第604話 傭兵団構想

 ホームに入ると、荷物がたくさん入れられていた。


「もうか。商人は行動が早いものだ」


 昨日の今日だぞ。迅速にもほどがあんだろう。


「──あ、タカトさん。もうガレージがいっぱいになります」


 フォークリフトを操ったミリエルがホームに入ってきた。


「了解。雷牙は?」


「まだ入ってきてませんが、もうそろそろでしょう」


 って言ってる側から雷牙が入ってきたので、アシッカにダストシュート移動してもらい、またホームに入った。


 フォークリフトを交代し、パレットに積まれた荷物を外に運び出した。


「ザイル。あとは頼むな」


 コラウスの状況や荷物の名簿、シエイラに書いてもらった手紙を渡し、アシッカ支部の長、ザイルにあとを任せた。


「わかりました。お任せください」


 頼りになる男でなによりである。


 最終確認を終えたらホームに入り、今度は館にダストシュート移動してもらう。


 ブラックリンを出してきてリハルの町へ。そこからホームに入った。


 なかなかハードな一日だったが、シャワーを浴びてからのビールは欠かせない。これで今日の仕事は終わったと思えるよ。


 いい感じに眠気がやってきたら眠りにつき、清々しく目覚めた。


「……働いてばっかりだな、オレ……」


 もう何勤目だ? 前に休んだのも思い出せないよ……。


 週休二日なんて温いこと言ってられる世界じゃないとは言え、オレ、働きすぎだと思うんだよな。リフレッシュ休暇とかあってもいいんじゃないかと思う。人には休みが必要がなんだよ!


 なんて叫べたらどんなにいいか。皆が起き出したところで言えるわけもなし。ミサロは農作業の格好しているし、ミリエルは今日運ぶ荷物のリストをチェックしているし、ラダリオンはもう朝飯を食べていた。


「どうかしたの?」


 シエイラも入ってきて、マットレスの上でぼんやりしているオレに尋ねてきた。


「いや、今日やることを考えていたんだよ。やること多すぎてなにから片付けようかってな」


 女性陣がやる気に満ちているのにそれに水を差すのも悪い。大きく伸びをして起き上がり、シャワーを浴びて目を覚まさせた。


 しっかり朝飯を食ったら用意を整えて外に出た。


 兵員たちやニャーダ族は集まっており、昨日と同じくゴブリンを生け捕りにしてもらい、兵員たちに殺させた。


「そう言えば、この国に傭兵とかいるのか?」


 昼休みにふと思ったことをルコに尋ねてみた。


「戦争時はいたようだが、今はいないんじゃないか? 魔物を相手にするのは冒険者だしな」


「セフティーブレットの兵団じゃなく、セフティーブレット傭兵団として活動させたほうがいいだろうか? それならコラウス辺境伯領から金を取れると思う」


 外部委託としてコラウス辺境伯領を守る。それなら一から兵士を育てることもないし、管理はセフティーブレットですれば手間も省ける。ただ、予算を出せるかは領主代理に訊かなくちゃならんけどな。


「領主代理に気に入られているとはウワサに聞いていたが、金を取るとか恨まれたりしないのか?」


「恨まれないだけの利を与え、敵にしたら不味いと思わせている。オレと領主代理は一蓮托生。どちらが欠けたら自滅するだけだ」


 まあ、自滅しないよう最低限の保険はかけているけどな。


「それはカインゼルさんと相談してからだ。まだ思いつきだしな」


 午後もゴブリンの生け捕りをして兵員たちに殺させるを繰り返した。


「よし。一人十匹は殺し、靴や装備にも慣れただろう。明日からは体力をつけるためにリハルの町と街を往復しろ。そのとき、魔物に襲われている者がいたら助けろ。セフティーブレットだと言うことも忘れず伝えろよ。コラウス辺境伯領にセフティーブレットの名を浸透させる」


 コラウス辺境伯にセフティーブレットありと知らしめ、一大勢力として君臨させてもらう。


「コラウスを奪う気か?」


「領地経営なんて面倒なことするか。オレは領主代理の都合のいい駒として働かせてもらうだけさ」


 偉い人の後ろに隠れてあれこれやっているほうが楽でいい。自ら先頭に立つとかゴメンである。


「じゃあ、いっぱい食ってゆっくり休めよ。お前たちにはコラウスを守ってもらわなくちゃならないんだからな」


 コラウスが万全なら安心して領外に出られる。出かけて帰ってきたら滅んでいましたは笑うに笑えないからな。


「マーダたちもご苦労さんな。今日の報酬だ」


 今日は朝からやったので銀貨二枚を渡した。


「そろそろお前たちも集落に向かってくれ。オレはまだいろいろやることがあるんでな」


 ほんと、いろいろやることがあってなにから片付けていいかわからんよ。


「メビも帰っていいぞ。カインゼルさんに報告したらホームに入るから」


「あたしは、しばらくリハルの町にいてじーちゃんを手伝うよ。大変そうだしね」


「ああ、そうしてくれ。オレはあっちこっちダストシュート移動すると思うんでな」


「了解。一人で行動したらダメだからね」


「ハイハイ。一人にならないよう注意するよ」


 ほんと、オレって信用ねー。いや、あるわけもないんだけどな!


 メビの頭をわしゃわしゃしてカインゼルさんのところに向かった。

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