第588話 最弱最強
一時間で四十匹のゴブリンを駆除できた。オェ~~。
巨大ロボットに乗って戦うパイロットってあんな感じなんだろうか? 物凄い揺れに脳がとんでもないことになっているよ。ラダリオンのときはここまでならなかったのに……。
吐くもの吐いたら水を飲み、回復薬小を飲んだ。
「大丈夫か?」
「……あ、ああ。落ち着いたから大丈夫だ……」
回復薬さまさま。巨大酔いにも効果があるんだからな。
もう一度水を飲んだらモニスさんに抱えてもらい、リハルの町に戻ってもらった。
「モニスさんは一流の狩人なんだな」
「モニスで構わない。お前も一流の狩人だろう。わたしに合わせながら的確な指示を行える者はそうはいない。確かにゴブリン殺しと言われるだけはある」
「ゴブリンに特化しただけで他は並み以下だよ。力じゃどうしようもならないから他で補っているだけの凡人さ」
バケモノ呼ばわりされてもオレの肉体は中ていどの冒険者くらいしかない。素手でゴブリンも殺せない最弱だ。とても自分に自信なんか持てないわ。
「……変な男だな……」
「それがオレと言う男だよ」
過大評価されるくらいなら侮られるほうがマシだ。面倒なことを押しつけられることもないんだからな。
……まあ、生きるために面倒なことやっているけどな……。
リハルの町に着いたら下ろしてもらい、請負員カードの使い方を教えた。
「まずは、モニスの欲しいものを買うといい」
欲しいもの、好きなもののほうが飲み込みが早くなるからな。
「なら、靴が欲しい。タカトの履いている靴がいいなと思っていたんだ」
そういや、ロンダリオさんたちも真っ先に靴を欲しがったっけ。足を使う商売のヤツは足に目がいくものなのかね?
「靴か。じゃあ、まずは靴下だな。靴下と思いながらカードを見てくれ」
「……あ、なんか出た。これか?」
「ああ、そうだ。こういう数字、形の買ってみてくれ」
地面に二十六から二十八センチの靴下を買わせた。巨人の足は結構デカいんだよ。ラダリオンも身長の割りに足がデカいんだよな。
買った靴下を履いてもらうと、まずまずのフィット感とのことだった。ってことは、二十七センチくらいか。まずは千円くらいのスニーカーを買ってもらい、サイズを確かめてもらった。
「もうちょっと大きいといいな」
履けないこともないが、幅がキツいとのこと。じゃあ、二十八センチの買って靴下で調整だな。
「──うん! いい!」
どうやらぴったりのようなので、二十八センチのタクティカルブーツを買った。
「しばらくは慣らしだな。合わないときはサイズを変えて買ってくれ」
「ああ、わかった」
タクティカルブーツを慣らすために道を何度も踏み締めている。いや、揺れるから離れてやってちょうだいよ。
「タカトさん!」
踊るようにタクティカルブーツを慣らしているモニスを見ていたらミリエルと見違えたメー&ルー。やはり女のことは女に任せると違うものだ。
「おーお帰り。随分と可愛くなったじゃないか」
風呂にでも入れたのか髪に艶があり、髪も切ったようでいいところのお嬢ちゃんになっていた。
「宿だったので完璧にはできませんでしたが、可能な限り整えました」
あなた、そんなに完璧主義だったっけ? ホームじゃ緩い格好でいるのに。
「それなら先にラザニア村に帰っててもいいぞ。カインゼルさんのところにいくのは明日になりそうだしな」
今日はモニスのことで終わりそうな感じだしな。
「あの女性を請負員にしたんですか?」
「ああ。布を売って欲しいって言うから請負員にしてゴブリン駆除をしてきたんだよ。今はタクティカルブーツを慣らしている状況だ」
今日はモニスに付き合って終わりそうだ。別にカインゼルさんと約束しているわけじゃないし、用があるならカインゼルさんのほうからやってくるはずだ。
「メーとルーにゴブリンを駆除させたいんですが、もういませんか?」
「いや、まだいるよ。ただ、モニスが暴れたから警戒はしているな。やるんなら処理肉をばら撒いて誘き寄せるのがいいと思う」
作戦をミリエルに語った。
「わかりました。それでいきましょう」
ってことで準備に取りかかった。
と言ってもリエルの町から一キロほど離れた場所に十キロの処理肉をばら撒き、ミリエルはその中心からホームに入る。ゴブリンが集まってきたら外に出てゴブリンを眠らせる、って作戦だ。
「オレたちはここでキャンプする」
いつでも向かえる位置で待機することにする。眠った気配もわかるからな。
「てか、メーとルーは夜中まで起きてられるか?」
心は十五歳でも肉体は八歳だ。夜更かしなんてできる肉体なんだろうか?
「少し眠れば大丈夫だよ」
「うん。大丈夫」
ってことで、パイオニア五号の荷台で仮眠してもらうことにした。
「モニスもいるのか?」
準備で忙しくてスルーしていたが、作戦開始からついてきてたんですよ。
「ああ。お前の狩りに興味ある」
「狩人から見たら邪道だぞ」
ゴブリンから見たら非道だろうけどな。
「構わない。お前の狩りを見たい」
オレの狩りではなくミリエルとメー&ルーの狩りだけどな。
「好きにしたらいい」
そう言って、缶コーヒーを取り寄せて一服した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます