第605話 ロンダリオチーム再び
カインゼルさんとの話し合いが終わってホームに入ったらまた荷物がぎっしり入っていた。
「送る物、多すぎないか?」
そんなにアシッカで儲けられるのかよ?
「ライガの話では結構人が流れてきているそうで、品不足みたいです。まだ荷物を降ろしてない馬車が館の前に列を作っています」
どんだけだよ? と、ミリエルにダストシュート移動してもらった。
「あ、マスター! いいところに。荷物を外に出してください! 商人たちにせっつかれているんですよ!」
なにやら切羽詰まっているようなので、ホームから荷物を運び出した。
パレットにしたら十枚だが、十枚って結構な量だぞ。コラウスの商人って言っても四、五社(商会を社と数えていいかわからんけど)だ。パレット馬車一台分だとしても一社二台分だ。昨日も混ぜたら一社四台分。かなりの量だと思うんだが、そんなに需要が高まってんのか?
「タカトさん、外のを入れます!」
なんて考えている暇はない。フォークリフトをミリエルと交代して外に出てみた。
「ザイル。商人の数、増えてないか?」
こんなにいたっけ? どの商会も二、三人しか残していかなかったような気がするんだが……。
「どの商会もすぐに人員を増やしたみたいです。それを知った他の商会も動き出したんですよ」
「商人は迅速だな」
「そのせいでこの忙しさですが」
チート運送は失敗だったか? パレット一枚金貨二枚じゃなく四枚にすればよかったよ。
……まあ、金貨四十枚。二日で四百万円も稼いだんだけどな……。
「さすがに毎回はできない。時間があったからできたことだと伝えておいてくれ」
駆除員が二人、いや、フォークリフトを操作できるオレとミリエルがいないとできないこと。これ以上、仕事を増やしてらんないよ。
「わかりました。まあ、これは今だけでしょう。冒険者も流れてきてますから」
そうであることを願い、二回目の荷物を運び出して今日の作業を終えた。が、朝起きて館の前にダストシュート移動してもらったら馬車が列を成していた。いや、コラウスから物がなくなるよ!
「おはようございます。凄いことになっていますね」
どうすんだこれ? と佇んでいたらダインさんがやってきた。
「おはようございます。ダインさんも荷物を運びたいんですか?」
「いえ、うちはコラウス内とライダンドが忙しくてアシッカまでは手が回りませんよ」
「ダインのところも支部を出しましたよね?」
そのためにアシッカにいったはずでは?
「はい。アシッカにいる者には宿屋をやらせていますよ。アシッカは宿不足になっていましたしね」
宿屋か。確かにセフティーブレットがやっている宿屋の他になかったっけ。人が増えたら宿は必須。先見の明があるな、ダインさんは。
「それに、セフティーブレットからミランド峠への輸送を請負ましたので人手不足ですよ。今、コラウスでは人材の奪い合いが起こり始めていますよ」
きっとオレが原因だろうな。
「また奴隷を買うしかないか」
セフティーブレットが人を独占したら顰蹙を買う。他から持ってくるしかないだろうよ。
「タカトさん! 荷物がいっぱいになりました!」
ミリエルに呼ばれ、ホームに入った。
「雷牙。頼む」
起きてきた雷牙にダストシュート移動してもらい、アシッカに出た。
こちらも馬車が何台も待機しており、オレが現れるなり副支部長のカナルが駆け寄ってきた。
「マスター! よかった。すぐに荷物を出してください!」
「わかった」
無駄口は叩かずホームから荷物を運び出した。
輸送業って大変だな~。とか考えながら十時までかかってしまった。計五十枚分の荷物を運び出し、一千万円を稼いでしまった。
……ゴブリン駆除業より稼げるのが嫌になるぜ……。
転職できないのがさらに嫌になるが、しばらくの活動資金は得られたのだからよかったと喜んでおこう。
「タカト。終わったようだな」
馬車がはけた頃、アルズライズとビシャがやってきた。
「すまんな。まさかここまで忙しくなるとは予想できなかったよ」
「馬車で五日の距離を一瞬で運べるんだから我も我もとなるのは当然だ。馬のエサ代だけでも金貨一枚はかかり、人の食事代、護衛費、損失を考えたら金貨二枚など安いものだ。ここぞとばかりに頼むだろうよ」
「次は金貨四枚に値上げするよ」
それでもお願いされそうだがな。安全に運べるんだからな。
「そうしろ。じゃあ、おれらは出発するが、ライガはどうする?」
「一緒に連れてってくれ。オレもミヤマランで資金調達と物資補給したいからな」
一千万円の資金はできたが、ミジャーのことがある。備蓄しておいて損はないはずだ。余ったら巨人に回せばいいだけだしな。
「わかった。せっかくだから歩いて向かう。ゴブリンがいるかもしれないからな」
「ああ、頼むよ。アシッカに流れてこられたら困るからな。マンダリンはホームに戻しておくよ」
アシッカにもマンダリンを保管できる場所を造ったが、どちらのマンダリンも二人の愛機みたいになっている。誰かに乗られるのも嫌だろうからな。
「ああ。明日の朝に出るよ」
「──タカト!」
と、ロンダリオさんたちが現れた。あ、まだアシッカにいたんだ。
「お久しぶりです。コラウスに帰るんですか?」
「いや、アルズライズたちとミヤマラン公爵領に向かうよ。コラウスは商売敵が増えたみたいだからな。あちらで稼がせてもらうよ」
この人たちもよく働く。ワーカホリックか?
「そうですか。恐らくたくさんいると思うので稼いでください。あ、去年、いや、今年か? 山脈に山黒がいたので注意してください」
「山黒か。今ならそう難しくはないだろう。ラインサーがバレットを買ったんでな」
なんか布で巻いたものを担いでいると思ったらマテリアルライフルかい。
「弓は止めたんですか?」
「ああ。銃のおもしろさに気がついたんでな。おれは銃士となる」
海賊王になる的な口調だが、まあ、この人なら銃でも一流に使いこなせそうだ。がんばってください。
「バレットの弾はあるので雷牙に言って出してもらってください」
「それは助かる。バレットを買ったら報酬がなくなったんでな」
思い切りが激しい人だよ。
「気をつけていってください。雷牙。小まめに連絡を入れてくれな」
「わかった。任せて」
頼むぞと頭を撫でてやり、ホームに入った。
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