第681話 警備兵
「……ここがマイセンズなのね……」
タカトさんたちが戦っているとき、わたしはアシッカの城にいたので、マイセンズにくるのはこれが初めてだ。
まあ、写真や映像では見ていたし、タカトさんから詳しく聞いていたから大した感慨はない。へー。ここがマイセンズなんだ~ってくらいの感情だ。
……女神やらセフティーホームやらを知っていたら大抵のことには驚かないわね……。
「あれがローダーか」
港には蟲の魔物、ローダーの死骸が残っていた。
「腐ったりしないんですね」
「まだ魔力が残っているのでしょう。ここは魔力が満ちた場所ですからね」
わたしは本格的に魔法がなんであるか学んだわけじゃないので、エレルダスさんの言っていることの一割も理解できない。そうなんだ~と流しておきましょう。
「ミリエルさん。オートマップを見せてください。情報をプランデットに移します」
タカトさんの凄いところはエレルダスさんと出会うなど想像もしてないのに、ちゃんとマイセンズの情報を集めているところだ。
わたしなら終わったことと気にもしないと思うし、情報を残すなど考えもしなかったでしょうよ。
オートマップをエレルダスさんに渡すと、画面を見てプランデットに移している。
理屈はわからないけど、見た情報をプランデットが纏めているって感じなんでしょう。パソコンより自由度は高いようだわ。
「やはりタカトさんは素晴らしいですね。マイセンズの六割は調べています」
「タカトさんの記憶からはわからないのですか?」
女神によりマイセンズの情報を頭に入れられ、危うく死にそうになった。神の目線がどこにあるかわかる事象よね。
「さすがに記憶を探るにはそれなりの機器が必要になります」
技術が発展しても難しいことはあるのね。
「まあ、これだけの情報があれば推測は充分できます。都市は違えど技術はそう変わりはありません。どこになにを置くかは決まっていますからね」
確かに町に違いはあっても建物や施設は同じ、って理屈かな?
「まずはランダーズに向かいましょう。そこならもっと詳しい情報を得られるでしょうからね」
「わかりました」
一応、この集団の代表はわたしになっているけど、初めてのことなので、補佐であるエレルダスさんの言葉に従うする。
ホームからパイオニア三号とマンダルーガーを出してくる。
パイオニア三号はわたしが運転し、ルーとメー、ライカを連れていき、ロイズたちには残ってもらい、キャンプを築いてもらう。
マンダルーガーにはエレルダスさんと軍人だった方がついていくようだ。
「イチゴ。護衛をお願い」
ルースカルガンに積んでいたブラックリンを降ろしたイチゴに命令を出した。
「ラー」
先頭はマンダルーガーに任せ、わたしの運転であとに続いた。
かなり酷い戦いだったとは聞いていたけど、ロスキートの死骸があちらこちらに転がっていた。
「……酷いもんだね……」
助手席にいるライカが吐き出すように言葉を漏らした。
奴隷として過酷な人生を送ってきた者でもそう思う現状のようだわ。
わたしとしてはそこまで酷いとは思わない。何万ものゴブリンに囲まれた経験に何千匹もゴブリンを殺した経験がある。死骸だけではなんとも思わないわね。
「生き残ってるのいるのかな?」
「ラダリオンは、いないんじゃないかって言っていたわ。ロスキートは春の初めに産卵して夏の初めに孵化するそうよ」
マイセンズには気象異常で逃げてきたんじゃないかって言っていたわ。
「じゃあ、安全なんだね」
「いえ、ロースランや蜘蛛の魔物、ゴブリンもいるかもしれないから油断しないようにね」
ロースランの生き残りが地上に逃げた。なら、地上にいたロースランが戻ってきていても不思議じゃない。ロースランがいるならゴブリンだっているでしょうよ。
いたらイチゴから連絡が入る。けど、入ることなくランダーズに到着してしまった。
……わたしたちに気づいて隠れちゃったかな……?
「しかし、デカい塔だよね。天井まで届いてるよ」
ドワーフは視力がいいみたいで、わたしにはまったくわからない。タカトさんの話では二キロはあるって言ってたけど。
「ミリエルさん。イチゴを降ろしてください。非常扉を開きます」
「わかりました。イチゴ、降りてきて」
「ラー」
返事をすると、すぐに降りてきた。
「動くものはいた?」
「ラー。ロンガルが八十六匹確認。ゴブリンは数百匹いました」
やはりゴブリンはいたか。ほんと、しぶとい害獣よね。
「イチゴ。こちらに。ミリエルさん。予備のマナックをお願いします」
アポートウォッチでマナックの入ったコンテナボックスを取り寄せた。
「なにをするんですか?」
「イチゴを簡易バッテリーにしてこの一角の予備マナ・セーラを始動させます」
バッテリーを繋いでエンジンをかけるようなものかしら?
イチゴに線を繋ぎ、非常扉のカバーを開けて先を繋いだ。
「ミリエル。マナックください。補給します」
イチゴは自分で補給できるので、蓋を開けたコンテナボックスを差し出すと、マナックを取り出して自分に補給していった。
「あら」
三十分くらい魔力を充填していると、エレルダスさんが驚いた声を出した。
「問題ですか?」
「ええ。マイセンズの方は用心深いようで、警備兵に繋いでいたようだわ」
警備兵? イチゴみたいなもの?
「でも、大丈夫よ。タカトさんからマイセンズの優先者番号をもらっているから」
エレルダスさんの護衛がLARを構えないところからして本当に大丈夫なんでしょう。
「開きます」
部屋のドアくらいの非常扉がガコンと開いた。
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