第610話 ニャーダ族の集落へ
「タカト。わたしたちも同行させてくれ」
朝、六時にホームから出たらモニスと髭もじゃな男が三人いた。びっくりしたー! 心臓止まるわ!
巨人の村の横でありイチゴを見張りに立たせてたから油断した。次からはちゃんと外を確認してから出るとしようっと。
「そ、それは構わないが、何日かかるかわからないぞ」
「構わない。あと、この三人も請負員としてくれ」
まあ、異論はないので三人に請負員カードを発行。請負員とした。
カードの説明はモニスに任せ、メビを起こして後片付けを始めた。
七時前くらいにマルデガルさんが出てきた。風呂にでも入ったのか、昨日より綺麗になっていた。石鹸やシャンプー、悪くならなかったのだろうか?
ホーム内も時間は流れており、光一さんが活躍したのは百年前。石鹸やシャンプーが劣化しても不思議じゃない年月だ。マルデガルさんが使うまで凍結させてたのかな?
「よく眠れましたか?」
「ああ。寝台から起き上がるのに苦労したよ。飲んでいたら危なかった」
高級宿屋でも煎餅布団みたいなものだった。マットレスを敷いたベッドなら朝まで熟睡だろうよ。
「モニスたちもいくそうなので、朝を食って少し休んだら出発しましょうか」
せっかくなのでモニスたちの分も出してやり、しっかり食べた。
「毎日こんな美味いものを食っていると、いつものが食えなくなるな」
「マルデガルさんは、料理できるんですか?」
「焼くなら」
つまり、オレと同じで料理は不得意と言うことね。了解了解。
「女神に気に入られて仲間をセフティーホームに入れられるよう願ってください。いい成績を出せば聞き入れてくれるかもしれませんよ」
九十九パーセントダメな女神だが、結果を出せば融通を利かせてくれる。一年で二万匹でも駆除したら聞き入れてくれんだろうよ。ダメなら知らん。
「──うおっ! な、なんだ、この音は!?」
どうしました?
「め、女神か?!」
まさか、あのピローンがマルデガルさんの脳内に鳴ったのか?
「……二万匹に一人仲間を増やしてくれるそうだ……」
やはりダメ女神のアナウンスか。てか、一人で二万匹ってハードだな。まあ、オレもハードな駆除をさせれってけど!
「がんばってください。マルデガルさんなら二万匹も可能でしょう。オレでも一年ちょっとで六万匹いきましたから」
仲間や請負員が駆除した数も含まれていますけどね。
「そうだな。しばらくはゴブリン駆除に励むしかないな」
ただまあ、別チームとなったからには行動範囲を決める必要はある。ゴブリンが減ってくれるなら生存圏が増えていいが、それは稼ぎが減ることも意味する。そうなったら請負員が暮らせなくなってくる。
仕事が減れば別の仕事に移られ、またゴブリンが増えたときに対応ができなくなるだろう。
理想はゴブリンはほどほどいてほどほど稼げる環境であることだ。ダメ女神も駆除しろとは言ったが、根絶やしにしろとは言ってない。知的生命体が一万年生存できたら神として合格なんだからな。
オレもゴブリン憎しでやっているわけじゃない。ゴブリンだって生命サイクルに入っている生き物。いなくなったときの不具合が必ず出るだろう。ほどよくいるなら勝手にしろ、だ。
「よし。ニャーダ族の集落までいく作戦を話すぞ」
当初はブラックリンでひとっ飛びと考えていたが、マルデガルさんやモニスたちまで増えてしまった。もう地上をいくしかなくなった。
「ラダリオン。悪いが、またオレとメビを背負ってくれ。モニスたちは先頭に立って切り開いてくれ。交代間隔は任せる。マルデガルさんはオレが指示するのでゴブリン駆除をしながら進んでください」
強いからから、ゴブリンの気配はわかる能力は与えられなかったようだ。
「それはいいな。ゴブリンなんて雑魚、意識して見たことなかったから自信なかったんだよ。タカトの補助があるなら見分ける術を身につけられそうだ」
見分ける術が身につけられるんだ。まさにチートだよ。
「これをしてください。離れていても会話できるものです。ちなみに古代エルフの遺産です」
プランデットをかけさせ、マルデガルさんの魔力で起動させた。
「古代エルフか。なんかガキの頃、じい様に聞いたな。アシッカのほうに古代エルフの都市があるとかないとか」
光一さんもマサキさんのことを調べたのかな?
「それは事実ですよ。女神に導かれていったら酷い目に合いましたよ」
「ふふ。大冒険だったようだな。酒の席で聞かせてくれ」
「おもしろくもない大冒険でしたけどね」
イチゴやマンダリン、グロゴールの魔石を得られなければブチ切れているところだわ。
「ラダリオン、頼むな」
「任せて」
しゃがんだラダリオンを登り、ミヤマラン公爵領にいくときに使ったリュックサックに入り込んだ。
「メビは空の警戒を頼む。オレは行き先の指示とマルデガルさんの指示を出すから他に目を向けられないんでな」
「了解。任せて」
狙撃用にしたHK416を掲げてみせた。
「モニス! ロースト村から北北西に進んでくれ! 進路は任せる!」
一直線に進めるわけでもない。巨人の足に任せるとする。
「わかった。では、いくぞ」
モニスが先頭になり、ニャーダ族の集落に向かって出発した。
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とある❌❌な女神様。
「勇者、死んじゃったか~。うん? 駆除員の子孫? レベルアップ? あ、代用品にいいんじゃね?」
と言ったかは謎。
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