第625話 ゴブリンライダー

 首長や上位種が粗方いなくなったので、ゴブリンの統率はないに等しかった。


 まあ、まだパニックになってないだけマシだ。自分が生き残るために脅威から一刻も早く逃げる行動を取っているからな。


 二方向を催涙ガスで塞いだので、逃げる先も二方向しかない。その一つにはミリエルが構えており、即死魔法級の眠りの魔法で逃げてきたゴブリンを永眠させている。


 そちらに逃げたゴブリンは幸せだろう。なにも知らず、痛みを知ることなく天へ召されるのだからな。


 最悪なのはイチゴがいる方向に逃げたゴブリンだろう。血も涙もないイチゴはマチェットで首を半分だけ斬っている。


 本人としてはマチェットが折れないよう、骨を断つことはせず、出血多量で殺している。首を斬られたことのないオレでも苦しみながら死んでいっているのがわかるよ。


「まあ、オレも結構酷い殺し方しているけどな」


 ベネリM4で行動を殺しているんだから。


 最初はX95を使っていたのだが、連射しているからすぐバレルが熱くなるので、途中からベネリM4に持ち換えたのだ。オレの腕だと確実に殺すとなると一匹に五発は撃っているからな。


 なら、まずは逃げないようにするのが一番と鳥撃ち用の弾で行動を奪っているのだ。


「ん? 一匹、こちらに向かってくるな」


 通常のゴブリンより気配が強い。それに、速い。


「マーヌか?」


 上位種であり、走ることに進化したような四足歩行のゴブリンだ。


「突然変異ってわけじゃなさそうだな」


 さらに速く走るゴブリンが八匹に増え、こちらに向かってきている。完全にロックオンされているな、オレ。


 ベネリM4に弾を込めてから背中に回し、ナイフを抜いて足下でもがき苦しむゴブリンをめった刺しにしてやる。


「ん? 気配が二つ?」


 四方から向かってくるマーヌとの他にゴブリンの気配がくっついていた。


「背に跨がっているのか?」


 気配からはそうとしか思えなかった。


 ゴブリンの背に跨がるゴブリンとかギャグかな? それともゴブリンの世界でのツーマンセルか?


「さしずめゴブリンライダーってところだな」


 ファンタジー漫画では狼とかに跨がっていたが、まさか同胞に跨がるとかまでは想像できなかったよ。


 あと、五十メートルというところでゴブリンの血を集める。


 三十センチくらいの球体になったが、ちょっと足りないな。もう一体から集めるとしよう。


 五十センチくらいもあれば充分。さあ、もっと近づくがよい!


 草木で姿は見えないが、気配でわかるオレには手に取るようにわかる。跨がっているゴブリン、なにか武器を握っている。


 が、そんなものに意味はない。


「ブラッディヨーヨー!」


 五メートルまで近づいたら円陣斬り。マーヌの四肢を切断してやった。


 すぐにブラッディヨーヨーを解き、ベネリM4を背中から回して落馬(落ゴブリンか?)したゴブリンどもに鳥撃ち用の弾を食らわせてやった。


 騎乗ゴブリン八匹の行動を潰したら悶え苦しむマーヌの頭を撃って止めを刺していく。


 終われば騎乗ゴブリンの止めを刺し、終わったら水を取り寄せて一休みする。


「しかし、多彩な群れだな。ちょっとした国の軍隊にも勝っているんじゃないか?」 


 いや、そんなのを倒すオレらのほうがちょっとした国の軍隊にも勝ってはいるがよ。


「六百は倒したかな?」


 イチゴが倒したゴブリンは報酬に入らないが、気配から半分以上は殺した感じだ。


「ミリエル。残り約四百だ。疲れたならホームで休んでいいぞ。オレは、催涙弾を放ったところに向かうから」


 プランデットでミリエルに通信する。


「大丈夫です。魔力はまだあります」


「わかった。殺したゴブリンはそのままで構わない。後片づけはドワーフたちにやらせるから。イチゴと合流してくれ。イチゴもミリエルと合流しろ」


「ラー」


「わかりました」


 一旦ホームに入り、手入れしてあるベネリM4と交換する。


「タカト、またなにかあったの?」


 出ようとしたらミサロがホームに入ってきた。


「ああ。また新たなゴブリンの群れが現れたよ。今は残敵掃討に移るところだ。悪いが、ベネリM4とX95の手入れを職員にやらせてくれ」


「応援はいいの?」


「残り四百匹だからいらないよ。サイルスさんたちもやってくるだろうならな。あ、すぐに食べれるものを頼むよ」


 まだ暗くなるまで時間はある。もう少しやったら食事にするとしよう。


「わかった。用意しておくわ」


「ありがとな」


 ミサロに感謝を述べて外に出た。


 催涙ガスはまだ残っているかもしれないのでプランデットを外して防毒マスクを装備した。


 気配を辿り、苦しんでいるゴブリンに止めを刺していく。


「この群れ、しぶといのばかりだな」


 長いこと生きていたからか、体格も結構よく、体長も一メートル半はあった。


「マナイーターを持ってくるんだったな」


 このくらい育っていたら魔石もいい感じに育っていることだろうよ。


 まあ、ドワーフに取り出してもらうとするか。報酬として金を出せば商売が生み出されるかもしれん。経済が生まれたなら町になるのも早くなるだろうよ。


「ハァー。二百万円プラスか。ってことは残り二百匹ってことだな」


 暗くなる前にはなんとか終わりそうだな。がんばっぺ。



 



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