第590話 安全運転を
「……指、痛いよ。もう疲れた……」
まあ、慣れてないと百回も引き金を引いてたら指も痛くなるし疲れもするわな。弾込めもあるんだし。
「じゃあ、休憩するか」
別に急ぐわけでもない。ゆっくりやればいいさ。
「いくら儲けた?」
「わかんない。読めないし」
そりゃそうだと、請負員カードを見せてもらうと二十一万円だった。死んでないのが結構いるんだな。
「ミリエル。休憩しよう。中心地に向かう」
プランデットでミリエルに伝えた。
「わかりました」
そう離れていないのですぐに合流。モニスが片付けてくれたのでスペースができていた。
ミリエルにホームから飲み物と摘まむものを持ってきてもらう。
「メーの請負員カードを見せてくれ」
見せてもらったらこちらは十七万円くらいだった。双子でもメーのほうが銃の扱いが下手っぽいな。
「メー。銃が辛いならマチェットを使うか?」
「大丈夫。ゴブリンに刺すの気持ち悪いし」
まあ、町で暮らしていた者に生き物を刺せってのは酷か。オレだってゴブリン以外のものを刺すの抵抗あったしな。
「──お待たせしました」
ミリエルが持ってきてくれたものをいただいた。
「二人ともそこそこ稼いだし、これで終わりにするか。どうだ?」
「そうですね。いきなりは辛いでしょうからいいと思いますよ。わたしも眠くなりましたし」
ってことで、ミリエルたちにはパイオニア五号のところまで戻ってもらい、残りはモニスに止めを刺してもらった。
終わればまたゴブリンを集めてもらいブラッディスティールで血を抜き、遠くへポイ。あとは腐敗してください。
バデット化するには魔石が必要であり、そう長く生きてないゴブリンはブラッディースティールをして放置で構わないだろう。たぶん。
周辺が明るくなる頃、片付けは終わり、パイオニア五号のところに戻った。
「モニス。休んでいいぞ。見張りはオレがやるから」
「ああ、頼む」
朝起きて夜寝るをやってきたのだろう。横になるとすぐ眠りについてしまった。
荷台ではメー&ルーが眠っており、ミリエルはホームに入ったようだ。
「──あ、タカトさん。イチゴを連れてきました。あと、ライガを起こしてビシャたちとここにくるよう伝えました。そのときに交代しましょう」
まだ眠っている雷牙を起こしたのか。可哀想なことしたな。
「ミリエルはホームで休め。館で二人の面倒を頼む。オレはリハルの町で宿を取ったら休むよ」
「イチゴがいるんですから休んでも構わないのでは?」
「二人やモニスが起きたとき、イチゴじゃ説明もできんからな。雷牙たちがくるまで起きているよ。まだ眠気は襲ってきてないからな」
納得できないミリエルをホームに戻し、ブラックコーヒーを淹れて雷牙たちがくるのを待った。
「──タカト!」
八時くらいにプランデットにビシャの声が届いた。
「おはようさん。オレの位置はわかるか?」
「うん。見えた。メビを先導するね」
空を見上げたらちょうどよくマンダリンが飛び越えていった。
車の運転はできないのにマンダリンの操縦は神がかっているんだから不思議な子だよ。
四杯目のブラックコーヒーを飲んでいると、エンジン音がしてメビと雷牙がパイオニア四号に乗ってやってきた。
「タカト、お待たせ!」
「ご苦労さん。悪いな、朝早くから」
「構わないよ。そっちの二人がミリエルが言ってた新しい請負員なの?」
「ああ。メーとルーだ。よろしくな」
興味深そうにメー&ルーを見るメビ。この子は物怖じしないな。雷牙は人見知りみたいだけど。
「あたしはメビ。こっちはライガだよ。上でブンブン飛んでいるのがあたしのねーちゃんでビシャだよ」
ブンブンって、姉をハエ扱いするんじゃないよ。
グイグイくるタイプは苦手なのか、オレの後ろに隠れてしまうメー&ルー。中身は十五歳ならお前らが年上なんだから堂々といけよ。
「まあ、二人を頼むよ」
「わかった!」
と、スッと視界から消えると、いつの間にかメー&ルーの背後に出現。二人の首根っこをつかんでパイオニア四号に放り込んだ。扱いが雑!
「雷牙。まあ、メビを頼むな」
それとなく雷牙にお願いすると、苦笑いで返してきた。お前も雑に扱われているわけだ。うん。がんばれ。
無言で頷き、頭を撫でて励ましてやった。
「ビシャも頼むな!」
姉だけに下の面倒見はいいんだよな、ビシャって。
「任せて! メビ、遅れるなよ!」
「ふん! 負けないよ!」
なんの勝負をしているんだか。人を乗せているんだから安全運転に心がけなさいよ。
パイオニア四号に乗り込むと、アクセルベタ踏みで発進。泥を弾き飛ばしながら消えていった。
「まったく、困った子だよ」
残りを飲み干し、空き缶を遠くに投げ放った。十五日縛りがない人はポイ捨て禁止だよ。
「モニス。オレはリハルの町に向かう。お前はどうする? まだゴブリン駆除をやるか?」
「いや、村に帰る。なにも言わずきてしまったからな」
「そっか。なにかあればラザニア村にきてくれ」
「リハルの町にはまだいるのか?」
「うーん。状況次第だな」
カインゼルさんがなにをしているかわからんしな。手伝いが必要なら長くなると思う。
「わかった。また」
「ああ、またな」
それでオレたちは別れた。
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