第599話 開拓団
「待たせてすまない。タレアだ」
四十くらいとカインゼルさんは言っていたが、なんとも元気そうな四十代である。怒らせたらオレの首くらい簡単にモギってしまいそいだ。
……どんな女性かはご想像にお任せします……。
「一ノ瀬孝人だ。タカトと呼んでくれ。あんたらをリハルの町まで連れていくようカインゼルさんに頼まれた。人数と荷物を教えてくれ」
無駄なおしゃべりはせず、人数と荷物を教えてもらった。
リハルの町にいくのは四十二人。男三十五人。女七人。荷物はトレーラーに積めるくらいだった。
荷物を積むのは野郎どもに任せ、女はパイオニア五号と四号に分散させて乗せた。
野郎どもの格好は十キロの道のりを歩くものではないので、靴下と千円のクロックス買って配ってやった。
「リハルの町は山にあります。普通にあるけば昼までに到着しますが、長く歩いたこともないでしょうから、ゆっくり進み、何度か休憩を挟みます。なにかあればすぐに声を出してください」
「わかった。そう言い含めておくよ」
なにもないと思うが、安全を考えてイチゴを連れてきて先頭を歩いてもらい、次にメビが運転するパイオニア四号。間に野郎どもを歩かせ、最後尾はオレが運転するパイオニア五号が続いた。
まずは一キロほど歩いてもらい、問題なければ三十分ほど休憩。水分を摂らせ、飴を一袋ずつ渡してちょくちょく食べるよう指示を出した。
もちろん、女たちにも渡し、適当に食べるように伝えましたよ。騒がれても困るからな。
飴の効果か、野郎どもは文句も言うこともない。タレアも途中から歩き出し、野郎どもに声をかけて励ましていた。
「貧民区は、女性が強いのかい?」
横にいる女性に尋ねた。この方もオレの首を簡単にモギってしまいそうだ。
……オレ、見張られているんだろうな……。
他の女性は若い。手を出されないようにしているのだろう。そうやって貧民区の女性たちを守っているんだろうな~。
「弱いよ。弱いからお袋が守っててくれたんだ」
だからこそ団結力が高いんだろうな。飴だけでこれだけの統率は取れないだろうしな。
「そうかい。なら、これからは楽をさせてやるんだな。健康に注意したら百歳まで生きられるはずだから」
あの回復からしてあらゆる病気は完治したはず。健康体になったのだから不摂生をしなければ百歳も夢ではなかろうよ。
昼はホームからシチューとディナーロールを運んできて女性たちに配ってもらい、オレとメビは見張りをしながらモスなハンバーガーを食った。
「ゴブリンがいるな」
もうちょっとで山にはいる。ゴブリンが隠れるにはちょうどいい場所だ。
「狩る?」
「そうだな。動けるか?」
「もちのろんよ!」
誰だよ、そんなこと教えたの? いや、オレか? なんかそんなことメビの前で言ってしまった記憶があるよ。
「プランデットは持っているか?」
「うん。ちゃんと持ち歩いている」
「よし。オレが誘導する。416は?」
「サプレッサーつきで積んでいるよ」
いい子だと頭を撫でてやり、オレが指示を出して付近に隠れているゴブリンを根絶やしにしてやった。
「八万一千円か。いい稼ぎだ」
三十分で五十四匹とかボーナスタイムだったな。
「タカトがいるといっぱい稼げるよ」
「オレの指示にメビがついていけるから稼げるんだよ」
オレなら五匹が精々だろう。速く動けるメビがいてこその成果だ。
「報酬、結構貯まったんじゃないか?」
毎日のようにゴブリン駆使に出かけ、それぞれ二十匹は殺していると雷牙が言ってたっけ。
「うん。三百万円はいってるよ」
「おー。三百万とは凄いな。それだけ貯まったなら休んでもいいんだぞ」
休んでなにをするかまでは知らんけど。
「ううん。ゴブリン駆除楽しいし、終わったあとのジュースを美味しくしたいからね、雨の日以外は駆除するよ」
なんだろう。メビがワーカホリックになってない? これってオレが悪いんだろうか?
「そうか。まあ、無理するなよ」
十代からゴブリン駆除の人生なんて悲しすぎる。早くコラウスを平和な地にして充実できる人生を送らせてやらんとな。
「よし。そろそろ出発しようか」
気分転換にはなった。オートマとは言え、歩く速度の運転は疲れんだよな。
野郎どもも腹一杯食べられて一時間も休んだから十四時前にはリハルの町に到着できた。が、町には入らずミランル村に向かった。
「タカト!」
村の前にカインゼルさんと兵員がいた。
「早かったな」
「ええ。結構体力があったみたいで早く着きました。カインゼルさんたちも今なんですか?」
「ああ。こちらも体力があったんでな、軽くゴブリンを駆除していたよ」
午前中、三万円がいっきに入ってきたと思ったらそのせいだったのか。
「この辺にもゴブリンがいますし、オレが連れて駆除しますか。どうです?」
「そうだな。開拓団の寝泊まりするところも作らなくちゃならんしな。頼むとするか」
「わかりました。明日から始めるとしますか」
「ああ。村の許可は得ている。川の近くに拠点を築くとしよう」
その場所に向かい、皆で拠点作りを開始した。
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