第635話 遺跡(仮)

「タカト!」


 一時間くらいしてメビがマーダたちを連れて戻ってきた。


「いきなり呼びつけてわるかったな。この避難場所のことを聞きたかったんだよ」


「ここをか? ただの穴だぞ」


 不思議そうに首を傾げるマーダたち。ただ、避難場所として使っていただけみたいだな。


「奥に入ったことはあるのか?」


「ああ。だが、奥は深い穴が空いているだけだぞ」


「穴を下りたことは?」


「おれはないが、じい様たちの代で下りたって話は聞いたことはある。大空間が広がっていたってことだ」


 他の者もそれ以上のことは知らないようだ。


「そのじい様が下りたってことは、マーダたちでも下りられるってことだよな?」


 身体的差がないのなら下りる気があるかどうか。嫌なら下りないってことだ。


 だがまあ、ニャーダ族の気質からして、そのじい様にできて自分たちにできないってのは恥になるんだろう。表情が引き締まったよ。


 強さが正義であり、勇敢であることが男の証明でもある。わからないではないが、オレは人間に生まれてよかった。ニャーダ族に生まれたら底辺だったことだろうよ。


 ……まあ、薄汚い人間の中で生きるのも大変だがな……。


「いいだろう。下りてやるさ」


「まあ、競争じゃないんだから安全第一、命大事に、危険を察したら上がってこいよ。そこまで重要視しているわけじゃないんだから」


 ダメ女神からのアナウンスはなかったが、どうもこの周辺って前時代の遺物が残っている気配がするんだよな。


 光一さんがアルセラ(ロボット)を持っていたこともそうだし、嘆きの洞窟も人工的な造りだった。もしかすると、ここに都市があったんじゃなかろうか?


 何千年も残るような技術を持った種族。もしかしたら──ってくらいの気持ちだ。ないならないでざんね~んってくらいだ。


「わかった。いってくる」


 それなりの装備はしているので、そのまま洞窟の中に入っていった。


「メビ。穴のところで見ててくれ。なにかあれば教えてくれな」


「了解」


 次の指示を飛ばし、十時過ぎには百匹を駆除を終えた。


「マルデガルさん。山の麓にゴブリンの巣が結構あります。潜っているゴブリンを殺す魔法とか持ってますか?」


「ああ。そう強くはないが、火の魔法が使える。ゴブリンくらいなら問題あるまい」


 風だけじゃなく火まで使えるんだ。属性とか関係ないのかな?


「休憩しますか?」


 アウトドアチェアに座り、コーヒーを飲みながら指示を出しているので休憩しなくとも問題ありません。


「いや、続ける。いいか?」


「大丈夫ですよ。今日中に千匹は駆除します」


 残り九百匹だが、千匹駆除したらマルデガルさんのほうにアナウンスが入るはず。ダメ女神がここのことを言わなければそれほど重要じゃないってことだ。少なくともグロゴールみたいなのが出なければ助かるってものだ。


 チートなマルデガルさんがいようとグロゴールみたいなものと対峙したくないわ。


「ふふ。千匹か。いいだろう。頼むよ」


 ってことで休みなく指示を出し、お昼で五百匹を突破。一時間しっかり休んで再開。十七時までに目標の千匹を突破した。


「タカト。女神からその山は古代エルフの研究施設で、コールドスリープってのがあるそうだ。ご先祖様もそこに入ってロボットを見つけたみたいだ」


 やはりか。てか、コールドスリープって、あれか? 凍らせて何百年と眠らせるヤツ? ってことは古代エルフが眠っているってことか? 動力なによ?


「オレは中に入りますが、マルデガルさんはどうします?」


「もちろん、おれも入るよ。おもしろそうだしな」


 さすが冒険者。好奇心旺盛だ。そうじゃないと冒険者はやってられないんだろうよ。


「では、頂上にきてください。オレはラザニア村に戻ってエルフを連れてくるのでマーダたちの指揮をお願いします」


「わかった。すぐにいく」


 一日中動いたのに二十分もしないでマルデガルさんがやってきた。ほんと、チートだよ。


「奥にメビがいるんで、オレがホームに戻ったことを伝えてください。明日の朝に戻ってくるんで」


「わかった。おれも中を調べてみるよ。ご先祖様が残したものがあるかもしれんからな」


「じゃあ、ポータブルバッテリーとライトを渡しておきます。中は暗いでしょうからね」


 ホームからタワーライトとポータブルバッテリーを持ってきてマルデガルさんに渡し、セフティーホームに運んだ。


「明日までお願いします」


 そう言ってホームに入った。


「あら、お帰りなさい」


 ちょうどシエイラもホームに入ってきたところだった。


「ただいま。仕事終わりで申し訳ないが、アリサたちエルフを会議室に集めてくれ。ニャーダ族の集落近くに古代エルフの遺跡があって、マーダたちに調べてもらってるんだ」


「危険なの?」


「前駆除員が入って出てきたから危険はないと思う。あと、マルデガルさんも入るから危険があっても問題ないだろうさ」


「そうね。コラウス最強の冒険者なら大抵の魔物は片付けられるでしょうね。じゃあ、アリサたちに声をかけてくるわ」


 頼むと返し、シャワーを浴びに向かった。コーヒーに飽きてビールを飲んじゃったんだよね。ダストシュート移動する前にアルコールを出しておくとしましょう。

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