第638話 マナックの山

「タカト。壁の向こうからドンドンするよ」


 マナックが収納されたコンテナボックスをパレットに積んでいると、見張りを頼んでいたメビがやってきた。ドンドン?


「あ、マルガデルさんか」


 いかんいかん。宝探しに夢中になりすぎてマルガデルさんたちと合流するのを忘れていたよ。


 あちらもオートマップを持っている。新たにできた領域をオレたちが探っていると気づいたんだろうよ。


 マナック積みを一旦中止させて非常口的なドアを手動で開いた。緊急用のハンドルは火災報知器みたいな箱の中に入っていました。


「やはりタカトたちか」


 ドアの向こうにはマルガデルさんやマーダたちが集まっており、タワーライトで明るくなっていた。


「オートマップで整備路を発見したので降りてきました。そちらの探索は進んでますか?」


 こちらは空気に触れていたからか、至るところで錆びていた。やはりロードン処理されていても何千年と空気に晒されていたら処理が剥がれたりするんだな。湿気も多そうだ。


「これと言ったものはないな。あっても扉が固く閉じてある。タカトがくるのを待っていたところだ」


 この世界の者にここの構造を察しろと言うのは無理か。オレだってマイセンズの知識がなければ早々に諦めていたことだろうよ。


「わかりました。まずはこの中のをホームに運び入れます。大量のマナックとマンダリンがあったので」


 メビにアリサたちを呼んできてもらい、オレたちはマナックの積み込みを始めた。てか湿気が凄いな。水魔法で湿気を集めるとするか。


 ビニールプールを運び出してきて組み立て、湿気を集めた。


 なかなかどうしてかなりの水が集まったものだ。ここ、排水機能ないのか? 捨てることもできんじゃないか。


 まあ、それはあとで考えるとしてコンテナボックスをパレットに積み込んだ。


 パレット三十個分。マナックが何個になるかはわからないが、少なくとも一万個はあるはずだ。


「アリサ。何人か館に戻らせてくれ。十パレットは館に運び出すから」


 マナックが大量にあったことを説明し、館に戻らせた。


「マルガデルさんもコンテナボックスを四箱くらいセフティーホームに運んでください」


「また部屋が狭くなるな」


「それは女神と交渉してください。仲間を増やしていくならね」


 あの部屋に五人で住むのは厳しかろう。有能なところを見せて拡張できるよう交渉するしかないだろうよ。


「そうだな。どこかに大量のゴブリンはいないものかね?」


 さすがチート持ちは言うことが違う。オレなら少ないところを教えてもらいたいよ。地道に駆除させてもらいたいぜ。


 マルガデルさんがコンテナボックスをセフティーホームに運び込んだら一旦全員で上に戻った。なんだかんだで十六時になった。館に運び出しもあるのだから今日は終わりとしよう。


「メビはどうする? ここに残るか? 集落に戻ってもいいぞ」


 アリサたちはここに残るが、ニャーダ族にしたら集落まで大した距離じゃない。あちらも暮らしがよくなったからここに残るよりいいだろう。


「ここに残るよ。タカト、明日もここにくるんでしょう?」


「ああ。まだ重要なものが残っているからな」


 コールドスリープがあるってことは生きて眠っているヤツがいるってこと。どんなヤツかはわからんが、その当時の知識を持ったヤツなら目覚めてもらいたい。まだ古代エルフの遺産が残ってそうな感じだからな。


 ブラックリンでホームに入り、またなのって目を向けるミサロにヘコヘコしながらダストシュート移動させてもらった。


 まだ戻り組はきてないが、フォークリフト一号でパレットを運び出した。


「今度はなんなの?」


 騒ぎを聞きつけてか、シエイラたち職員が出てきた。


「古代エルフの遺跡でマナックを見つけたからな、外に出しているんだよ」


「また? ミサロが怒るわよ」


「ちゃんと謝ってきたよ」


 しょ、しょうがないじゃん。イチゴやマンダリンを動かすのに必要なんだからさ。そう邪険にしないでよ。


「巨人に言ってマンダリンの格納庫を増やしてもらってくれ。十台分」


「さすがに十台分は無理じゃないかしら? 人も増えて他の建物も増えたからね」


 もう百人は越えたと言っていたっけ。もうちょっとした村だ。いっそのこと、マンダリンは開拓しているほうに移動させるか? 数も増えるんだし。


「じゃあ、まずはアリサと相談してみるよ」


 決まるまでビニールシートを被せておけばいいやろ。ロードン処理は水にも強いからな。


 そうこうしている間に戻り組がやってきたので、コンテナボックスを空いている倉庫に入れてもらうことにする。


「四人はこのまま館に残ってくれ。明日の午後からマンダリンを運び出すから」


 十台のマンダリンがちゃんと動くか確かめなくちゃならんしな。午前中は確認に当てることにしよう。


「オレはまあ遺跡に飛ぶから」


 ダストシュート移動要員がいないとまた飛ばなくちゃならない。まったく、人間は楽を覚えるといかんな。


 ブラックリンを出してきてマナックを補給。フルスロットル(イメージです)で飛び立った。

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