第657話 磯○家かな?
「──すまんすまん。久しぶりに町に帰って旅の垢を落としていたら時間を忘れてしまったよ」
と、マルデガルさんがやってきた。この部屋の空気を読まずに。
「お、お前と言うヤツは! さっさと着替えてこんから!」
波○さんかな?
「あはは。悪い、タカト。もうちょっと待っててくれ──」
マルデガルさんはカ○オくんかな?
「すみません。あのバカはずっとあんな感じなもので……」
「いえ。マルデガルさんはやるときはやる方なので、オレは気にしていません。それどころか頼りになる兄貴分ですよ」
ああいうお茶らけながらもやるときはやる人は信頼できる。リーダーに向いているとオレは思うよ。
「そう言ってもらえると父親としては安心します。小さい頃から集団行動ができないヤツでしたから」
一騎当千型も大変だな。仲間のサポートを必要としないから連携が疎かになる。その点、山崎さんは恵まれているな。女王にエルフの魔法使い、スピード特化の獣人、女騎士とか、なんの主人公だよ! 完全に勇者パーティーだよ! 恵まれすぎだよ!
なんだろう? オレだけ苦労してない? 状況が不遇すきない? いや、オレも仲間には恵まれているけどさ!
「これからは仲間は必須です。一人で行動するのは危険ですからね」
チート能力があればイージーモードでヒャッハーなゴブリン駆除員ライフとはならない。それは、これまでのゴブリン駆除員がその命で示している。チート能力だけじゃ生き残れないってな。
「そのようですな。あなたの行動がそれを示している。マルデガルにもそれを言ってやってください。わたしたちの声は届かないでしょうから。その代わり、ジェネスク家はイチノセ様、ミシャード様を全力で支援させていただきます」
一つの町がこちらの陣営に加わってくれるのなら心強い。他の町を攻略するのも楽になるからな。
「ありがとうございます。それでは早速お力をお貸しください。実は、獣人と巨人の町を新しく築くことになりました。食糧の増産に力を入れてください。コラウスは拡大していきます」
「ドワーフの町も築いているそうですね」
さすが町長。他の町のことも情報を収集しているか。
「ええ。どうもマガルスク王国がきな臭いんですよ。戦争級の出来事が起こるとオレは見ていますし、その用意も進めています。オレがコラウスにいなければマルデガルさんに回ってくるでしょうね」
女神がそう誘導するに決まっている。でなければマルデガルさんを駆除員になんてしないし、オレの行動を縛るはずだ。
「……あの男に人の上は無理でしょうな……」
正確には集団のトップには立てない、だな。小集団なら十二分に纏めるだけの才はある。遊撃隊として動いてくれたほうが戦果を立てやすいだろうよ。
「大丈夫ですよ。カインゼルさんを残していきますから。あの人にはセフティーブレットを指揮する権限を与えています。領主代理からも権限をもらいました。マルデガルさんは自由に動いてもらって構いません」
場所か、場面か、敵か、それはわからないが、重要なところに出くわす確率が高いだろう。運命と言うか、因果と言うか、そこに流れる運命なのがゴブリン駆除員だからな。
「……ミシャード様が絶対の信頼を置くだけはありますな。まるで隙がない」
「いえ、隙はあります。誰にも見えていない隙が。その隙と対峙するのがマルデガルさんです。その隙を少しでも塞ぐためにロボットを目覚めさせたいのです」
出力の高いアルセラがいたらコラウス領内はカバーできる。通信は防衛戦の要だからな。
「わかりました。倉には光一様が見つけたものがあります。ご自由に使ってください」
アルセラを見つけたと言うことは、光一さんも古代エルフの遺跡を見つけたってこと。使えるものがあるならラッキーだろうよ。
「母上。お願いできますか。わたしら町館に戻らないといけませんので」
「わかりました。イチノセ様。こちらです」
ずっと黙っていたフ○さん──ではなく、ライザさんに案内してもらって倉に向かった。
日本の倉ではなく、煉瓦を積み上げた倉で、かなり重厚感があった。籠城用に建てたのかな?
この家で働いている男が三人、倉の前におり、オレらの姿を見ると、これまた重厚な扉を開けてくれた。
「中は暗いので気をつけてください」
「では、少し待っててください。灯りを用意してきますんで──」
そこからホームに入り、LEDランタンを抱えて戻ってきた。
「女神の部屋ですか?」
「ええ。駆除員しか入ることが許されない避難場所でもあります」
ホームが使えるか使えないかでも生存率が違ってくる。過去の駆除員の失敗の上に今のオレは立ってられるんだな。
LEDランタンを設置しながら倉の奥に入り、階段を下りて地下に向かった。
三十四段と、かなり深く掘ってあるな。地下豪か?
「ここは、光一様が造ったと言われています」
「光一さんが? そのときもリハルの町はありましたよね?」
コラウスの歴史はかなり古く、各町も同じ時代からあると領主代理が言っていた。二百年前には今の形になっていたそうだ。
「リハルの町は何度か魔物に滅ぼされています。場所も変わっていて、この場所になったのは光一様が生きていた時代です」
LEDライトが照らす先にルースカルガンが埋まっていた。
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