第600話 嘆きの洞窟 *60000匹突破*
数は力を示すように、暗くなる前に拠点は完成。火を焚いて夕飯の準備に取りかかった。
カインゼルさんが先頭に立っているので、オレとメビはブラックリンでラザニア村に帰ることにした。
「タカト。おれらもリハルの町にいっていいか?」
オレらが館の前に着陸すると、メビの父親、マーダと男たちが集まってきた。
「別に構わないが、なんかあったのか?」
ニャーダ族はミスリムの町からコレールの町の間でゴブリン駆除をやっていたはずだ。
「ゴブリンがいなくなった」
うん、まあ、バケモノばかりのニャーダ族が本気になったらゴブリンなど余裕のよっちゃんだろうよ。
「金に余裕があるなら休んだらどうだ? かなり稼いだんだろう?」
恐らく、もうちょっとで六万匹になるはず。
──ピローン。
って、言ってる側からなっちゃったよ。
──六万匹突破だよ~! おめでとー! イェーイ!
今日はやけにテンション高いな。なんかいいことでもあったのか?
──山崎さんが魔王軍が一将、陸迅のラルスを倒してくれました。アルティア王国を完全に取り戻しました。
思い出した。十六将だ。オレも一将倒しちゃったし、十六将と名乗れなくなったんだな。まあ、おめでとうございますと言っておこう。
──そこから北北西の方向、距離約八十キロ。洞窟の奥にマルビジャンの群れがおります。そこはちょっとした宝の山。きっと孝人さんの助けとなるでしょう。いくいかないは孝人さんの自由です。いくのならニャーダ族に案内してもらうといいでしょう。では、十万匹目指してがんばって~!
そう言われたらいかないわけにはいかないだろう。オレの助けになるってんならよ。
「……タカト、どうしたの……?」
「女神からの連絡だ。ここから北北西、約八十キロのところにある洞窟にマルビジャンの群れが住んでいるらしい。いくのならニャーダ族に案内してもらえと言っていたよ。なにか知っているか?」
マーダを見て問うた。
「……恐らく、嘆きの洞窟だと思う。よく魔物が巣にしようとして入るのだが、二度と出てこないのだ。奥から魔物の叫び声が聞こえることから嘆きの洞窟と呼ばれるようになり、誰も近づいてはいけないとされている」
それはもう帰らずの洞窟と呼んだほうがいいのでは?
「いくのか?」
「オレの助けとなるって言うからな。いかないわけにはいかないよ」
いきたくはないが、よりよい状況になるのならいかない選択肢はない。苦労はしそうだがな……。
「わかった。何人か先行させよう」
「いいのか? あまりいい思い出がある場所ではないのだろう?」
ニャーダ族から戻りたいとの声は上がらない。ここで生きていく覚悟を決めたんだろうよ。
「ここで立場を築くならタカトの役に立つことを証明しなくてはならない。ニャーダ族はまだ役に立つことを証明していない」
皆仲良く、なんてことはできないことは理解している。他の種族も自分たちの立場を向上させるためにオレに協力してくれている。
それにどうこう言うつもりはない。オレが一番他種族を利用しているんだからな。利用されたからって怒る資格なんてオレはにない。どんどん利用しろ、だ。
「わかった。人数は任せる。先行してくれ。ただ、リハルの町でやることがあるから五日から十日後になる。さらに遅れる場合はゴブリンでも駆除して待っててくれ」
「まず五人、先行させる。残りはタカトとリハルの町にいく」
「了解。なら、明日の朝、七時半にここに集合だ」
そう告げて解散。その場からホームに入った。
と、雷牙がガレージでなにかガサゴソやっていた。なんだ?
「あ、タカト。焼酎ってどこ? アシッカの酒場に出したいんだって」
もうアシッカに着いたのか。やはり空を飛ぶとすぐだな。
「焼酎なら倉庫だよ」
場所を教えてやり徳用の焼酎を運び出した。
「今日はアシッカで寝るから」
そう言って外に出ていった。
なにがあったかわからないが、誰かと関わり合えるようになっていてなによりだ。
中央ルームにはミサロとラダリオンの二人だけ。ミリエルとシエイラはまだ仕事か?
「ミリエルは館に泊まるって。シエイラは街にいった」
夕飯前にチョコレートパフェを食べるラダリオンが教えてくれた。凄い食欲を見せているってことは巨人に売る品を大きくしているってことか。
「皆、忙しそうだな」
「タカトが一番忙しくしているでしょう。シャワー浴びてきなさい。すぐ夕飯にするから」
ってことでシャワーを浴びに。出たらよく冷えたビールをいただいた。カァーうっめー!
一缶空けたら夕飯をいただき、ダメ女神からの連絡を二人に伝えた。
「陸迅のラルスも倒されたか。ヤマザキって人、とんでもない強さをしているのね」
なんでも陸迅のラルスってのは三メートルはある狼系の獣人で、速さに特化しているそうだ。
「そのまま魔王も倒してくれるといいんだがな」
山崎さんが倒れ、代わりにオレがやれと言われても困る。いや、全力で拒否するけどな。オレには無理だわ!
「……そうね。そう思うわ……」
ミサロとしては複雑な気持ちだろう。元いた場所なんだからな。
あまりこの話題はしないほうがいいだろうと、夕飯に集中することにした。
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2023年7月13日 600日600話。書せ──いや、なんでもない。あと130日で二年か。続けられるといいな~。
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