第680話 ミロイドの町
砦にある支部にセフティーブレットの職員とマイセンズにいく請負員、そして、ルスルさんが集まった。
「またなにかありましたか?」
口を開いたのはルスルさん。わたしがタカトさんと知り合う前から付き合いがあるからか、すぐ理解したようだわ。
「はい。わたしは請負員を連れてアシッカに向かいます」
マイセンズのことはルスルさんにも教えてあり、タカトさんの計画も話してある。もうわたしたち側と言ってもいい人かもしれないわね。
マイセンズからロンガルを運ぶことを説明し、アシッカの情報も説明した。
「タカトさんは行動力がありますね」
「行動力があるのもそうですが、女神の誘導も入っているでしょうね。今回も女神の言葉から始まっていますから」
女神の悪辣なのはタカトさんの望むことを要所要所で出してくることでしょうね。それを拒否できないのだからタカトさんが荒れるのも理解できるってものだわ。
「タカトさんもそうでしたが、ミリエルさんも神がお嫌いなようだ」
「別に嫌いではありませんよ。タカトさんと出会わせてくれたんですから」
タカトさんをこの世界に連れてきてくれなかったらわたしは町の隅で惨めに死んでいたでしょうからね。
「わたしはタカトさんのために動くのであって、女神のために動くことはありません」
動いた結果、女神のためになろうともタカトさんの結果になればそれで構わないわ。
「……そうですか。タカトさんもあなたがいて心強いでしょうね」
「そう思っていてくれたら嬉しいですね」
「それは見ていてわかりますよ。タカトさんはミリエルさんを頼りにしているとね」
「まあ、そうですね。政治的な場面や重要局面ではミリエル様を頼りますからね」
周りからはそう見えているんだ。まあ、わたしもどちらかと言えば政治向きな性格をしていると思う。生まれからして貴族と向かい合えるのはわたしくらいでしょうからね。
……隠しているのになぜかわたしだけは様呼びなのはそのせいでしょうね。ちなみにラダリオンはお嬢と呼ばれ、ミサロはさんづけ。シエイラは館長よ……。
「わたしはしばらくアシッカに滞在すると思います。残る請負員はモルス支部長に任せますね」
セフティーブレットも人手不足で、五人いた支部も四人に減らし、ゴブリン駆除で出なくちゃならないから支部長のアザドさんと事務のルースさんの二人が詰めている状況だ。
「お任せください。と言ってもミリエル様が纏めてくれたお陰でゴブリン駆除しかやることがありませんけどね」
「それで構いませんよ。わたしたちはゴブリンを駆除しないと食べていけませんからね。町のことはルスルさんにお任せします」
いずれ男爵となり、このミロイド砦──いや、もうミロイドの町と言ってもいいでしょう。ミシャード様に承認されているんだからね。
「ミリエル様。ルースカルガンがきました」
ドワーフの請負員を纏めるライカが知らせてくれた。
わたしが請負員としたのは女性五人。男勝りと言われる者ばかりだ。
どこでも同じだけど、女は子供を産むのが仕事とされている。だけど、それに馴染めない者はいるもの。そんな女性を集めてわたしの部隊としたわ。
モリスの民から組織したほうがいいのでしょうが、脚を失った経験から男性は怖い。タカトさんやモリスの民には申し訳ないけど、わたしの周りは女性で固めさせてもらうわ。
「では、お願いします」
挨拶をしてルースカルガンが着陸した場所に向かった。
後ろから二号艇に乗り込むと、エレルダスさんやモリスの民であるロイズたちもいた。どうやらこのまま向かうらしいわね。
「ありがとうございます」
エレルダスさんにお礼を言った。
古代エルフを纏める人であり、タカトさんの盟友的立場になった人。タカトさんがいた世界より進んだ技術を持つばかりでなく、都市を纏めていた立場の人だ。礼を欠くことはできないわ。
「ふふ。タカトさんに習うのね」
こういう人だから油断ができないのよね。人を見抜く目を持っているんだから……。
「まだまだ追いついていませんけどね」
エレルダスさんと仲良くなれるかと言われたらわたしには無理だろう。表情からも言葉からも真意を見抜けない。タカトさんはよくこの人の心を開いたものよね。どんな魔物に睨まれるより怖いっていうのに……。
「人数はこれだけですか?」
「はい。まずは拠点を築こうと思います。マイセンズならマラーダが使えますから」
マラーダとはフォークリフトのことらしいわ。
「エレルダス様。マイセンズ上空になります」
スピーカーから操縦士の声がして、エレルダスさんがプランデットをかけた。
わたしもタカトさんからプランデットの使い方を学んだけど、細かすぎて二割も使えていない。やはり日頃から使っている人は簡単に使いこなすのね。
「……ここがマイセンズなのね……」
見えるのは森だけでしょうに、エレルダスさんには感慨深く見えるのでしょうね。
「侵入通路、見えました。突入します」
重力制御されているようで揺れはまったく感じない。タカトさんの世界に慣れてなければ他の人のように戸惑いを見せていたでしょうね。
……時間があるときルースカルガンの操縦を教えてもらおうっと……。
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