わず自らの魔法でやってしまうのですから」
エレルダスさんたちは魔力はあるけど、魔法を使える者はもういないとか。すべてを機械に任せてしまったそうよ。故にプランデットや発電機がないと人間と変わらないそうだ。
「しかし、プレシブスが残っているとは思いませんでした。使わないだろうと放置したんですが」
エレルダスさんが生きた時代は地下水路が広がっていたそうよ。都市間戦争やアルセラ反乱が起こる前はマイセンズにも通じていたみたい。
「ミリエル様。操縦を教えてください」
そうだった。さっさとプレシブスを教えてロンガルを捕まえにいかないと。
「ええ。もう一艘出したので取りにいきましょう」
覚えたい者が結構いたので、とりあえず二人を乗せて向こう岸に向かった。
ゴムボートやウルトラマリンを使っていただけあり、プレシブスを覚えるのは早く、感覚も鍛えられていたようで、三十分もしないで操縦できるようになった。
「あとは、練習してください。時間ができたらもう港にも運び出しますので」
いつになるかはわからないけどね。
「ビシャ、ライガ。ロンガルを捕まえるわよ。エレルダスさん。ルースカルガンをお願いします」
「ええ。わかりました」
ホームからパイオニア四号を出してきてグロゴールを倒したところにいるロンガルを捕まえるとする──が、雑草が生えてないのですぐに見つかって逃げられてしまった。
「意外と警戒心が高いのね」
「いろんなものから狙われて生きているからね、あのくらいじゃないとダメなんだよ」
「よく捕まえられたわね、あなたたち?」
銃を使うならまだしも二人は剣とブーメランだ。よく近づけたものよね。
「あいつら警戒心は高いけど、そんなに速く走れないからね、追い込んでやれば難しくないよ」
それは獣人だからできること。わたしじゃまず近づけないわ……。
「仕方がないわね。ブラックリンを使いましょう」
パイオニアではダメだ。全然近づけないわ。
二人はパイオニアを運転できないからホームに戻し、ブラックリンを出してくる。
「二人は周囲を警戒して。ロースランが狙ってくるかもしれないからね」
と言うか、ロースランはどうやってロンガルを狩っているのかしらね? まあ、それはどうでもいいや。現れたら狩ればいいんだしね。
「あと、ロンガルを眠らせるまで近づいたらダメよ。わたしの魔法は広範囲に広がっちゃうからね」
まだ指向性を持たせられないのよね。ましてやブラックリンを操縦しながらとなると永遠に眠らせてしまうかもしれないわ。
「わかった。気をつけてね」
「ええ。ありがとう」
ブラックリンに跨がり、空に飛び立った。
ロンガルは木々の間に隠れており、子供を守るように固まっている。
周囲を警戒しているけど、空は警戒していない。好都合だわ。
上昇して真上から降下。地上まで百メートルくらいのところで眠りの魔法を全方位に放った。
ちなみに自分で放った眠りの魔法は自身には効きません。なぜかは知りません。だから、そういうものだと思っています。
青い魔石を使い本気を出せば百五十メートルまでいけるけど、永遠に眠らせるわけにはいかない。百メートルギリギリを狙うほうがいいのだ。一旦眠ってしまえばさらに眠らせることはできないからね。
「よし! 眠った!」
わたしの眠りの魔法は本当にチート。もしかして、わたしのご先祖様に駆除員でもいたのかしらね? 五千年も前から異世界人を送り込んでいるみたいだしね。
ブラックリンを降ろし、眠ったロンガルたちを足で蹴ってみる。びくともしないけど、ちゃんと生きているのはなぜかわかった。
周囲に漂う眠りの魔法が消えたのを確認したらグロック19を抜き、空(?)に向かって撃った。二人にもう大丈夫だと教えるために。
しばらくして二人がやってきた。
「ルースカルガンに積み込むのはどれがいいかしら?」
わたしにはどれが雄雌か、何歳かもわからない。狩りをして生きてきた二人ならわたしよりわかるでしょうよ。
「番で四匹だよね?」
「ええ。若いほうがいいわ」
まずは地上でも生きられるか試すための四匹。と言うか、どれが番とかわかるのかしら?
「これとこれかな?」
「こっちのほうがいいんじゃない?」
どうやら二人にはわかるようだ。二十分くらいかけて四匹を選んだ。なにが違うの?
まあ、二人が選んだなら間違いないでしょうと、プランデットでエレルダスさんに連絡。用意していたのか、すぐにルースカルガンがやってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます