第634話 岩山
昼は軽く食べて単管パイプをホームに片付けた。
なんだかんだと十五時前に出発となったが、二日酔いになったオレたちが悪い。自分たちへの罰として夜間行軍することにした。
いや、危険じゃん! とか言うことなかれ。巨人が二人いてニャーダ族の男が八人もいる。そこに金印の冒険者がいて危険になるなんてことはない。疲れはしたが、日を跨ぐことはなくニャーダ族の集落に到着できた。
集落の者から警戒され、驚かすなと怒られてしまったのはいい思い出。さっさと就寝させてもらいました。
寝たのは午前一時を過ぎていたが、なぜか七時に起きてしまった。疲れすぎて熟睡したのか?
まあ、疲れはそこそこ取れた。今日はニャーダ族の集落にいるんだから問題なかろう。
ミサロが作ってくれた朝飯をしっかり食べ、コーヒーを飲んで落ち着いたら準備して外に出た。
マーダたちはともかくモニスたちも起きており、集落の横を切り拓いていた。
「タカト、おはよー!」
今日もメビは元気である。まあ、嘆きの洞窟からモニスに運んでもらったけど!
「おはようさん。巨人が住む許可がもらえたのか?」
「うん。前に戻ったときに話し合ってたみたいだよ」
少しは揉めると思ったんだが、随分とすんなり認めたな。マーダたちが説得したのかな?
「そっか。じゃあ、オレが口出す必要もないな」
領主代理へ報告しなくちゃならんが、それはシエイラからしてもらおう。町ができるのは先のことなんだからな。
「タカト、ここにいたか。この辺にゴブリンはいるか?」
集落を見て回っていたらマルデガルさんがやってきた。
「ええ。かなりいますね。駆除するんですか?」
働き者だね~。オレはやる気しないってのに。
「ああ。なるべく早く二万匹を達成したいからな」
そういや、二万匹駆除すると仲間一人、セフティーホームに入れられるんだったっけ。
「悪いが、ゴブリンの場所に誘導してくれるか?」
「構いませんよ。今からやりますか?」
「ああ。頼む。ここら辺のゴブリンは隠れるのが上手くて見つけられなかったんだよ」
金印でも見つけられないとか、絶対ゴブリンって高等種だよな? 適当に創ったとかウソとしか思えないよ!
「じゃあ、あの山に向かいますか。あの頂上が禿げている山に巣があるっぽいので」
集落から見える山は千メートル級の山で、そちらからたくさんの気配を感じる。千匹近くはいるんじゃないか?
「メビは残れ。あそこじゃキャンプするのも大変だからな」
オレらはホームに入れるので問題ないが、メビだとキャンプするのは大変だ。オレらだけでいくとしよう。
「あたしもいく。あそこはニャーダ族の避難場所で、洞窟があるんだ。キャンプ用具さえあれば問題なく過ごせるよ」
引く気はないのでメビも連れていくことにした。
さすがに三、四キロは離れているので、オレとメビはブラックリンで向かわせてもらった。
途中、百匹近いゴブリンの群れがいたのでマルデガルさんを誘導し、オレらは先に岩山に飛んだ。
こんなところに避難場所とか、なにを考えているのかと思ったが、ニャーダ族の機動力と体力があるなら人間が攻めるのは大変なところだった。
「結構視界がいいな」
この付近では一番高い山っぽいので、かなり広範囲を見渡すことができた。
洞窟の中も結構広く、かなり奥に続いていた。
「……人工的な感じがするな……」
ニャーダ族が掘ったって感じではなく、コンクリートのような壁で、なにか滑走路のような造りだった。
オートマップを取り寄せて調べると、奥に上下に延びる穴があった。
「……ここ、もしかして、基地じゃないか……?」
古代エルフのかまではわからないが、確実にここは人工的に造られた場所だ。
「タカト、どうしたの?」
「メビ。悪いが、マーダたちを呼んできてもらえるか? ここ、もしかするとマイセンズのような場所かもしれない」
ここを避難場所としているならマーダたちに聞くのが一番だ。調べるのはそのあとでもいいだろう。アリサたちも呼びたいしな。
「また地下都市があるの?」
「いや、そこまでのものじゃないとは思う。調べてみんとわからんが、砦みたいなものだと思う」
砦と言うか、要塞か? 山をくり貫いて造ったような感じがする。
「まあ、まずはマルデガルさんの手伝いだな。メビはマーダを連れてきてくれ」
「了解」
メビの脚ならそう苦ではあるまいが、手間をかけさせて申し訳ない。アイスでも用意しておいてやろう。
洞窟の外に出て、頂上まで向かってみる。
「アンテナの類いはないか。どうやって通信していたんだ?」
オレの記憶(情報)には外と通信する手段がまるでない。マイセンズの情報しかないんだよな。
……ダメ女神が意図して入れなかったのかな……?
「──タカト。見える限りのゴブリンを倒した。次を指示してくれ」
百匹を二十分もしないて駆除し尽くしたか。まさにチートだよ。
「マルデガルさんから見て右。距離は百メートルちょい。ゴブリンが五匹います」
「わかった」
まずはマルデガルさんの手伝いに集中するとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます