第614話 吸魔剣マナイーター

「──なにかあったの?」


 ツナギを着たミサロが入ってきた。


 畑仕事でお昼に入ってくると思ったら十一時前に入ってきた。


「二ヶ所でゴブリンが溢れた。悪いが、すぐ食えるものを作ってくれ。恐らく、今日中には終わるだろう」


 アルズライズもロンダリオさんたちも優秀な冒険者であり、もうベテランのゴブリン駆除請負員になっている。三千匹くらいなら問題なく片付けられるだろうよ。


 オレたちのほうもチートなマルデガルさんがいて一気に三百匹を即死させるミリエルがいる。さらに巨人族とニャーダ族もいる。これで勝てないならいったいなにに勝てるんだって話だわ。


「ごめんなさい。わたしの仕事なのに」


「別に謝ることはないよ。オレがここにいるのはオレが一番役に立たないからだ」


 請負員やマルデガルさんに活躍させる理由もあるが、安全なところから撃てないオレでは他のヤツらの足手まといになる。裏方に回ったほうが皆のためになるってものだ。


「で、でも……」


「人には向き不向きがあり、できるできないことがあるものだ。自分を卑下しているオレが言うのもなんだが、ミサロはミサロのできることをやればいいんだよ。オレたちはできることで支え合ってんだからな」


「……ありがとう……」


「ありがとうはオレのほうだよ。ミサロが支えてくれるからオレは生きていられるんだからな。いつも美味しい料理をありがとな」


 手作り料理のありがたきことよ。誰かがオレのために作ってくれるとか、こんな幸せなことはないよ。それだけでミサロと出会えたことに感謝したいよ。ダメ女神には絶対感謝しないがな!


「料理、作ってくるね」


 穏やかな顔で中央ルームに駆けていった。


 ミヤマラン側はまだ落ち着かないのか、MINIMIの箱マガジンがどんどん消えていっている。バレルもちゃんと交換しているようで、予備のバレル五つがいつの間にか消えていた。


「──タカト! とぅえるぶの弾!」


 使い切ったマガジンを作業鞄に詰めてラダリオンが入ってきた。


「ドラムマガジン四つ、いれてある。使い切ったらベネリM4を使え」


 一番手間がかかるのは三十二発入りのドラムマガジンに弾を込めることだ。


 三十二発なのに入れるのに十分はかかってしまうし、撃ち尽くすのは十秒もかからない。理不尽以外言いようがない銃だよ。


 ドラムマガジンも安いので四万五千円。持てるのは十本が精々だわ。八発入りのマガジンも高いんだからよ。


「わかった!」


 余裕がないようで、返事をするとともにドラムマガジンを持って外に出ていった。


 ──ピローン! 六万七千匹突破。あともうちょっとだよ! 


 あ、六万五千と六万六千は無視しました。忙しかったんだよ!


 ──サポートアイテムに魔力を吸引できる剣があるので当ててくださいね~!


 当てようと思って当てられるものなのか? まあ、用意できるものは用意したし、ガチャをやってみるか。


 一回目は回復薬大。二回目は吸魔剣。三回目も吸魔剣。四回目はマルダート。五回目はサーチアイ。六回目は五十パーセントオフシール。七回目は栄養剤小だった。


「二つも当たっちゃったよ」


 まあ、今回はどれも当たりだろう。サーチアイ、三つ目だが、洞窟を調べるにはちょうどいいだろう。洞窟はオレに取って鬼門だからな。


「サーベルか?」


 剣に詳しくないが、柄にガードがついていて、刺すのに特化したような造りになっている。


「吸い取った魔力は魔石になるのか」


 相も変わらずざっとした説明しか頭に入れてくれないダメ女神だが、そう難しい構造にはなっておらず、吸い取った魔力は柄の中で魔石になるそうだ。


「どれだけ吸えるかはやって確かめるしかないか」


 二つあるんだし、一つはビシャに渡すとしよう。


「──タカト、ゴブリンの数が収まってきたよ!」


 言ってる側から雷牙が入ってきた。


「ご苦労さん。今、ミサロに食事の用意をしてもらっているから落ち着いたら取りにこい。あと、この剣をビシャに渡してくれ。魔力を吸う剣だ。死んだゴブリンに刺して魔力を吸い取ってくれ」


 ヒートソードとは違い、ちゃんと鞘つきだから簡単に腰につけられるだろうよ。


「わかった」


 雷牙もすぐに出ていってしまった。もっと状況を詳しく聞きたかったんだがな。


 まあ、いい。使った分を補充しておかないとな。


 報酬も二千万円を超えたことだし、中央ルームに部屋を増やすとしよう。七十パーオフを使って六畳の部屋を二つ拡張するとしよう。


 一気に三百万円が減ってしまったが、あと二百万円を使ってガレージを拡張しておくか。またチート運送するためにな。


 二個ある倉庫を一つにして奥を拡張し、二十畳くらい広がった。


「次は上を拡張してパレットラックを置くか」


 まあ、パレット八枚分は拡張できた。今はこれでよしとしよう。


「管理も大変になるな」


 一体化させればすべて触ったことになるのは助かるがな。


「タカト、どこ? ゴブリンの勢いが止まった。確認して」


 ラダリオンの声がして、玄関に向かった。


「わかった。用意するよ」


 吸魔剣、マナイーターを腰につけ、ラダリオンにダストシュート移動してもらった。


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        第13章 終わり 2023年 7月27日

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