第645話 ボーナス *70000匹突破*

 辛うじてホームに入れられた。


「ミサロ。ダストシュート移動してくれ」


 速やかに出しますのでお怒りをお静めくださいませ。


 こうなることはわかっていたので巨人に板を敷いてもらった場所がある。まあ、そこまで平らではないが、エルフ製のフォークリフトをサスペンションがいいのか、それとも魔法で制御されているのか、このくらいならなんら問題はなかった。


「コンクリートで均せないかな?」


 請負員が歩けば十五日縛りもなくなるはずだ。今年は雨が少ないんだし、巨人にやってもらうか。


 パレットを出したらブルーシートを被せる。エレルダスさんたちがここまでくるのに何日かかるかわからないからな。いや、マンダリンで連れてこればいいのか。マナックはたくさんあるんだからよ。


 フォークリフトはそこに置き、ホームに入ってマンダルーガーを出した。


 運転方法はパイオニアとそう変わりはないが、コンソール系が未来的仕様になっている。記憶を辿りながら使い方を学んだ。


「モニターがあるからまさかとは思ったが、古代エルフは人工衛星を打ち上げていたか……」


 まだ生きているようで、マンダルーガーの位置が表示され、衛星写真も出すことができた。


「もしかして、プランデットでも通信可能か?」


 記憶を探ると、あった。


「マジか」


 プランデット同士だと二、三キロの距離でしか通信できないのに、宇宙だと届くのか? いや、違うな。マンダルーガーを通して通信するのか。となると一台は館に置いておかないとダメか。


「もう二台くらいいただくんだったな」


 さすがにエレルダスさんに無断借用はできない。ちゃんと相談させていただきましょう。


 一通りコンソール系を確認したら試運転をしてみる。


「まあ、そう変わりはないか」


 悪路を走るために造られたようで、サスペンションはパイオニアより性能がよく、揺れは少なかった。


 そのままラザニア村を出てリハルの町に向かって走らせた。


「タイヤもいいな。しっかり大地を踏み締めているよ」


 ただ、これはカインゼルさんには物足りないものだな。大人しすぎるよ。


 リハルの町まですんなり走ってくれ、魔力消費量も悪くはない。なんともエコ車だな。


 ──ピローン!


 ん? お、報酬が跳ね上がっているじゃないか。どこだ?


 ──七万匹突破だよ~! 順調だぜ!


 お前が誇ることじゃないがな。だからってオレが誇りたいわけでもねーがよ。


 ──なのでボーナスとして小型艇を移してあげましょう。セフティーブレット本部の前に置いとくね~!


 ハンドルを切ってラザニア村に向かった。ほんと、タイミングが悪いダメ女神だよ!


 館に到着すると、本当に館の前に小型艇が二隻がドン! と置かれていた。


「……迷惑な……」


 館の前は集合場所として広く取っているが、三十メートル以上もある小型艇を二隻も置かれたら邪魔でしかないよ。


「──マスター!」


 さすがにこんなものが現れたら職員としてもびっくりだろうよ。オレだってアパートの前にUFOが置いてあったら腰を抜かす自信があるわ。


「大丈夫。女神の計らいだ。危険はないから安心しろ」


 不本意だが、女神と言えば大抵は納得してくれるんだよ。


「女神様からですか?」


「ああ。これは古代エルフの遺跡にあったものだ。大きくて出せなかったが、ゴブリンを七万匹駆除した褒美に運び出してくれたんだよ」


 どんどん集まってくる職員やその家族たちに説明して回った。


 騒ぎを聞きつけてか、巨人までやってきて落ち着かせるのに夕方までかかってしまったよ……。


「タカト。雷牙が入ってきたわよ」


 あーそうだった。雷牙が入ってきたら教えてくれとミサロに言ってたんだっけ。


「わかった。シエイラ。これはしばらく動かせないからそう皆に伝えておいてくれ」


「わかりました」


 あとのことはシエイラに任せてホームに入った。


「タカト! ゴブリンの群れが現れた!」


「応援はいるか?」


「今のところ大丈夫。五百匹くらいの小集団だろうってロンダリオたちが言ってた」


 あの人たちにかかれば五百匹なんて小集団になるんだ。まあ、最初のときも五百匹の群れだったし、数千匹も経験しているんだから平常運転か。


「それなら雷牙が抜けても大丈夫だな。悪いがオレをダストシュート移動させてくれ。届けたいものがあるんでな」


 マンダルーガーはアルズライズに渡そうかと思ったが、ロンダリオさんに渡すのがいいかもしれんな。


「わかった」


 戦闘になるかもしれないからEARを持ってダストシュート移動してもらった。


 そこはミヤマラン側に築いた拠点のようで、櫓に立ったゾラさんがタボール7を撃っていた。


 ……なんだか会う度に魔法使いらしさがなくなっていってんな……。


「ゾラさん! 状況は?」


「もう少しで片付く! 援護は無用だ!」


 オレが現れたことに動じることなく状況と指示を出してくれた。全体の指揮はゾラさんがやってんのかな?


 ゴブリンの気配はたしかに減りつつある。これなら確かに援護は必要ないな。


 ビシャとアルズライズはいないな。アシッカに戻ったのかな? マンダリンがないし。


 やがでゴブリンの気配がなくなり、何匹か逃げるていどの襲撃(?)で終了した。

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