第683話 ポンコツ

 地下六階はとても広い空間だった。


 そこにはルースカルガンがたくさん置いてあり、パイオニアが入りそうなコンテナが壁際に積まれていた。


「ここは、外を調査するためのものが揃った場所です。アルセラの反乱で手つかずになっていたようですね。ライズ。動かせるか確認してください」


「ラー」


 軍人はラーって答えるのね。


「ミリエルさん。わたしはマナックの保管庫を調べますので荷台のあるマンダルーダーを起動させてください。それに積むとしましょう」


「わかりました。イチゴはエレルダスさんの護衛を。ライカはメーとルーをお願いね」


 敵はいないけど、どこからか魔物が侵入しているかもしれない。万が一に警戒して起きましょう。


「わかった。他にやることは?」


「時間がかかりそうだから休憩場所を作っておいて。ホームから荷物を運んでくるから」


 この広さからして丸一日はかかりそうな感じだ。トイレも買って出しておきましょうかね。


 一旦、ホームに入ってキャンプ道具を載せたパレットをフォークリフトで運んできて、簡易トイレを買って設置は三人に任せた。


 トラック系のマンダルーダーを探り、動くかを確かめる。


 三台目にして魔力が切れてないのを発見。パネルが若干違うけど、運転するには問題ない。少し走って使えるかを確かめた。


「ほんと、でたらめよね」


 五千年なんてどれだけの月日か想像できないけど、鉄を一年も外に放置したら錆びるくらい知っている。それがまったく錆びつかず、こうしてすんなり動くんだからでたらめとしか言いようがないわ。


「ミリエルさん。こちらにきてください。マナックの保管庫を見つけました」


 マンダルーダーを停めて辺りを見回すと、百メートルくらい離れた壁際にいた。


 そちらに向かうと、イチゴとは違うタイプのアルセラが壊れていた。


「引きずった跡からしてマナックを補給にきたのでしょう」


「直せるんですか?」


「直しません。イチゴや前の駆除員が見つけたアルセラは女神が介入したものだから見逃せますが、本来なら解体すべき存在です」


 なにか恨みが籠っている感じだった。


「自然派の方でしたか?」


 機械の体になろうとする機械派と生身のままでいようとする自然派がいるとタカトさんが言っていたわ。


「ええ。人は人のままでいるべきです」


 その辺はわたしには理解できない。機械の体なんて想像もできないわ。


 警備兵の魔力で扉を開くと、コンテナボックスがたくさん棚に収まっていた。


「……マイセンズは、地上に出る計画があったのかしら……?」


 考えに入るエレルダスさん。どういうこと?


「マナックの備蓄量が多すぎるわ。保管庫が通常の三倍もありました」


「それならそれでこちらとしては助かるのでは?」


「……そう、ですね。わたしたちがこうして外に出られたのですから……」


 どういうこと? なにを危惧しているの?


「では、マナックを運び出しましょうか」


 ライカたちを呼んでコンテナボックスをマンダルーダートラックに積み込み、一杯になったらホームに運び、フォークリフトに乗って外に出た。


 何度か運び込むとガレージいっぱいとなり、ちょうどお昼になって入ってきたラダリオンとミサロに外に運び出してもらうよう伝えた。


「エレルダスさん。お昼にしましょうか」


 種族に関係なく食べないと活動できない。午後もしっかり動けるようにしっかり食べないとね。


「はい。ライズ。昼食にしましょうか」


 ライズさんに呼びかけると、すぐにやってきた。


「どうでした?」


「ルースカルガンは問題ありません。ですが、昇降機はダメでした。どうも途中で破壊されているようでした」


 それではルースカルガンは外に出せないか。空を飛ぶ乗り物があれば輸送が楽になるのに残念だわ。


「仕方がないわね。焼き切りましょう」


 ん? 焼き切る?


「わかりました。警備兵を集めてみます」


「可能なんですか?」


「はい。手間はかかりますが、警備兵は工作兵でもあります。数を揃えれば取り払うことは可能です」


「なんでもありですね」


「なんでもありだからわたしたちは滅びたのでしょうね。利便性を求め、効率を高め、大事なものを捨ててきました。技術が発展しても精神が未熟なら種として失敗ということなんでしょう」


 この世界は三回やり直されている。


 女神によれば知的生命体が一万年続けられたら神として合格と言う。


 一万年なんて想像もできない長い時を繋いでいかなくちゃならないとか、無茶でしかないと思うわ。国だって三百年続いたこともないんだからね。


「人間も滅んでしまうのでしょうか?」


「それは女神にもわからないでしょうね。故に、神は絶対でもなく万能でもないことが証明され、祈る対象でもないということです」


「……神とはいったいなんなんでしょうね……?」


「ただ、高次元の存在というだけのものですよ」


 タカトさんもそんなこと言ってたわね。ただのポンコツだってね。


「午後は発電機を運び出しましょう。マナックはまた今度取りにこればいいですからね」


 まあ、腐るものじゃないしね。出した分で一年以上は持つでしょうよ。

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